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第二章 少女期 瘴気編
第百七十五話 いざ逝かん(ミーシャ視点)
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浄化魔法は、確実にかけた。そして、瘴気を退ける結界を張って、アルト様に直筆の手紙でそこから出ないようにという内容のものを王妃様の手に持たせた後、私達は、彼らが目覚めるまで側に居る余裕がないことに歯噛みしながらも進む。瘴気はどんどん増していて、アルト様ですら息苦しく感じる様子だったため、私達の周りにも浄化魔法による結界を張っている。
謁見の間に続く扉を前に、私はまた、アルト様に抱き上げてもらって、小さく作戦を伝えることにする。
「アルト様、ここからは、いかに相手を刺激せず、こちらが浄化魔法を行使できる状態にするかが鍵になってきます」
「うん、そうだな」
瘴気に呑まれた者は、負の感情が際限なく膨らんでいく。そしてそれは、多くの場合欲望に直結し、彼らを短絡的な思考へと誘導してしまう。そんな相手に対する交渉は、きっと困難を極めるだろう。
「そして、私は交渉事には全く向きません」
「うん、そう、だな?」
なぜ、そんなことを確認するのかと思いながらもうなずいているらしいアルト様を前に、私はにっこりと笑顔をサービスする。
「そしてそして、アルト様は、次期国王。外交のための交渉方法だって、お手のもののはずです」
「うん……。そう……だ、な……?」
話の流れが見えたらしいアルト様の顔は可哀想なくらいに青い。
「この国の未来は、アルト様の肩にかかってますっ!!」
「……………………努力、しよう」
死にそうな表情で、それでも前向きな返答をしたアルト様に、私はそっと、その頬に手を添え、とびっきりの笑顔で告げる。
「大丈夫です! 失敗したら、全員もろとも土の下ですからっ!」
「全く安心できないっ!!」
反射的に叫ぶアルト様を確認して、元気になったと判断した私は、さぁ、扉を開けてくれとばかりに、アルト様の服を引っ張って促す。
「っ……はぁ、分かった。私は、イルトを失いたくないからな。全力で、ミーシャ嬢の浄化魔法がかけられる状態を作ってみせよう」
「っ、はい!」
柔らかく微笑んだアルト様に、私は不覚にもドキリとしながら、その動揺を押し隠すように元気に返事をする。
「さて……行こうか」
そうしてアルト様が扉を開けた瞬間、私の目には、今までにない、ドロリとした瘴気が溢れる様子が写った。
謁見の間に続く扉を前に、私はまた、アルト様に抱き上げてもらって、小さく作戦を伝えることにする。
「アルト様、ここからは、いかに相手を刺激せず、こちらが浄化魔法を行使できる状態にするかが鍵になってきます」
「うん、そうだな」
瘴気に呑まれた者は、負の感情が際限なく膨らんでいく。そしてそれは、多くの場合欲望に直結し、彼らを短絡的な思考へと誘導してしまう。そんな相手に対する交渉は、きっと困難を極めるだろう。
「そして、私は交渉事には全く向きません」
「うん、そう、だな?」
なぜ、そんなことを確認するのかと思いながらもうなずいているらしいアルト様を前に、私はにっこりと笑顔をサービスする。
「そしてそして、アルト様は、次期国王。外交のための交渉方法だって、お手のもののはずです」
「うん……。そう……だ、な……?」
話の流れが見えたらしいアルト様の顔は可哀想なくらいに青い。
「この国の未来は、アルト様の肩にかかってますっ!!」
「……………………努力、しよう」
死にそうな表情で、それでも前向きな返答をしたアルト様に、私はそっと、その頬に手を添え、とびっきりの笑顔で告げる。
「大丈夫です! 失敗したら、全員もろとも土の下ですからっ!」
「全く安心できないっ!!」
反射的に叫ぶアルト様を確認して、元気になったと判断した私は、さぁ、扉を開けてくれとばかりに、アルト様の服を引っ張って促す。
「っ……はぁ、分かった。私は、イルトを失いたくないからな。全力で、ミーシャ嬢の浄化魔法がかけられる状態を作ってみせよう」
「っ、はい!」
柔らかく微笑んだアルト様に、私は不覚にもドキリとしながら、その動揺を押し隠すように元気に返事をする。
「さて……行こうか」
そうしてアルト様が扉を開けた瞬間、私の目には、今までにない、ドロリとした瘴気が溢れる様子が写った。
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