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第二章 少女期 瘴気編
第百五十九話 黒の恐怖
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教室に入ってきた人物。彼は、逞しい体つきを持ち、この国では忌み嫌われる黒目黒髪の男……。
「ローラン!?」
「おっ、ユミリア様! どうだ? 俺の教師姿はっ」
黒いスーツでビシッと決めたローランの姿に、思わず叫ぶと、ローランは嬉しそうに自分の姿を見せびらかす。
(うん、案外似合ってる……じゃなくてっ)
「何でここに?」
「ん? いや、何でも何も、旦那様から教師としてここに行くようにって言われたからなんだが……もしかして、何も聞いてないのか?」
ローランの問いに、コクコクコクコクとうなずけば、ローランは額を手で覆う。
「あー、これは、もしかして、俺、嵌められたのか? いや、ユミリア様もか?」
小さな呟きではあったものの、私達獣つき組にはそれらが全て聞こえる。
「ユミリア、話は後にした方が良いよ」
「あっ、そうですね。ローラン、詳しいことは、後で聞かせてください」
「あ、あぁ」
ローランが入ってきた途端、青ざめる者達が続出していたが、それに加えて、ローランが私の知り合いだと知ったクラスメイト達は、もはや恐怖で震え上がっている。
「あー、それじゃあ、このSクラスを担当することになった、ローラン・トーテスだ。ちなみに、竜人な? 特別扱いは、ユミリア様以外にするつもりはないから、気張れよ?」
ニヤリと迫力のある笑みを浮かべたローランを前に、とうとう失神するご令嬢……じゃなかった、よく見ると、ご令息、が現れる。
「お? 何だ? 俺の前で堂々と居眠りとは、随分度胸があるじゃねぇか」
確かに、椅子に座っていた状態だったため、机に突っ伏して眠ったように見えなくもないが……恐らく、今、この教室に居る者のほとんどの心は一つになっていた。
(違うっ! 逆、逆っ!!)
度胸があるわけではなく、むしろ、度胸がなかったのだと、普段は表情を取り繕うはずのご令嬢、ご令息の顔が主張していた。
そして、恐らくは気絶したご令息を叩き起こそうとして動き出したローランに、私は、さすがに声をあげる。
「ローラン。その方はどうでも良いので、自己紹介でもなんでも始めては?」
「ん? あぁ、そうだな。ユミリア様がそう言うなら、そうしよう。おらっ、そこから順に、自己紹介だっ」
「ひゃいぃぃいっ」
そして、指名されたご令嬢は、泣きべそをかきながら必死に自己紹介を行い……その後も、私達の番が来るまでは、ずっと、そんな調子で進んでいった。
後に、ローランは語る。『なぁ、俺、そんなに怖かったか?』と。
ローランが居た時代にはなかった黒への差別。しかも、ローランが働く現場はほとんど我が家か王城であり、そこに、黒を差別し、恐怖する者が居なかったため、今回の混沌とした自己紹介が実現したのだ。私は、ローランに黒の存在がどこまでの影響を与えるものなのか、懇切丁寧に説明することとなるのだった。
「ローラン!?」
「おっ、ユミリア様! どうだ? 俺の教師姿はっ」
黒いスーツでビシッと決めたローランの姿に、思わず叫ぶと、ローランは嬉しそうに自分の姿を見せびらかす。
(うん、案外似合ってる……じゃなくてっ)
「何でここに?」
「ん? いや、何でも何も、旦那様から教師としてここに行くようにって言われたからなんだが……もしかして、何も聞いてないのか?」
ローランの問いに、コクコクコクコクとうなずけば、ローランは額を手で覆う。
「あー、これは、もしかして、俺、嵌められたのか? いや、ユミリア様もか?」
小さな呟きではあったものの、私達獣つき組にはそれらが全て聞こえる。
「ユミリア、話は後にした方が良いよ」
「あっ、そうですね。ローラン、詳しいことは、後で聞かせてください」
「あ、あぁ」
ローランが入ってきた途端、青ざめる者達が続出していたが、それに加えて、ローランが私の知り合いだと知ったクラスメイト達は、もはや恐怖で震え上がっている。
「あー、それじゃあ、このSクラスを担当することになった、ローラン・トーテスだ。ちなみに、竜人な? 特別扱いは、ユミリア様以外にするつもりはないから、気張れよ?」
ニヤリと迫力のある笑みを浮かべたローランを前に、とうとう失神するご令嬢……じゃなかった、よく見ると、ご令息、が現れる。
「お? 何だ? 俺の前で堂々と居眠りとは、随分度胸があるじゃねぇか」
確かに、椅子に座っていた状態だったため、机に突っ伏して眠ったように見えなくもないが……恐らく、今、この教室に居る者のほとんどの心は一つになっていた。
(違うっ! 逆、逆っ!!)
度胸があるわけではなく、むしろ、度胸がなかったのだと、普段は表情を取り繕うはずのご令嬢、ご令息の顔が主張していた。
そして、恐らくは気絶したご令息を叩き起こそうとして動き出したローランに、私は、さすがに声をあげる。
「ローラン。その方はどうでも良いので、自己紹介でもなんでも始めては?」
「ん? あぁ、そうだな。ユミリア様がそう言うなら、そうしよう。おらっ、そこから順に、自己紹介だっ」
「ひゃいぃぃいっ」
そして、指名されたご令嬢は、泣きべそをかきながら必死に自己紹介を行い……その後も、私達の番が来るまでは、ずっと、そんな調子で進んでいった。
後に、ローランは語る。『なぁ、俺、そんなに怖かったか?』と。
ローランが居た時代にはなかった黒への差別。しかも、ローランが働く現場はほとんど我が家か王城であり、そこに、黒を差別し、恐怖する者が居なかったため、今回の混沌とした自己紹介が実現したのだ。私は、ローランに黒の存在がどこまでの影響を与えるものなのか、懇切丁寧に説明することとなるのだった。
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