悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第百五十七話 攻略対象者達

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(ひ、酷い目にあった……)


 アルト様とミーシャによる、誉め殺しという名の拷問によって、私とイルト様は、もはや虫の息、というところで、何とか、この七年で新たに仲良くなった三人が助けてくれたことで、どうにか生還できた。さて、その三人のだが、彼らの名前は、ハイル・ル・フィアス、ティト・ル・ミルテナ、ディラン・ル・ルナリオ。家名と名前と、どちらにも心当たりがあるというのは、間違いではない。彼らは、『モフ恋』における攻略対象者であり、かつて、王妃様のお茶会で友人関係を築いたレイア達の弟なのだ。騎士団長の息子であるハイルは、ナターシャの弟。魔法省長官の息子であるティトは、レイアの弟。本来は、我が家に養子にくるはずだったディランは、リリアナの弟だ。


「おぅ、随分と褒め称えられてたなっ」

「ハイル、確かにそれはそうですが、今のお二人にそれを思い出させるのは酷というものです」

「そ、そうですよ。ほら、いつもは無表情で怖いイルト殿下まで、真っ赤で突っ伏してしまってますしっ」


 ハイル、ティト、ディランの順に言葉をかけられて、私とイルト様は、机に突っ伏す。
 彼ら三人は、現在、アルト様の側近候補として名前が上がっている。全員が侯爵家の人間であり、全員が獣つきでもある。
 短い赤髪にオレンジの瞳を持つ狼の獣つきであるハイル。彼は、騎士団に入ることを目指しているだけあって、逞しい体つきであり……典型的な体育会系の考え方をする。緑の髪を一つに括りあげている青い瞳の狐の獣つきは、ティト。彼は、割と知的に振る舞ってはいるものの、実は、甘いものが大好物で、ちょくちょく私に甘いお菓子を頼んできたりしている。最後に、茶髪に茶色の瞳の熊の獣つきであるディラン。彼は、少し臆病ながらも鋭い指摘を繰り返す頭脳派だ。ただ、ディランだけは、私達より一つ年上であるため、二年生のクラスからここまで来なければならない。
 彼らは全員、私の行動により、本来の悩みを抱えることなく、私やイルト様の友人にもなった。私の行動によって、未来は確実に変わってきている。それを実感する度に、悲惨な未来に打ち勝てると思うものの、実を言うと、まだ、魔王のことが分からないままだったりもする。そして、その魔王が関係したと思われる事件にいくつか遭遇しては、物語通りに進められそうになる出来事を必死に解決してきた。


(このままの状態が続くなら、問題はないけど……魔王、そして、最後の攻略対象者のことが引っ掛かる)


 魔王の目的や居場所は不明。最後の攻略対象者に関しては、影も形も思い出せない。こんなので、ゲームの時期に突入した今を乗り越えられるのか、不安は大きい。しかし、今は……。


「むーっ、むむーっ」

「んんっ、んーっ」


 ハイル、ティト、ディランによって拘束され、口を塞がれたアルト様とミーシャを何とかする方が先だった。


「みゅう……」

「ユミリア、頑張ろう」


 赤くなりながらも酷く虚ろな瞳のイルト様に励まされて、私は、現実と向き合うのだった。
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