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第二章 少女期 瘴気編
第百五十六話 可愛いはどっち?(アルト視点)
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「うん、イルトとユミリア嬢はいつも通りだね」
「はぁ……お姉様が尊い」
新入生代表の挨拶のため、前方の席に座っていた私とミーシャ嬢だったが、無性に後ろ……イルトとユミリア嬢が居る特別席が気になって仕方がない。
(多分、私達の挨拶もユミリア嬢は聞こえてない、かな?)
挨拶の際、二人の居る場所に視線を向けていたものの、ユミリア嬢がこちらに視線を向けることは恐らく不可能な状態で、イルトだけが、ふわりと笑顔を見せてくれた。
「イルトが尊い……」
そう呟けば、隣に座っていたミーシャ嬢がピクリと反応する。
「違いますよ。真に尊いのは、ユミリアお姉様ですっ。イルト殿下は、ユミリアお姉様以外の前だと怖いじゃないですかっ」
「いや、イルトは優しいぞ? もちろん、ユミリア嬢が可愛いのは分かるが、幼い頃、イルトは私が疲れていると、心配そうに寄ってきて、自分の好物であるはずのお菓子を私に差し出してきたんだ」
「ぐっ、それは、確かに可愛い。で、でも、ユミリアお姉様だって負けていませんっ。ユミリアお姉様は、未だにみゅうみゅう言ってしまうのを気にして、耳をペタンってして、涙目で『みゅう……どうしたらいいの?』って鏡を見ながら悩んでましたもんっ!」
「くっ、それは確かに……いやいや、しかし、イルトはもっと可愛くてだなっ」
入学式中であるために、ごくごく小さな声で行われるやり取り。それは、イルトやユミリア嬢が獣つきであることを考慮した上での声量であり、二人に届くことはない。
「くっ、アルト殿下、このままでは埒が明きません。入学式を終えたら、お二人直々に判断してもらいましょう」
「そうだな。きっと、イルトの可愛さは、皆を魅了することになるなっ」
「それを言うなら、ユミリアお姉様の方が素敵で可愛いと評判になるに違いありませんっ」
私達は知らない。この後、二人の前で盛大な暴露大会を行った結果、イルトとユミリア嬢を再起不能にまで追い詰めてしまうことを。そして、私の側近候補達が事態に気づいて止めるまで、議論が白熱することを。そして……ミーシャ嬢と、強い絆(イルト王子とユミリア嬢を愛で隊、設立)で結ばれることを。
「さぁ、行こうか、ミーシャ嬢?」
「望むところですっ」
そして、自然とミーシャ嬢をエスコートするように手を差し出した私は、周囲の視線が驚愕と嫉妬で渦巻くのを確認して、ユミリア嬢にミーシャ嬢を守るための魔導具製作を頼まなければと、そっと思考を巡らせるのだった。
「はぁ……お姉様が尊い」
新入生代表の挨拶のため、前方の席に座っていた私とミーシャ嬢だったが、無性に後ろ……イルトとユミリア嬢が居る特別席が気になって仕方がない。
(多分、私達の挨拶もユミリア嬢は聞こえてない、かな?)
挨拶の際、二人の居る場所に視線を向けていたものの、ユミリア嬢がこちらに視線を向けることは恐らく不可能な状態で、イルトだけが、ふわりと笑顔を見せてくれた。
「イルトが尊い……」
そう呟けば、隣に座っていたミーシャ嬢がピクリと反応する。
「違いますよ。真に尊いのは、ユミリアお姉様ですっ。イルト殿下は、ユミリアお姉様以外の前だと怖いじゃないですかっ」
「いや、イルトは優しいぞ? もちろん、ユミリア嬢が可愛いのは分かるが、幼い頃、イルトは私が疲れていると、心配そうに寄ってきて、自分の好物であるはずのお菓子を私に差し出してきたんだ」
「ぐっ、それは、確かに可愛い。で、でも、ユミリアお姉様だって負けていませんっ。ユミリアお姉様は、未だにみゅうみゅう言ってしまうのを気にして、耳をペタンってして、涙目で『みゅう……どうしたらいいの?』って鏡を見ながら悩んでましたもんっ!」
「くっ、それは確かに……いやいや、しかし、イルトはもっと可愛くてだなっ」
入学式中であるために、ごくごく小さな声で行われるやり取り。それは、イルトやユミリア嬢が獣つきであることを考慮した上での声量であり、二人に届くことはない。
「くっ、アルト殿下、このままでは埒が明きません。入学式を終えたら、お二人直々に判断してもらいましょう」
「そうだな。きっと、イルトの可愛さは、皆を魅了することになるなっ」
「それを言うなら、ユミリアお姉様の方が素敵で可愛いと評判になるに違いありませんっ」
私達は知らない。この後、二人の前で盛大な暴露大会を行った結果、イルトとユミリア嬢を再起不能にまで追い詰めてしまうことを。そして、私の側近候補達が事態に気づいて止めるまで、議論が白熱することを。そして……ミーシャ嬢と、強い絆(イルト王子とユミリア嬢を愛で隊、設立)で結ばれることを。
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「望むところですっ」
そして、自然とミーシャ嬢をエスコートするように手を差し出した私は、周囲の視線が驚愕と嫉妬で渦巻くのを確認して、ユミリア嬢にミーシャ嬢を守るための魔導具製作を頼まなければと、そっと思考を巡らせるのだった。
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