142 / 412
第一章 幼少期編
第百四十一話 敵の正体
しおりを挟む
メリーに淹れてもらったココアを飲みながら、私は今回のセイ達が気絶させられた件と、イルト王子のことは関係があるのではないかと考えを巡らせる。そして、そこから導き出される答えは……。
「ユミリアお嬢様、どうか、休まれてください。もう、ずっと、その体勢のままですよ?」
「? メリー?」
メリーが何を言っているのか分からず、私は手元のココアを一口飲んで……。
「みゅう?」
「ココアは、淹れ直しましょうか?」
なぜか、ココアが冷めている。いや、心配そうなメリーの顔を見れば、私はメリーからココアを受け取って、少し飲んだ後はずっと考えに耽っていたのだろう。
「ごめんなさい。メリー」
「いいえ、このくらいのこと、なんの労力にもなりませんよ」
せっかくのココアを冷ましてしまったのはもちろん、考えに没頭するあまり、メリーを無視していたであろう時間のことも謝ったつもりなのだが、メリーは優しく微笑むばかりだ。
「……セイ達は、ちゃんと休んだのかな?」
「はい、ちゃんと寝かしつけて参りましたよ」
「?? ……そう」
『部屋に戻った』ではなく、『寝かしつけた』という表現に、思うところがないわけではないが、それに突っ込みを入れるのは危険だと本能的に判断して、軽い返事だけを返す。
「ユミリアお嬢様は、まだ、眠くはありませんか?」
「……どうしても、イルト様のことを考えてしまって……」
現在、イルト王子の状況については、屋敷の数人が知るところとなっている。具体的には、お継母様、セイ、鋼、ローラン、メリー、ムトの六人だ。だから、メリーの前では、イルト王子のことも話せる。
「恐らく、イルト様をあの状況に追いやった元凶が居るとは思うの。でも、それがセイ達を気絶させられるだけの実力者となると、全く思い浮かばなくて……」
『影の耳』達で情報を集めてはみたものの、そのどれもが、セイ達に敵うほどの存在とは思えない。
「考えるのは良いことではありますが、眠らないのは美容の大敵ですよ? そんな魔王のような存在については置いておいて「それだっ!」……? ユミリアお嬢様?」
メリーの何気ない言葉。しかし、その言葉の中に、セイ達を気絶させられる実力を持ちそうな存在が挙がっていた。
「魔王なら、セイ達に対抗できるかもしれないっ」
『モフ恋』では、世界を滅ぼす災厄として描かれていた魔王。もし、そいつが私達に干渉できる状態だったのだとするなら、セイ達が気絶させられたことにも納得がいく。
「……もしかして、浄化魔法を使えば、イルト様を助けられる?」
そして、その仮定を元に、私はイルト王子を救う案を見出だすのだった。
「ユミリアお嬢様、どうか、休まれてください。もう、ずっと、その体勢のままですよ?」
「? メリー?」
メリーが何を言っているのか分からず、私は手元のココアを一口飲んで……。
「みゅう?」
「ココアは、淹れ直しましょうか?」
なぜか、ココアが冷めている。いや、心配そうなメリーの顔を見れば、私はメリーからココアを受け取って、少し飲んだ後はずっと考えに耽っていたのだろう。
「ごめんなさい。メリー」
「いいえ、このくらいのこと、なんの労力にもなりませんよ」
せっかくのココアを冷ましてしまったのはもちろん、考えに没頭するあまり、メリーを無視していたであろう時間のことも謝ったつもりなのだが、メリーは優しく微笑むばかりだ。
「……セイ達は、ちゃんと休んだのかな?」
「はい、ちゃんと寝かしつけて参りましたよ」
「?? ……そう」
『部屋に戻った』ではなく、『寝かしつけた』という表現に、思うところがないわけではないが、それに突っ込みを入れるのは危険だと本能的に判断して、軽い返事だけを返す。
「ユミリアお嬢様は、まだ、眠くはありませんか?」
「……どうしても、イルト様のことを考えてしまって……」
現在、イルト王子の状況については、屋敷の数人が知るところとなっている。具体的には、お継母様、セイ、鋼、ローラン、メリー、ムトの六人だ。だから、メリーの前では、イルト王子のことも話せる。
「恐らく、イルト様をあの状況に追いやった元凶が居るとは思うの。でも、それがセイ達を気絶させられるだけの実力者となると、全く思い浮かばなくて……」
『影の耳』達で情報を集めてはみたものの、そのどれもが、セイ達に敵うほどの存在とは思えない。
「考えるのは良いことではありますが、眠らないのは美容の大敵ですよ? そんな魔王のような存在については置いておいて「それだっ!」……? ユミリアお嬢様?」
メリーの何気ない言葉。しかし、その言葉の中に、セイ達を気絶させられる実力を持ちそうな存在が挙がっていた。
「魔王なら、セイ達に対抗できるかもしれないっ」
『モフ恋』では、世界を滅ぼす災厄として描かれていた魔王。もし、そいつが私達に干渉できる状態だったのだとするなら、セイ達が気絶させられたことにも納得がいく。
「……もしかして、浄化魔法を使えば、イルト様を助けられる?」
そして、その仮定を元に、私はイルト王子を救う案を見出だすのだった。
27
お気に入りに追加
5,677
あなたにおすすめの小説
異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜
くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。
いや、ちょっと待て。ここはどこ?
私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。
マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。
私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ!
だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの!
前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
転生したら乙ゲーのモブでした
おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。
登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。
主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です
本作はなろう様でも公開しています
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる