悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第百三十七話 道中

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 現在、私は王家の使いの方から連絡を受け、馬車へ向かっている。もちろん、用件は何かと聞きはしたのだが、『馬車の中でお聞きください』の一点張り。そのため、仕方なしに私はお継母様を残して、馬車に乗り込もうとして……固まった。


「礼は不要だ。早く乗ると良い」

「は、はい」


 そこに居たのは、なぜか、国王陛下その人だった。


(いや、普通、陛下は動かないと思うんだけど!?)


 予想していたのは、アルト王子、イルト王子、もしくは、何らかの思惑を抱えた王妃様のうちの誰かだった。しかし、蓋を……というか、扉を開けてみれば、そこに居たのは予想を斜め上に弾け飛んで、国王陛下という答えであり、現在、私は大混乱に見舞われていた。
 とりあえず、私は陛下に発言の許可をもらって、恐る恐る質問をする。


「あ、あの、お父様は、ここにはおられないのですか?」

「ガイアスならば、今は、城で奔走しているところだろう」

「そう、ですか……」

(お父様ーっ、陛下と二人っきりはキツいですーっ!!)


 内心の悲鳴をどうにか押し隠し、私は微笑みを浮かべてみる。もしかしたら、頬がひきつっていたりするかもしれないが、そこは、五歳児の令嬢に国王陛下をぶつけるという無茶を行ったからだという理由で勘弁していただきたい。


「さて、では、今日、二人を呼んだ理由を話そう」


 馬車が動き出して、城までの道のりを恐ろしく遠くに感じながら、陛下の話に耳を傾けることにする。


「……いや、着く頃に話した方が良いか?」

(なぜに!? そんなことをされたら、間がもたないっ!)


 なぜか話すことを渋った陛下を前に、絶望していると、陛下はチラリと私の表情を確認して、視線をさまよわせたのち一つうなずく。


「分かった。話そう」

「ありがとうございますっ」


 陛下と二人っきりの気まずい空間を少しでもマシにできそうな状況になって、私は前のめりに感謝を述べる。


「う、うむ……ただ、約束してほしいことがある」

「はい、何でしょうか?」

「……話を聞いても、暴れない、とだけ」

「?? 分かりました」


 なぜ、話を聞いただけで暴れると思われたのかは分からないが、了承をしなければ話が進みそうにないので了承する。


「イルトのことなのだが……っ、ユ、ユミリア嬢? その殺気を抑えてはくれないか!?」

「うふふ、どうぞお気になさらず。大丈夫です。約束通り、暴れるつもりはありませんので。殺気は……これでも抑えていますよ? さぁ、続きをお願いします」


 真っ青な陛下を前に、しっかりと微笑みを返した私は、尋も……続きを促したのだった。
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