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第一章 幼少期編
第百二十話 お屋敷にて
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四十代くらいに見える男性医師を結界の中に招いて診察してもらえば、やはり、私の見立てが正しかったことが明らかになる。そして、だからこそ、私のこの対応は高い評価を得た。
「アルトを守ってくれたことに感謝する」
本心から感謝している様子の陛下に、私は当然のことだと返す。
「未来のお義兄様のためですもの。当然です!」
実のところ、王族で後天的な獣つきとなった者は、かなり好奇の視線にさらされる。いや、それどころか、大抵の場合、その王族を国王に据えようとか、重要なポストに就かせようとする勢力が生まれ、他の王族との争いに発展する。
それというのも、獣つきは本来、魔力、身体能力が高く、頭の回転も早いため、有能であることの証しとされているのだ。最初から獣つきである場合にも争いはそれなりに起こるものではあるが、後から獣つきになった方が、より、その争いは激化しやすい。だから、私が結界を張って、アルト王子の状態に関する情報を制限したことは、これから対策を練る上で必要なことだったのだ。
診察が終わり、体に異変が現れた際に飲む薬の処方も終わった後で、私は、陛下が信頼できると判断した何人かの使用人のみ結界内への出入りを許可して、お父様とお継母様の二人と一緒に我が家へ戻る。
思えば、今日は随分と長い一日だったような気がする。
「おかえり、ユミリア」
「おかえりっ」
屋敷へ戻ると、セイと鋼が一緒になって出迎えてくれる。
「ただいまっ、セイ、鋼!」
「あっ、そうそう、ユミリアから送られてきた男達なんだけど、しっかりと情報を吐かせておいたよ?」
「ぼくも、頑張った!」
そんなセイ達の言葉に、そういえば、捕まえた刺客をセイ達に任せたのだったと思い出す。
「それは、私も聞いても構わないか?」
そうお父様に問われて、セイは私へと視線を向ける。
「もちろんです、結局は報告することになるかと思いますし、一緒に聞きましょう」
「分かった。それじゃあ、先に行って準備してくるね」
「準備?」
「うん、メリーが張り切ってるから、さ?」
その言葉だけでは、何が言いたいのか分からない私に対して、お父様はなぜか頬を引きつらせている。
「すぐに行ってやれっ。いや、むしろ、早くメリーを引き離してこいっ」
「うーん、まぁ、やれるだけやってみるよ」
何を慌てているのかは分からないが、まぁ、メリーが張り切ってるなら悪いことにはならないだろう。
「ぼく、メリーに色々と教えてもらったから、次はぼくも実践するねっ」
「? 何かは分からないけど、ありがとう。鋼」
尻尾をブンブンと振って、褒めて褒めてーとアピールする鋼に私は手を伸ばして、鋼のモフモフを撫でる。
「むふーっ」
「メリーから、教わった、だと?」
「……死ななきゃいいんだって」
鋼のモフモフを堪能する私には、鋼の満足そうな声以外は聞こえていなかった。愕然とした様子のお父様も、遠い目をするセイも見ることなく、ただひたすらにモフモフし続けて……いつの間にか、セイに準備が整ったから行こうと伝えられることとなるのだった。
「アルトを守ってくれたことに感謝する」
本心から感謝している様子の陛下に、私は当然のことだと返す。
「未来のお義兄様のためですもの。当然です!」
実のところ、王族で後天的な獣つきとなった者は、かなり好奇の視線にさらされる。いや、それどころか、大抵の場合、その王族を国王に据えようとか、重要なポストに就かせようとする勢力が生まれ、他の王族との争いに発展する。
それというのも、獣つきは本来、魔力、身体能力が高く、頭の回転も早いため、有能であることの証しとされているのだ。最初から獣つきである場合にも争いはそれなりに起こるものではあるが、後から獣つきになった方が、より、その争いは激化しやすい。だから、私が結界を張って、アルト王子の状態に関する情報を制限したことは、これから対策を練る上で必要なことだったのだ。
診察が終わり、体に異変が現れた際に飲む薬の処方も終わった後で、私は、陛下が信頼できると判断した何人かの使用人のみ結界内への出入りを許可して、お父様とお継母様の二人と一緒に我が家へ戻る。
思えば、今日は随分と長い一日だったような気がする。
「おかえり、ユミリア」
「おかえりっ」
屋敷へ戻ると、セイと鋼が一緒になって出迎えてくれる。
「ただいまっ、セイ、鋼!」
「あっ、そうそう、ユミリアから送られてきた男達なんだけど、しっかりと情報を吐かせておいたよ?」
「ぼくも、頑張った!」
そんなセイ達の言葉に、そういえば、捕まえた刺客をセイ達に任せたのだったと思い出す。
「それは、私も聞いても構わないか?」
そうお父様に問われて、セイは私へと視線を向ける。
「もちろんです、結局は報告することになるかと思いますし、一緒に聞きましょう」
「分かった。それじゃあ、先に行って準備してくるね」
「準備?」
「うん、メリーが張り切ってるから、さ?」
その言葉だけでは、何が言いたいのか分からない私に対して、お父様はなぜか頬を引きつらせている。
「すぐに行ってやれっ。いや、むしろ、早くメリーを引き離してこいっ」
「うーん、まぁ、やれるだけやってみるよ」
何を慌てているのかは分からないが、まぁ、メリーが張り切ってるなら悪いことにはならないだろう。
「ぼく、メリーに色々と教えてもらったから、次はぼくも実践するねっ」
「? 何かは分からないけど、ありがとう。鋼」
尻尾をブンブンと振って、褒めて褒めてーとアピールする鋼に私は手を伸ばして、鋼のモフモフを撫でる。
「むふーっ」
「メリーから、教わった、だと?」
「……死ななきゃいいんだって」
鋼のモフモフを堪能する私には、鋼の満足そうな声以外は聞こえていなかった。愕然とした様子のお父様も、遠い目をするセイも見ることなく、ただひたすらにモフモフし続けて……いつの間にか、セイに準備が整ったから行こうと伝えられることとなるのだった。
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