悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
上 下
115 / 412
第一章 幼少期編

第百十四話 考察1

しおりを挟む
 そんなこんなな話し合いが終わって、私は真っ先にイルト王子の居場所をメイドへと尋ねる。


「殿下ならば、第一王子殿下と一緒に自室で待機されております。お会いになりますか?」

「はい、お願いします」

「こちらです」


 イルト王子は、黒ではあるのだが、だからといって、城の使用人達がイルト王子を見下すことはない。ちゃんと、『王子』としての扱いを心得ている状態だ。目の前に居るメイドだって、イルト王子を見下すような発言をすることなく、ちゃんと業務を全うしてみせる。


(『モフ恋』でも、イルト様は守られていたのかなぁ?)


 黒というだけで差別するのが当たり前な場所で、もしかしたら、イルト王子は随分と守られた存在だったのかもしれない。もちろんそれは、今の私にも言えることで、改めて、家族へと感謝する。


(お父様もお継母様も、私を愛してくれる。……絶対に、悲しませるわけにはいかないよね?)


 今回は、きっとどんなに調べても、黒幕の捕縛には繋がらない。そして、今日という日をわざわざ選んで襲った動機に関しても、今はまだ、分からない。


(まさか、これが世界の強制力とかいうわけじゃ……ない、よね?)


 チラリと思うのが、イルト王子が襲われることが予定調和であり、それを狂わせないために、今日が襲撃の日となった、なんていう荒唐無稽なことだ。


(うん、ないない。ない……はず)


 残念ながら、世界の強制力についてはまだまだ分かっていないことの方が多い。実際に存在するか否かを含めて、何一つ分かっていないというのが正解だ。ただし、たったの五年ではあるものの、私は今まで生きてきて、何となく、それは存在するのではないかと考えていた。


(何というか……冷遇されて育つユミリアを作ろうとする動きがあるような気がするんだよね)


 お母様や使用人達を追い出したあの日以降、今のお屋敷に居る使用人はあまり増えていないのが現状だ。なぜなら、新しく人を雇っても、彼ら彼女らは、揃って私へ悪意を向けてくるのだ。あらかじめ、私に悪意を向ける者は許さないといった内容を伝えてあるにもかかわらず、そういった者が後を絶たない。


(そこに来て、イルト様への襲撃……うーん、強制力だとするなら、具体的にどんなものなのか分からないことには、対処のしようがないかなぁ?)


 ちなみに、先ほどの話し合いの場で、王妃様にはイルト王子と同じ結界を張る魔導具を渡しておいた。もしも強制力が働くのだとすれば、王妃様の命が危ない。


(でも、強制力でなかった場合も考えなきゃだよね)


 実際、それにばかり囚われていたら、見えなくなることも多いだろう。情報の洗い出しはもちろんのこと、新たな情報を得ることも必要になってくる。


「こちらになります」


 そうして、辿り着いた部屋を前に、私は一度難しい考えは隅に追いやって、頬を緩ませるのだった。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜

くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。 いや、ちょっと待て。ここはどこ? 私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。 マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。 私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ! だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの! 前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

転生したら乙ゲーのモブでした

おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。 登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。 主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です 本作はなろう様でも公開しています

処理中です...