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第一章 幼少期編
第百十二話 私の情報
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「私の情報網によると、牢の管理者の中に裏切り者が居ます」
「なっ」
私の言葉に驚きの声をあげたのはお父様だけだった。お継母様は、事情が呑み込めていないだけのような気もするが、陛下と王妃様は違うだろう。私の言葉に一切動じることなく、むしろ、陛下に至っては面白いものを見つけたとばかりに笑みを浮かべている。
「なるほど、ユミリア嬢の情報網がどのようなものかは分からないが、その内容は確かなものらしい」
「っ、陛下、では、ユミリアの今の言葉は……」
「事実だ。でなければ、何度も牢屋で死人を出すことなどない」
牢屋での死人というのは、恐らく、王妃様を狙うメイリーン国の手の者のことだろう。呪術によって、その者達は死んでいるらしいが、牢屋に入れられる時間があったということは、情報を引き出す時間もあったはずなのだ。にもかかわらず、現在に至るまで、情報は皆無。それすなわち、罪人に干渉できる者が、呪術に見せかけて彼らを殺したこともあったということだ。
陛下の言葉で、お父様もその事実に思い至ったらしく、口をつぐむ。
「では、ユミリア嬢に問う。その裏切り者が裏切り者であるという証拠を得ることは可能か?」
そう言われて、私はメリー達の顔を思い浮かべながら、『可能です』と答える。ただ、それだけで終わるわけにもいかない。
「しかしながら、その証拠を本人に突きつけるのは薦めません」
「……なぜか聞いても?」
「はい、彼の者は、ただの下っ端に過ぎません。ですので、証拠を突きつけたところで、我々が得るものはなく、むしろ、敵を警戒させてしまう結果に繋がるものと思われます」
「……惜しいな。イルトが王となるのであれば、ユミリア嬢はその才を存分に活かせただろうに」
じっとこちらを見て、そう断じる陛下に、私はとりあえずお礼を言っておく。褒めてもらったということに間違いはない。しかも、アルト王子の婚約者にならないか、といった提案をしなかったことからも、陛下はイルト王子と私の気持ちを重視してくれているのが分かる。
「私からも、一つよろしいでしょうか?」
「よい、発言を許す」
今まで、陛下に問われるがまま答え続けていた私は、ようやく、自分から発言する許可をもらう。そして……。
「少し、時間がかかりましたが、こちらを王妃様へお渡ししたいと存じます」
そうして取り出したのは、黒く丸い魔石に金の装飾を施したネックレス。
「これは……?」
「それは、対呪術用の魔導具です。これに触れれば、あまりにも強力なものでない限り、ある程度の呪術を無効化してくれます。一度触れるだけでその効果はありますので、もし、次にメイリーン国からと思われる刺客が現れたら、使ってみてください」
そこまで話せば、このネックレスの重要性を理解した王妃様は、その笑顔を固める。いや、よく見ると、陛下も、お父様も、お継母様まで固まっていた。
「みゅ?」
何が原因か分からずに首をかしげるが、しばらくは、誰も動いてはくれなかった。
「なっ」
私の言葉に驚きの声をあげたのはお父様だけだった。お継母様は、事情が呑み込めていないだけのような気もするが、陛下と王妃様は違うだろう。私の言葉に一切動じることなく、むしろ、陛下に至っては面白いものを見つけたとばかりに笑みを浮かべている。
「なるほど、ユミリア嬢の情報網がどのようなものかは分からないが、その内容は確かなものらしい」
「っ、陛下、では、ユミリアの今の言葉は……」
「事実だ。でなければ、何度も牢屋で死人を出すことなどない」
牢屋での死人というのは、恐らく、王妃様を狙うメイリーン国の手の者のことだろう。呪術によって、その者達は死んでいるらしいが、牢屋に入れられる時間があったということは、情報を引き出す時間もあったはずなのだ。にもかかわらず、現在に至るまで、情報は皆無。それすなわち、罪人に干渉できる者が、呪術に見せかけて彼らを殺したこともあったということだ。
陛下の言葉で、お父様もその事実に思い至ったらしく、口をつぐむ。
「では、ユミリア嬢に問う。その裏切り者が裏切り者であるという証拠を得ることは可能か?」
そう言われて、私はメリー達の顔を思い浮かべながら、『可能です』と答える。ただ、それだけで終わるわけにもいかない。
「しかしながら、その証拠を本人に突きつけるのは薦めません」
「……なぜか聞いても?」
「はい、彼の者は、ただの下っ端に過ぎません。ですので、証拠を突きつけたところで、我々が得るものはなく、むしろ、敵を警戒させてしまう結果に繋がるものと思われます」
「……惜しいな。イルトが王となるのであれば、ユミリア嬢はその才を存分に活かせただろうに」
じっとこちらを見て、そう断じる陛下に、私はとりあえずお礼を言っておく。褒めてもらったということに間違いはない。しかも、アルト王子の婚約者にならないか、といった提案をしなかったことからも、陛下はイルト王子と私の気持ちを重視してくれているのが分かる。
「私からも、一つよろしいでしょうか?」
「よい、発言を許す」
今まで、陛下に問われるがまま答え続けていた私は、ようやく、自分から発言する許可をもらう。そして……。
「少し、時間がかかりましたが、こちらを王妃様へお渡ししたいと存じます」
そうして取り出したのは、黒く丸い魔石に金の装飾を施したネックレス。
「これは……?」
「それは、対呪術用の魔導具です。これに触れれば、あまりにも強力なものでない限り、ある程度の呪術を無効化してくれます。一度触れるだけでその効果はありますので、もし、次にメイリーン国からと思われる刺客が現れたら、使ってみてください」
そこまで話せば、このネックレスの重要性を理解した王妃様は、その笑顔を固める。いや、よく見ると、陛下も、お父様も、お継母様まで固まっていた。
「みゅ?」
何が原因か分からずに首をかしげるが、しばらくは、誰も動いてはくれなかった。
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