悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第百十一話 疑念

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「奴らが行動したきっかけが見えない」

「? 私がイルト様の婚約者になったことと、私が『王家の守り人』だったことが原因では?」


 私が、自分で考えていたことを口にすれば、お父様は首を横に振る。


「ユミリアが最初に調べた段階では、まだユミリアが『王家の守り人』になることも、イルト王子殿下の婚約者になることも、発表されていなかったはずだ」


 そう言われて、確かにそうだと思い至る。しかし、同時にその疑惑は、噂としてあったのだとも思ってしまう。


「ユミリアは、自身が『王家の守り人』になることも、婚約者になることも、噂として存在していたと考えるかもしれないが、貴族はそう単純なものではない。そこに確実なものが存在しなければ、自分が不利になるかもしれないような行動は起こさない。ましてや、ユミリアが黒幕をゾーラ夫人だと考えるならば、なおさらだ」


 『特に、今回は規模が大きいしな』と付け加えられ、私は、お父様の言葉に正しさを見出だしてしまい、困惑する。確かに、もし、ゾーラ夫人が黒幕だと考えるならば、不確実な情報だけでこれだけ大々的なことをしでかすとは思えなかったのだ。


(えっ? じゃあ、何で奴らは、イルト様の排除に乗り出した?)


 よくよく考えれば、不審な点は多い。こんな大きなパーティーを選ばずとも、彼らの作戦目的を考えれば、もっと警備が厳重ではない日を選んで、襲撃した方が確実だ。イルト王子が『呪言の石』に触れてしまう瞬間をわざわざパーティー中に限定する意味が全くない。
 それと、二人目の刺客が私を狙ったことも不可解だった。彼は、イルト王子を狙っているという感じは全くなかった。まるで、最初から私を狙っているかのように一直線に私へと向かってきていたのだ。邪魔だから排除するとかいう次元ではない。完全に、最初から私がターゲットだったかのようなのだ。


「うーん?」


 第一王子派の目的が、第二王子の排除であることを考えれば、なぜ、心を壊すなどという手段に出たのかも疑問だ。直接命を狙ってしまった方が、まだ分かりやすい。


「これ以上議論しても、仕方あるまい。今は、情報を集めることが先決。ユミリア嬢。刺客達は、確保してあるのだろう?」

「はい、今頃、私の使用人達が情報を引き出していることと存じます」

「使用人……そ、そうか。では、その者達をこちらの拷問官に引き渡すことは可能か?」


 その陛下の問いかけは、正しくは問いかけなどではない。幼い私の下に証拠を吐くかもしれない者を置いておくより、自分達の下で徹底的に拷問してみせるという意思がはっきりと見えた。しかし……。


「申し訳ありませんが、それはできません」

「っ、ユミリア!?」


 断ると思っていなかったのか、お父様が声をあげるが、こちらにも事情がある。真っ直ぐに陛下を見つめれば、陛下は気分を害した様子もなく、お父様を片手で制して、私へとさらに問いかける。


「それはなぜだ?」


 その問いが来るのを待っていた私は、チラリと王妃様を見た後、その理由を徐に口にした。
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