悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第百七話 レッツ、パーティー!10

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「あぶないっ!!」


 イルト王子を守りきれたということで、完全に油断していた私は、イルト王子の言葉でようやく振り向き、刃物を振りかぶっている不審者とバッチリ目が合う。


(あ、うん。今度は私狙いか)


 普通ならば、回避は間に合わない。イルト王子が駆けつけたとしても、意味などない。ただ、それはあくまでも、『普通ならば』だ。
 凶刃が、私の体に突き立てられる寸前、ガキッという音とともに、刃が止まる。


「実験台への立候補、ありがとうございます」


 なぜ、刃が止まったのかを理解できない不審者は、すぐさま距離を取ろうとして……刃が全く動かないことに気づいたらしい。
 私は今回、ちょっとした魔導具を身につけている。それは、ドレス生地に練り込まれた形になっているもので、効果はちょっと特殊な結界といったところだろう。何せ……。


「っ!!? くっ!」


 早々に刃を回収するのを諦めた不審者は、それから手を離そうとするが、そこでようやく、手を離すことができなくなっていることに気付き、大いに慌て出す。今はまだ、ポツポツとした灯りしかないせいで、この場の異常は気づかれていない。しかし、灯りが増えれば、当然、不審者が襲いかかろうとした状態のまま止まっている様子を目撃されることとなるだろう。


「あぁ、そうそう。自殺も禁止だよ?」


 舌を噛み切ろうとでもしたらしい不審者は、今度は口を開けた状態で固まっていた。きっと、動こうとしても、全く動けないのだろう。


「ゆみりあじょう。これは……?」


 私がきっちりと対策をしていたことに気づいたイルト王子は、私の手をぎゅうっと握りながら、状況の説明を求めてくる。


「えっとですね。これは、『不審者ホイホイ』と名付けた結界でして……効果は、危害を加えようとした相手の動きを封じて、自殺もさせない、という能力を持つものです」


 命名の感じからして、何を参考に編み出した魔法かは分かるだろう。襲撃者の生け捕りに重きを置いた魔導具。
 次第に、こちらの様子に気づいたらしい貴族達は、悲鳴をあげたり、騎士達へと呼びかけたり、様々な反応を示す。


(うーん、どうしよう? このまま、だというと、私の手を離れちゃうから……セイ達に、みっちり絞られるようにしてもらおうっ)


 具体的な説明を終えた私は、改めて襲撃者の姿を確認して、うなずく。そして、次の瞬間には不審者の姿は跡形もなく消えていた。
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