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第一章 幼少期編
第九十七話 迫る時
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影の耳は、移動時はネズミの姿。そして、対象を定めれば、その者の影に潜み、けっして姿を現すことはない。彼らには個々に知能が存在し、適度に離れた人間を対象に選び、集めた情報をまとめて主へと提出する。だからこそ……。
「みゅう、これは、結構深刻かもしれない……」
集められた情報は、やはり錬金術や生体科学、魔導の力で造り上げた、『影の口』と命名した手のひらいっぱいにデブッと乗る白ネズミの口から語られる。ほしい情報の条件を伝えていれば、その情報だけ得ることも可能だ。
「イルト様の敵が、思ってた以上に多い……」
結果、分かったことといえば、イルト王子を貶めようとする輩が予想以上に多いということだった。そして、そいつらの一部が、動き始めるということも分かっている。
「イルト様に怪我を負わせようだなんて、絶対に阻止しなきゃっ」
もちろん、私がイルト王子に渡した道具は優秀だ。だから、攻撃されたところで、イルト王子の体には傷一つつかないだろう。しかし、それでも、襲われた恐怖は残ってしまう。
「セイには、たっぷりと協力してもらうよ?」
「分かってる、けど、本当にその作戦でいくの? もっと安全な策もありそうだけど……」
「それはダメ。ちょうど、襲撃の前日が、正式に私を『王家の守り人』として任命する場があるんだから、それを利用しない手はないのっ」
「いや、うん……でも、やっぱり、僕はユミリアが危険な目に遭うのは嫌だ」
最初に出会った頃と比べれば、格段にツンの量が減って、むしろデレばかりという状態になっているセイは、ジーッと私を見つめる。
「……セイ、私は強いよ?」
「でも、まだ子供だ」
「中身は大人だよ?」
「中身も十分子供に見える」
「私が負けるとでも?」
「……」
子供だから、という主張は分からなくもない。しかし、それとは別に、私の実力という面で見れば、セイも否定の言葉が思い浮かばないようだった。
(まぁ、前世は大人になりきってはいなかったから、前世と今世を合わせて大人の年齢っていう状態だし、セイの『中身も子供』って言い分はあながち外れでもないけど……今は、大人ってことにしておいてもらおう)
黙り込み、悩む様子のセイに、私は一つの条件を出す。
「大丈夫。私は、敵には容赦なんて一切しないから」
「あぁ……うん、確かに、そうだったね」
「むしろ人間相手なら、煽ってはめて、どん底に突き落とすことだってできるんだから、やりがいはとってもあるよ?」
「いや、それはそれでどうかと……」
「責任は全部、お父様持ち。もしくは、陛下持ちだから、思う存分動けるっ」
「えっ? い、いやいやいや? あれ? いつそんなことになったの!?」
「お父様は私が間違ったことをしなければ味方になってくれるし、陛下は、私を『王家の守り人』にしたことから、その責任が発生する。つまりは、責任ぶん投げて蹂躙可能っ」
「誰もそこまで言ってないよ!?」
「でも、王族であるイルト様を守るために必要なら、認めざるを得ないと思うの」
「そ、それは確かに……」
「だから、目指せっ、最悪の王家の守り人!」
「それは絶対、目指しちゃダメっ!」
セイからは、お父様や陛下の胃や髪の毛を心配してくれと告げられるものの、そんなもの、私が胃薬でも育毛剤でも作れば解決するのだ。だから、何の問題もない。そうして、その時は、着々と迫るのだった。
「みゅう、これは、結構深刻かもしれない……」
集められた情報は、やはり錬金術や生体科学、魔導の力で造り上げた、『影の口』と命名した手のひらいっぱいにデブッと乗る白ネズミの口から語られる。ほしい情報の条件を伝えていれば、その情報だけ得ることも可能だ。
「イルト様の敵が、思ってた以上に多い……」
結果、分かったことといえば、イルト王子を貶めようとする輩が予想以上に多いということだった。そして、そいつらの一部が、動き始めるということも分かっている。
「イルト様に怪我を負わせようだなんて、絶対に阻止しなきゃっ」
もちろん、私がイルト王子に渡した道具は優秀だ。だから、攻撃されたところで、イルト王子の体には傷一つつかないだろう。しかし、それでも、襲われた恐怖は残ってしまう。
「セイには、たっぷりと協力してもらうよ?」
「分かってる、けど、本当にその作戦でいくの? もっと安全な策もありそうだけど……」
「それはダメ。ちょうど、襲撃の前日が、正式に私を『王家の守り人』として任命する場があるんだから、それを利用しない手はないのっ」
「いや、うん……でも、やっぱり、僕はユミリアが危険な目に遭うのは嫌だ」
最初に出会った頃と比べれば、格段にツンの量が減って、むしろデレばかりという状態になっているセイは、ジーッと私を見つめる。
「……セイ、私は強いよ?」
「でも、まだ子供だ」
「中身は大人だよ?」
「中身も十分子供に見える」
「私が負けるとでも?」
「……」
子供だから、という主張は分からなくもない。しかし、それとは別に、私の実力という面で見れば、セイも否定の言葉が思い浮かばないようだった。
(まぁ、前世は大人になりきってはいなかったから、前世と今世を合わせて大人の年齢っていう状態だし、セイの『中身も子供』って言い分はあながち外れでもないけど……今は、大人ってことにしておいてもらおう)
黙り込み、悩む様子のセイに、私は一つの条件を出す。
「大丈夫。私は、敵には容赦なんて一切しないから」
「あぁ……うん、確かに、そうだったね」
「むしろ人間相手なら、煽ってはめて、どん底に突き落とすことだってできるんだから、やりがいはとってもあるよ?」
「いや、それはそれでどうかと……」
「責任は全部、お父様持ち。もしくは、陛下持ちだから、思う存分動けるっ」
「えっ? い、いやいやいや? あれ? いつそんなことになったの!?」
「お父様は私が間違ったことをしなければ味方になってくれるし、陛下は、私を『王家の守り人』にしたことから、その責任が発生する。つまりは、責任ぶん投げて蹂躙可能っ」
「誰もそこまで言ってないよ!?」
「でも、王族であるイルト様を守るために必要なら、認めざるを得ないと思うの」
「そ、それは確かに……」
「だから、目指せっ、最悪の王家の守り人!」
「それは絶対、目指しちゃダメっ!」
セイからは、お父様や陛下の胃や髪の毛を心配してくれと告げられるものの、そんなもの、私が胃薬でも育毛剤でも作れば解決するのだ。だから、何の問題もない。そうして、その時は、着々と迫るのだった。
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