悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第九十二話 心配全開

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 王妃様とのお話を終えて、愛しのイルト王子の元へ寄った後、私は元々乗ってきていた馬車で帰路についた。
 本来のお茶会が続いていたなら、ちょうど今くらいの時間に終わるはずだったので、ちょうど良かったと言えば良かったのだが……屋敷に帰った私を待ち受けていたのは顔面蒼白なお父様と、今にも泣き出しそうなお継母様だった。


「ユミリア!」

「ユミリアちゃんっ!」


 私の姿を認めるや否や、二人は駆け寄ってくる。


「ユミリア、どこか痛いところは? あぁっ、可哀想にっ! 怖かっただろうっ」

「ユミリアちゃんっ。怪我はない? 本当にない? 隠したら怒りますわよ?」


 お父様に抱き締められ、お継母様にも抱き締められ、盛大に心配された私は、一気に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


(これ、絶対に、私が何をしたのか報告がいってる……)


 恐らくは、襲撃者相手の大立ち回りがバレたのだ。それも、この様子ではかなり詳しく話が通っているらしい。


「まさか、王妃様のお茶会でこんなことになるなんて」

「ユミリアちゃん。とりあえずは、温かいお茶を飲みましょう? まだ、ショックはあるでしょう?」

(ごめんなさい。欠片もショックは受けていないです。……なんて、言えないよなぁ……)

「ユミリアお嬢様。何も心配はいりません。お嬢様を害そうとした蛆虫は、何としてでも潰して参りますので」

「うむ、メリーならばやってくれますからな。心配ご無用です」


 いつの間にか、メリーもムトもその場に居て、その後ろで、セイ達も心配そうに私の方を見つめていた。


「ユミリア、今から、その馬鹿達を引きずり回してこようか?」

「魔境に捨て置くのも良いかもなぁ?」

「ぼく、追い回す役っ」


 各々が物騒なことを言ってはいるものの、恐らくは、あの襲撃者達も呪術で亡くなっていることだろう。ただ、ここに居る面々は、それらの事情を知らないだけなのだ。


「そ、その、私は大丈夫です。この通り、傷一つありませんし、ピンピンしてますっ」


 実際、私の服には汚れ一つついていない状態だ。だから、それを思いきってアピールしてみたのだが、それでもお父様達の心配がやむことはない。


「とにかく、今日はゆっくり休むと良い」

「そうですわねっ。何か、安心できるものを……コウを触らせてもらうのも良いのではないですか?」


 普段から鋼をモフモフしていたのが、どうやらお継母様にはバレていたらしい。自分の名前が挙げられたのが分かったのか、鋼はそっと私の隣に座って、上目遣いに見上げてくる。


「ユミリアなら、いつでも触って良い。ユミリアに触られるの、嬉しい」


 純粋な鋼の眼差しに少し怯めば、お継母様は我が意を得たりとばかりに私へ笑いかける。


「……なら、少し休んでから、またお話しましょう」


 実際のところ、今回の件は私の方からも話さねばならない内容だろう。

 鋼をモフモフしながら、自室へと向かった私は、しきりにベッドへ入ることを勧められ、そのまま、少しの間、眠るのだった。
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