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第一章 幼少期編
第八十話 いざ、お茶会、の前
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時は遡り、お茶会開始前。私は、イルト王子に抱き締められていた。
「み、みゅうっ!?」
「ゆみりあじょう。あいたかった」
現在、私の姿はゴシックロリータ風の黒と青のドレスを着こなした黒にゃんこな幼女だ。この服は、イルト王子と私の色である黒をどうしてもドレスに入れたかった私が、頭を悩ませて作り上げた服だった。もちろん、耐久性抜群で、攻撃力も高めな服に仕立ててはいるのだが……イルト王子の抱き締め攻撃を前にしては、紙装甲でしかない。
「い、いいい、いると、しゃま!?」
あまりの動揺で、舌が上手く回ってくれない。もちろん、頭も回らないし、顔には熱が集中している。
「ゆみりあじょう、かわいい」
そして、至近距離でほんのり頬を染めてはにかむイルト王子を前に……私は、理性を手放しそうになって、慌てて頭をはっきりさせるべくふるふると首を振る。
「こんなにかわいいゆみりあじょうを、いまからほかのやつらにみられるなんて……ゆみりあじょう、めつぶしができるまどうぐとかない?」
「に、にゃいですっ」
(可愛いって、可愛いって、二回も言われたっ!? それに、これはもしかして、独占欲!?)
「そっか……あぁ、いやだ。いきたくない。ゆみりあじょうをさらって、とじこめて、ずっとぼくだけをみてほしい」
ぎゅうぎゅうと抱き締められる私は、もう、幸せすぎて頬が緩みっぱなしだ。
(イルト様に抱き締められてる……好き)
「えーっと……そろそろいかないと、ははうえにおこられるぞ?」
と、そこで、なぜか同じ馬車でイルト王子と一緒に私を迎えにきたアルト王子が水を差す。
「にいさん、じゃましないで」
「いや、その……じゃまはしたくないけど、ゆみりあじょうのちちぎみがこわい……」
現在、私達が抱き合っている場所は、我が家の玄関前である。当然、お父様達も見送りに来ていたわけで……なるほど、言われてみれば、お父様の顔は悲壮さを隠そうとするあまりに恐ろしい形相となっていた。そして、イルト王子はそんなお父様をチラリと見て、その後、名残惜しそうに私から離れる。
「ゆみりあじょうは、ぼくからぜったいにはなれないで」
「はいっ、いつまでも、ずっと、お側に居ますっ」
そう答えれば、イルト王子は嬉しそうに私の頭を軽く撫でてくれる。
今日のヘアスタイルは、両サイドの髪を緩くパーマにかけて、後ろでお団子を作っている。髪飾りももちろん、私の力作で、黒に金の縁取りをした大きなリボンの髪飾りだ。リボンそのものに細かい刺繍を加えたそれは、見る者が見れば、どれほどの価値があるか分かるだろう。
ただ、恐らくはそんなヘアスタイルを崩さないように配慮された撫で方に、私は髪だけは簡単にすれば良かったと、少しだけ後悔する。いつか、イルト王子に存分に撫でてもらいたいところだ。
「じゃあ、いこうか」
さりげなくエスコートしてくれるイルト王子に、私は手を重ねて馬車に乗り込む。馬車には、私、イルト王子、アルト王子が乗っていたのだが、私とイルト王子は、終始二人の空間を作り続け、アルト王子はその様子に感心し続けるといった奇妙な関係が出来上がりながら、いつの間にか、お茶会の会場まで馬車が到着していた。
「み、みゅうっ!?」
「ゆみりあじょう。あいたかった」
現在、私の姿はゴシックロリータ風の黒と青のドレスを着こなした黒にゃんこな幼女だ。この服は、イルト王子と私の色である黒をどうしてもドレスに入れたかった私が、頭を悩ませて作り上げた服だった。もちろん、耐久性抜群で、攻撃力も高めな服に仕立ててはいるのだが……イルト王子の抱き締め攻撃を前にしては、紙装甲でしかない。
「い、いいい、いると、しゃま!?」
あまりの動揺で、舌が上手く回ってくれない。もちろん、頭も回らないし、顔には熱が集中している。
「ゆみりあじょう、かわいい」
そして、至近距離でほんのり頬を染めてはにかむイルト王子を前に……私は、理性を手放しそうになって、慌てて頭をはっきりさせるべくふるふると首を振る。
「こんなにかわいいゆみりあじょうを、いまからほかのやつらにみられるなんて……ゆみりあじょう、めつぶしができるまどうぐとかない?」
「に、にゃいですっ」
(可愛いって、可愛いって、二回も言われたっ!? それに、これはもしかして、独占欲!?)
「そっか……あぁ、いやだ。いきたくない。ゆみりあじょうをさらって、とじこめて、ずっとぼくだけをみてほしい」
ぎゅうぎゅうと抱き締められる私は、もう、幸せすぎて頬が緩みっぱなしだ。
(イルト様に抱き締められてる……好き)
「えーっと……そろそろいかないと、ははうえにおこられるぞ?」
と、そこで、なぜか同じ馬車でイルト王子と一緒に私を迎えにきたアルト王子が水を差す。
「にいさん、じゃましないで」
「いや、その……じゃまはしたくないけど、ゆみりあじょうのちちぎみがこわい……」
現在、私達が抱き合っている場所は、我が家の玄関前である。当然、お父様達も見送りに来ていたわけで……なるほど、言われてみれば、お父様の顔は悲壮さを隠そうとするあまりに恐ろしい形相となっていた。そして、イルト王子はそんなお父様をチラリと見て、その後、名残惜しそうに私から離れる。
「ゆみりあじょうは、ぼくからぜったいにはなれないで」
「はいっ、いつまでも、ずっと、お側に居ますっ」
そう答えれば、イルト王子は嬉しそうに私の頭を軽く撫でてくれる。
今日のヘアスタイルは、両サイドの髪を緩くパーマにかけて、後ろでお団子を作っている。髪飾りももちろん、私の力作で、黒に金の縁取りをした大きなリボンの髪飾りだ。リボンそのものに細かい刺繍を加えたそれは、見る者が見れば、どれほどの価値があるか分かるだろう。
ただ、恐らくはそんなヘアスタイルを崩さないように配慮された撫で方に、私は髪だけは簡単にすれば良かったと、少しだけ後悔する。いつか、イルト王子に存分に撫でてもらいたいところだ。
「じゃあ、いこうか」
さりげなくエスコートしてくれるイルト王子に、私は手を重ねて馬車に乗り込む。馬車には、私、イルト王子、アルト王子が乗っていたのだが、私とイルト王子は、終始二人の空間を作り続け、アルト王子はその様子に感心し続けるといった奇妙な関係が出来上がりながら、いつの間にか、お茶会の会場まで馬車が到着していた。
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