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第一章 幼少期編
第七十八話 モフ恋のシナリオ5
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イルト王子が自ら顔を焼く事件について、お父様達は悲痛に顔を歪める。
「ただ黒だというだけで、なぜ、そこまで追い詰められなければならないっ」
お父様は私を見て、そう嘆く。
(あぁ、お父様は、イルト様と私を重ねているのか……)
黒に対する差別は、時に、黒を纏う者を死に至らしめることだってある。黒であり、王子でもあるイルト様の苦しみは計り知れないものだ。
「でも、今は私達がイルト様を守ることができます。だから、きっと、イルト様が顔を焼く未来なんてきません」
強制力を考えれば、それは希望的観測だと思われる。しかし、それでもそう願わずにはいられなかった。
「第二王子のことは、僕達の方でも注意しておくよ」
「俺も、暇ができたら監視しておこう」
「ぼくもっ」
セイ、ローラン、鋼の言葉に、私は少し安心する。
(きっと、大丈夫だよね?)
そして、私は最後の攻略対象者、ディランについて話を始めることにする。
「私が覚えている最後の攻略対象者、ディランは、私が唯一家名まで覚えている人間」
「そうか、そのディランという者の名前だけ、どうしても何者なのかが分からなかったから、ちょうど良い」
どうやら、お父様はこれまでのハイルやティトについては、どこの家の者なのか把握できているらしい。さすがはお父様だ。
「彼の名前は、ディラン・リ・アルテナ。ユミリアが五歳で婚約した後、後継者として分家から養子に取った男の子で、ユミリアの兄となる存在」
ユミリアと一歳差の男の子。ディランは、順当にいけばユミリアの兄となるはずの存在。ユミリアが第一王子であるアルト王子と婚約したことによって、後継者問題を抱えた父が、それを解決するために迎えた存在だった。
これまでの話の流れで、何となくそれを理解したらしいお父様は、ヒュッと息を呑む。どうやら、心当たりがあるらしい。
「ディランは、誰よりもユミリアを恐れながら育ちます。黒の獣つきであるユミリアと、幼い頃からずっと一緒にされて、とにかくユミリアが怖かったディランは、成長し、学園に入ってもなお、表向きは取り繕えても、心の中ではユミリアに怯えていた。そんなディランは、たまたまミーシャと中庭で出会い、話をするうちに意気投合する。ただ、ユミリアはディランが幸せそうなのが許せず、ディランに嫌がらせを繰り返し、とうとう、ミーシャにまで手を出してくる」
もちろん、それまでにも事件はあったものの、だいたいの流れはこんな感じだ。
「バッドエンドでは、ユミリアの目論見が成功して、ミーシャが馬車で移動中、事故を起こして死亡。ディランは復讐の鬼となって、ユミリアを殺害の後に自殺。魔王が復活して世界滅亡。ハッピーエンドでは、ユミリアの目論見が事前にバレて、逆にディランがユミリアを嵌めて、ユミリアは身分を剥奪されて娼館に売られる。その後、魔王が復活して、ミーシャが浄化してめでたしめでたし」
そこまで説明して、皆の方へ視線を向ければ……そこには、鬼の形相をしたお父様、ニコニコしながら目が笑っていないお継母様、どこから取り出したのか、鞭を片手にうっとりとするメリー、ただただ殺意を漲らせるセイ、ローラン、鋼。
(あ、あれ? どうしてこうなった?)
全員の様子にただただ困惑する私は、椅子の上で小さくなるしかなかった。
「ただ黒だというだけで、なぜ、そこまで追い詰められなければならないっ」
お父様は私を見て、そう嘆く。
(あぁ、お父様は、イルト様と私を重ねているのか……)
黒に対する差別は、時に、黒を纏う者を死に至らしめることだってある。黒であり、王子でもあるイルト様の苦しみは計り知れないものだ。
「でも、今は私達がイルト様を守ることができます。だから、きっと、イルト様が顔を焼く未来なんてきません」
強制力を考えれば、それは希望的観測だと思われる。しかし、それでもそう願わずにはいられなかった。
「第二王子のことは、僕達の方でも注意しておくよ」
「俺も、暇ができたら監視しておこう」
「ぼくもっ」
セイ、ローラン、鋼の言葉に、私は少し安心する。
(きっと、大丈夫だよね?)
そして、私は最後の攻略対象者、ディランについて話を始めることにする。
「私が覚えている最後の攻略対象者、ディランは、私が唯一家名まで覚えている人間」
「そうか、そのディランという者の名前だけ、どうしても何者なのかが分からなかったから、ちょうど良い」
どうやら、お父様はこれまでのハイルやティトについては、どこの家の者なのか把握できているらしい。さすがはお父様だ。
「彼の名前は、ディラン・リ・アルテナ。ユミリアが五歳で婚約した後、後継者として分家から養子に取った男の子で、ユミリアの兄となる存在」
ユミリアと一歳差の男の子。ディランは、順当にいけばユミリアの兄となるはずの存在。ユミリアが第一王子であるアルト王子と婚約したことによって、後継者問題を抱えた父が、それを解決するために迎えた存在だった。
これまでの話の流れで、何となくそれを理解したらしいお父様は、ヒュッと息を呑む。どうやら、心当たりがあるらしい。
「ディランは、誰よりもユミリアを恐れながら育ちます。黒の獣つきであるユミリアと、幼い頃からずっと一緒にされて、とにかくユミリアが怖かったディランは、成長し、学園に入ってもなお、表向きは取り繕えても、心の中ではユミリアに怯えていた。そんなディランは、たまたまミーシャと中庭で出会い、話をするうちに意気投合する。ただ、ユミリアはディランが幸せそうなのが許せず、ディランに嫌がらせを繰り返し、とうとう、ミーシャにまで手を出してくる」
もちろん、それまでにも事件はあったものの、だいたいの流れはこんな感じだ。
「バッドエンドでは、ユミリアの目論見が成功して、ミーシャが馬車で移動中、事故を起こして死亡。ディランは復讐の鬼となって、ユミリアを殺害の後に自殺。魔王が復活して世界滅亡。ハッピーエンドでは、ユミリアの目論見が事前にバレて、逆にディランがユミリアを嵌めて、ユミリアは身分を剥奪されて娼館に売られる。その後、魔王が復活して、ミーシャが浄化してめでたしめでたし」
そこまで説明して、皆の方へ視線を向ければ……そこには、鬼の形相をしたお父様、ニコニコしながら目が笑っていないお継母様、どこから取り出したのか、鞭を片手にうっとりとするメリー、ただただ殺意を漲らせるセイ、ローラン、鋼。
(あ、あれ? どうしてこうなった?)
全員の様子にただただ困惑する私は、椅子の上で小さくなるしかなかった。
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