悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第七十三話 温もりの中

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 お父様とお継母様の方を見て、私は、震えそうになる声を必死に出して、簡単に前世の話をする。そして、本来のユミリア・リ・アルテナという存在が、私が転生したことで消えてしまったかもしれないことも。
 いつの間にか、私はうつむいていた。話が終わり、沈黙に包まれる中、私は顔を上げられなかった。


「話は、分かった」


 そんな沈黙を破ったのは、お父様だ。
 次にどんな言葉が来るのか分からない私は、体を強張らせてその衝撃に備える。


「だから、そう怯えることはない。ユミリアはユミリアだ」


 しかし、予想とは異なり、とても柔らかな言葉がかけられ、私は困惑しながら、そっと顔を上げる。
 そこには、穏やかな顔をしたお父様とお継母様が居た。


「ユミリアちゃん。ユミリアちゃんは、最初からユミリアちゃんだったのでしょう? なら、私達の娘で間違いないわ」

「そうだ。たとえ、本来のユミリアという存在があったのだとしても、私達にとってのユミリアは、今、目の前に居るユミリアだけだ」


 諦めなきゃいけない。そう、思っていた。私は、本来のユミリアではないのだから、本来のユミリアを消滅させてしまったかもしれないのだから、受け入れてもらえるわけがないと、そう思っていたのに……私の予想を大きく裏切るお父様とお継母様の言葉に、私は、声が出なくなる。


「ユ、ユミリア!?」

「あらあらまぁまぁっ」


 気づけば、視界が滲み、温かなものが頬を伝う。
 ガタッと音を立てて椅子から立ち上がったお父様が、猛スピードでこちらにやってきて、しかし、私の目の前で止まったまま、オロオロとしだす。


「ガイアス様、こういう時は、抱き締めてあげなきゃダメですわ。ほら、こんな風に」


 お父様に気を取られていた私は、お父様とは反対側にいつの間にか立っていたお継母様から、ギュッと抱き締められる。


(温かい……)


 ふわりと、優しい香りに包まれて、柔らかな感触に包まれる。


「あ、あぁ」


 抱き締められながら頭を軽く撫でてもらった私は、すぐに今度は逆方向から抱き締められる。
 ゴツゴツした手で、恐る恐るといった様子でお継母様ごと抱き締めてくるお父様。さっぱりとした香りと、硬い胸板に迎えられ、トントンと背中を優しく叩かれる。


「私達は、ユミリアを否定するつもりはない。前世とやらの話は分からないことも多かったが、ユミリアの言うことなのだから間違いはないのだろう。大丈夫。私達は、いつだってユミリアの味方だ」


 懸命に言葉を尽くしてくれるお父様に、私はとうとう、声をあげて泣き出す。
 お父様とお継母様は、そんな私を、いつまでも、いつまでも、優しく抱き締めて、見守ってくれた。
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