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第一章 幼少期編
第七十二話 お父様とお継母様へ
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(とうとう、来ちゃった……)
そこは、お父様の私室の前。大切な話があるのだと言付けてもらった結果、私はお父様の私室に呼ばれていた。
(き、緊張が……)
自然と手が震え、足がすくむ。
これから私が行うことは、前世の暴露だ。そして、それに伴い、本来のユミリアが失われてしまったかもしれないという可能性も話すつもりだ。
「ユミリア」
「うん、分かってる。大丈夫」
セイの声に促される形で、私はギュッと手を握り込み、軽くノックをする。
「ユミリアです」
「入れ」
私の声を聞くや否や、すぐに応じて入室の許可を出すお父様。しかし、私が話をしてしまえば、この関係は終わってしまうかもしれない。
「……失礼します」
それでも、騙し続けることはできない。覚悟を決めて部屋へ入ると、そこには、あらかじめ願っていた通り、他の使用人などはおらず、お父様とお継母様の二人だけしか居なかった。
全体的に黒系統の家具で統一されたシックな部屋。ベッドの掛布や、ちょっとしたチェスト、テーブル、カーテン、植木鉢などが黒く、わりと格好いい。そして、部屋の中央にある小さめのテーブルを前に、お父様とお継母様が座っていた。
「ユミリア、そこに座ると良い。何か飲むか?」
「その……はい」
緊張のため、喉が渇いていたので、飲み物はありがたかった。お父様は私の返事にニッコリとうなずくと、テーブルの端に置かれていたポットに茶葉を入れ、近くに置いてあった青い魔石を用いて、お湯を生み出す。
「すぐにできる。待っていてくれ」
お父様は、けっしてお茶を淹れるのが上手いわけではない。しかし、ここに私が来た時は、ほぼ確実にお父様が自分でお茶を淹れてくれていた。到底貴族の当主とは思えないその行動に、最初の頃は困惑したものの、誰も何も言わないため、そういうものなのだと割り切ることにした。
(でも、これも、最後かもしれない……)
話を終えて、私達がここまで優しい関係でいられるとは限らない。からからに渇いた喉に、今すぐにでも紅茶がほしいと思いながらも大人しく待ち、お父様がいそいそと可愛らしいティーカップセットを用意して、机に並べて、ポットの中身を注いでいく様子を眺める。
「砂糖は一つで良いか?」
完全に私の好みを把握しておきながら、それでも一応尋ねてくるお父様に、私はコクリとうなずき、ソーサーごと紅茶を受け取る。
紅茶は、お継母様にも出され、お父様もちゃっかり自分の分を目の前に置いて座る。
「心の準備ができたら、話すと良い。それまで、紅茶ならいくらでも作ろう」
まだ、何を話すとも告げていないにもかかわらず、私を気遣ってくれるお父様。
(……よし、落ち着くまで、ちょっと紅茶を飲もう)
少しばかり渋味の残る、しかし、その温度以上に温かい紅茶を、ゆっくり、ゆっくり飲み進めた私は、一口飲む度に心を落ち着けて、ゆっくりと、体の強張りを解く。
「今日は、とても大切なお話があります」
そう、前置きをして、私はゆっくり、話始めた。
そこは、お父様の私室の前。大切な話があるのだと言付けてもらった結果、私はお父様の私室に呼ばれていた。
(き、緊張が……)
自然と手が震え、足がすくむ。
これから私が行うことは、前世の暴露だ。そして、それに伴い、本来のユミリアが失われてしまったかもしれないという可能性も話すつもりだ。
「ユミリア」
「うん、分かってる。大丈夫」
セイの声に促される形で、私はギュッと手を握り込み、軽くノックをする。
「ユミリアです」
「入れ」
私の声を聞くや否や、すぐに応じて入室の許可を出すお父様。しかし、私が話をしてしまえば、この関係は終わってしまうかもしれない。
「……失礼します」
それでも、騙し続けることはできない。覚悟を決めて部屋へ入ると、そこには、あらかじめ願っていた通り、他の使用人などはおらず、お父様とお継母様の二人だけしか居なかった。
全体的に黒系統の家具で統一されたシックな部屋。ベッドの掛布や、ちょっとしたチェスト、テーブル、カーテン、植木鉢などが黒く、わりと格好いい。そして、部屋の中央にある小さめのテーブルを前に、お父様とお継母様が座っていた。
「ユミリア、そこに座ると良い。何か飲むか?」
「その……はい」
緊張のため、喉が渇いていたので、飲み物はありがたかった。お父様は私の返事にニッコリとうなずくと、テーブルの端に置かれていたポットに茶葉を入れ、近くに置いてあった青い魔石を用いて、お湯を生み出す。
「すぐにできる。待っていてくれ」
お父様は、けっしてお茶を淹れるのが上手いわけではない。しかし、ここに私が来た時は、ほぼ確実にお父様が自分でお茶を淹れてくれていた。到底貴族の当主とは思えないその行動に、最初の頃は困惑したものの、誰も何も言わないため、そういうものなのだと割り切ることにした。
(でも、これも、最後かもしれない……)
話を終えて、私達がここまで優しい関係でいられるとは限らない。からからに渇いた喉に、今すぐにでも紅茶がほしいと思いながらも大人しく待ち、お父様がいそいそと可愛らしいティーカップセットを用意して、机に並べて、ポットの中身を注いでいく様子を眺める。
「砂糖は一つで良いか?」
完全に私の好みを把握しておきながら、それでも一応尋ねてくるお父様に、私はコクリとうなずき、ソーサーごと紅茶を受け取る。
紅茶は、お継母様にも出され、お父様もちゃっかり自分の分を目の前に置いて座る。
「心の準備ができたら、話すと良い。それまで、紅茶ならいくらでも作ろう」
まだ、何を話すとも告げていないにもかかわらず、私を気遣ってくれるお父様。
(……よし、落ち着くまで、ちょっと紅茶を飲もう)
少しばかり渋味の残る、しかし、その温度以上に温かい紅茶を、ゆっくり、ゆっくり飲み進めた私は、一口飲む度に心を落ち着けて、ゆっくりと、体の強張りを解く。
「今日は、とても大切なお話があります」
そう、前置きをして、私はゆっくり、話始めた。
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