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第一章 幼少期編
第三十四話 神霊樹の森 中編 (三人称視点)
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飛び出た先は、何の変哲もない木々が密集した場所……いや、それは、神霊樹の森においては珍しい、土の大地が存在する森らしき場所だった。
もはや、枝とは呼べないほど巨大な木の道を走っていたユミリア達は、その光景を前に立ち止まる。
「これは……?」
ローランが訝しげに眉を顰めた直後、小刻みに地面が揺れ始める。
「くりゅにょ。だーくふぉれしゅと(来るの。ダークフォレスト)」
「なっ」
ユミリアの言葉に息を呑んだローランと鋼は、すぐにその異変を目撃する。
目の前で青々と茂っていた木々が、スゥっと変色し、黒いものへと変わってしまう。メキメキと音を立てて、地面から木の根が抜け、高く、高く伸びていく。
と、そこで、ユミリアはすっと上空を見上げる。
「しぇいーっ!! (セイーっ!!)」
ずっと、上空からユミリア達を見守っていたセイ。そんなセイは、ユミリアの呼び掛けに大きくうなずいてみせると、さらに上空へと羽ばたく。上へ、上へ……どんどん昇っていくセイの姿は、もうほとんど見えない。
そんな中、ユミリアがダークフォレストと言った目の前の木々の群生はワラワラと枝やら根やらを波打たせていたのを停止して、ユミリア達へとその切っ先を向ける。
「「っ!」」
濃密な殺意。それを敏感に感じ取った鋼とローランは一気に警戒を強め……上空から、ダークフォレストに向けて何かが落ちてきていたことに気づく。そして、それがダークフォレストの中に落ちたと思われた瞬間だった。
ドゴォォオンッ!
ダークフォレストの大半を包むほどの爆発が起こり、鋼とローランは咄嗟にユミリアを守ろうとして、逆に、ユミリアの翼が巨大化して包まれることで爆風から守られてしまう。
「ギャシャアァァァァアッ!!」
そして、爆発は一度だけではすまず、しばらくすると二度、三度、四度と回数を重ねていき、その度にダークフォレストは悲鳴をあげ、その声を小さなものへと変えていく。
六度目の爆発が起こる頃には、もはやダークフォレストの声は聞こえず、先程まで存在していた黒い森は、別の意味で黒くなり、焼け焦げ、ボロボロになっていた。
「だーくふぉれしゅとにょしゅみは、びよーえちをちゅくりゅにょにちょうどいいにょ(ダークフォレストの炭は、美容液を作るのにちょうど良いの)」
哀れダークフォレスト。それは、神霊樹の森を守る最後の守護者だというのに、攻撃に出る隙も与えられず、ただの便利な素材扱いをされていた。
炎が立ち上ぼり、もうもうと煙をあげるダークフォレスト、の死骸。爆発がなくなったことで、翼を元の小さなサイズに戻したユミリアは、呆然と立ち尽くす鋼とローランを横目に満足そうにうなずくと、それらに手を触れることなく、ストレージへの収納を行う。
「ユミリアー」
と、そこで、上空からダークフォレストを爆撃した犯人、セイが空から舞い戻ってきた。
「しぇいっ、ありあちょー! おかげで、かんちゃんにちゃおしぇちゃにょっ(セイ、ありがとう! おかげで、簡単に倒せたのっ)」
そう言ったユミリアに、セイは複雑そうな表情を浮かべる。
「いや、僕は言われた通りに、ダークフォレストからかなり距離を取ったところでこれを落としただけなんだけど……何なのっ、あの威力っ。僕、最初に取った距離からでもなお爆風を受けたんだけど!?」
そう、一度目の爆撃の際、セイは遠く離れていたにもかかわらず爆風の影響を受け、慌ててさらに距離を取っていた。そして、セイがその両手に持つものは、全長五十センチほどもあるミサイル弾だった。
「みゅう、ほんちょーは、しょれをうちだしゅもにょをちゅくりゅよていだっちゃんだけど、しょれをしゅりゅだけにょざいりょーはしょりょわにゃかっちゃにょ(みゅう、本当は、それを打ち出すものを作る予定だったんだけど、それをするだけの材料は揃わなかったの)」
「い、いや、そういう問題じゃなくて……」
「しょれより、みちがひらいちゃかりゃ、はやくいくにょっ(それより、道が開いたから、早く行くのっ)」
困惑するセイと、未だ、衝撃から抜けきれない鋼とローランを連れて、ユミリアはダークフォレストが存在していた場所の奥に現れた、少し煤けた木の洞窟へと向かった。
もはや、枝とは呼べないほど巨大な木の道を走っていたユミリア達は、その光景を前に立ち止まる。
「これは……?」
ローランが訝しげに眉を顰めた直後、小刻みに地面が揺れ始める。
「くりゅにょ。だーくふぉれしゅと(来るの。ダークフォレスト)」
「なっ」
ユミリアの言葉に息を呑んだローランと鋼は、すぐにその異変を目撃する。
目の前で青々と茂っていた木々が、スゥっと変色し、黒いものへと変わってしまう。メキメキと音を立てて、地面から木の根が抜け、高く、高く伸びていく。
と、そこで、ユミリアはすっと上空を見上げる。
「しぇいーっ!! (セイーっ!!)」
ずっと、上空からユミリア達を見守っていたセイ。そんなセイは、ユミリアの呼び掛けに大きくうなずいてみせると、さらに上空へと羽ばたく。上へ、上へ……どんどん昇っていくセイの姿は、もうほとんど見えない。
そんな中、ユミリアがダークフォレストと言った目の前の木々の群生はワラワラと枝やら根やらを波打たせていたのを停止して、ユミリア達へとその切っ先を向ける。
「「っ!」」
濃密な殺意。それを敏感に感じ取った鋼とローランは一気に警戒を強め……上空から、ダークフォレストに向けて何かが落ちてきていたことに気づく。そして、それがダークフォレストの中に落ちたと思われた瞬間だった。
ドゴォォオンッ!
ダークフォレストの大半を包むほどの爆発が起こり、鋼とローランは咄嗟にユミリアを守ろうとして、逆に、ユミリアの翼が巨大化して包まれることで爆風から守られてしまう。
「ギャシャアァァァァアッ!!」
そして、爆発は一度だけではすまず、しばらくすると二度、三度、四度と回数を重ねていき、その度にダークフォレストは悲鳴をあげ、その声を小さなものへと変えていく。
六度目の爆発が起こる頃には、もはやダークフォレストの声は聞こえず、先程まで存在していた黒い森は、別の意味で黒くなり、焼け焦げ、ボロボロになっていた。
「だーくふぉれしゅとにょしゅみは、びよーえちをちゅくりゅにょにちょうどいいにょ(ダークフォレストの炭は、美容液を作るのにちょうど良いの)」
哀れダークフォレスト。それは、神霊樹の森を守る最後の守護者だというのに、攻撃に出る隙も与えられず、ただの便利な素材扱いをされていた。
炎が立ち上ぼり、もうもうと煙をあげるダークフォレスト、の死骸。爆発がなくなったことで、翼を元の小さなサイズに戻したユミリアは、呆然と立ち尽くす鋼とローランを横目に満足そうにうなずくと、それらに手を触れることなく、ストレージへの収納を行う。
「ユミリアー」
と、そこで、上空からダークフォレストを爆撃した犯人、セイが空から舞い戻ってきた。
「しぇいっ、ありあちょー! おかげで、かんちゃんにちゃおしぇちゃにょっ(セイ、ありがとう! おかげで、簡単に倒せたのっ)」
そう言ったユミリアに、セイは複雑そうな表情を浮かべる。
「いや、僕は言われた通りに、ダークフォレストからかなり距離を取ったところでこれを落としただけなんだけど……何なのっ、あの威力っ。僕、最初に取った距離からでもなお爆風を受けたんだけど!?」
そう、一度目の爆撃の際、セイは遠く離れていたにもかかわらず爆風の影響を受け、慌ててさらに距離を取っていた。そして、セイがその両手に持つものは、全長五十センチほどもあるミサイル弾だった。
「みゅう、ほんちょーは、しょれをうちだしゅもにょをちゅくりゅよていだっちゃんだけど、しょれをしゅりゅだけにょざいりょーはしょりょわにゃかっちゃにょ(みゅう、本当は、それを打ち出すものを作る予定だったんだけど、それをするだけの材料は揃わなかったの)」
「い、いや、そういう問題じゃなくて……」
「しょれより、みちがひらいちゃかりゃ、はやくいくにょっ(それより、道が開いたから、早く行くのっ)」
困惑するセイと、未だ、衝撃から抜けきれない鋼とローランを連れて、ユミリアはダークフォレストが存在していた場所の奥に現れた、少し煤けた木の洞窟へと向かった。
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