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第一章 幼少期編
第十七話 名前
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状況を整理しよう。フェンリルの討伐、もしくは説得の試練を受けた。フェンリルを躾て、回復させて、話を聞いた。友達になろうと言えば、下僕にしてほしいと言われた。……うん、謎だ。
『……フェンリルは、強い者に従う習性が強いんだ』
そんな私に答えをくれたのは、どこか遠い目をしたセイだった。
(……なるほど)
きっと、躾がキツすぎたのだろう。その自覚は、一応ある。『コツ生』で、鼻ばかり狙ってフェンリルを屈服させると、泡を吹いて倒れたフェンリルの可愛いアイコンが出てくるため、つい調子に乗ってやってしまったが、フェンリルにとっては大事だったに違いない。
「っ、下僕がダメなら、奴隷でもっ」
「めっ、ともだちがいいにょっ(メッ、友達が良いのっ)」
しばらく黙っていると、何を思ったか焦ったように告げてきたフェンリルに、私は自分の意思表示をしっかりしておく。
「で、でも……」
「……わちゃしにょゆうこと、ちちぇにゃい? (私のいうこと、聞けない?)」
秘技、上目遣い!
猫耳プリティー幼女のおねだり攻撃は、きっと効果抜群だと思ってしかけてみれば、フェンリルはブンブンブンッと首を振る。
「聞ける! 聞けるからっ!」
「にゃら、ともだちにゃにょー(なら、友達なのー)」
友達ならば、この見事な毛並みを、モフモフして、モフモフして、モッフンモッフンすることも可能かもしれない。そう目を輝かせていると、フェンリルは私の前で伏せる。
「名前、ほしい」
「みゅ? にゃまえ、にゃいにょ? (みゅ? 名前、ないの?)」
「ない」
私としては、フェンリル自身の名前を聞き出そうと思っていたのだが、どうやら名前がそもそもないらしい。後に聞いた話では、異質な子供が生まれたことで、両親からは遠ざけられ、名前などもらえなかったという話だ。その話に、『何だそれっ!』と憤慨して、慌てたフェンリルにモフモフをスリスリされて落ち着くことになるのだが……とにかく、今は名前がないとのことだ。何か、考えなければならない。
「みゅう……みゅうぅぅうっ」
オッドアイのフェンリル。使う魔法は、氷と炎。どこから名前を捻り出したものかとウンウン悩む私は、じーっとフェンリルの瞳を見続ける。
(右目はルビー、左目はサファイアみたい……って、あれ? そういえば、ルビーとサファイアって同じ鉱物だったような? 名前は……えーっとコランダム? 和名は鋼玉だったはず……よしっ)
「あにゃたにょにゃまえ、『こう』! (あなたの名前、『鋼』)」
「コウ、コウ、か……」
噛み締めるように何度も『コウ』と繰り返すフェンリルは、嬉しいのか、尻尾がブンブンと揺れている。そして、私の名前も聞いてきたため、『ユミリア』だと教えておく。
「もう、あばれりゅにょ、めっ、よ? (もう、暴れるの、メッ、よ?)」
「ずっと、ユミリアに付いていくから問題ない」
しかし、そんな鋼の発言に、私は困惑してしまう。
「みゅう……いえに、いれりゃれないにょ(みゅう……家に、入れられないの)」
「小さくなる」
「みちゅかりゅと、こまりゅにょ(見つかると、困るの)」
「隠れるのは得意」
「みゅうぅ?」
それなら、いけるだろうかと思ってしまった私は、きっと悪くはない。万が一見つかったとしても、小さくなってくれるならフェンリルだとバレることもないはずだ。ただ……。
「しょくりょう、にゃいにょ(食料、ないの)」
多分、それが大きな問題になるはずだった。
『……フェンリルは、強い者に従う習性が強いんだ』
そんな私に答えをくれたのは、どこか遠い目をしたセイだった。
(……なるほど)
きっと、躾がキツすぎたのだろう。その自覚は、一応ある。『コツ生』で、鼻ばかり狙ってフェンリルを屈服させると、泡を吹いて倒れたフェンリルの可愛いアイコンが出てくるため、つい調子に乗ってやってしまったが、フェンリルにとっては大事だったに違いない。
「っ、下僕がダメなら、奴隷でもっ」
「めっ、ともだちがいいにょっ(メッ、友達が良いのっ)」
しばらく黙っていると、何を思ったか焦ったように告げてきたフェンリルに、私は自分の意思表示をしっかりしておく。
「で、でも……」
「……わちゃしにょゆうこと、ちちぇにゃい? (私のいうこと、聞けない?)」
秘技、上目遣い!
猫耳プリティー幼女のおねだり攻撃は、きっと効果抜群だと思ってしかけてみれば、フェンリルはブンブンブンッと首を振る。
「聞ける! 聞けるからっ!」
「にゃら、ともだちにゃにょー(なら、友達なのー)」
友達ならば、この見事な毛並みを、モフモフして、モフモフして、モッフンモッフンすることも可能かもしれない。そう目を輝かせていると、フェンリルは私の前で伏せる。
「名前、ほしい」
「みゅ? にゃまえ、にゃいにょ? (みゅ? 名前、ないの?)」
「ない」
私としては、フェンリル自身の名前を聞き出そうと思っていたのだが、どうやら名前がそもそもないらしい。後に聞いた話では、異質な子供が生まれたことで、両親からは遠ざけられ、名前などもらえなかったという話だ。その話に、『何だそれっ!』と憤慨して、慌てたフェンリルにモフモフをスリスリされて落ち着くことになるのだが……とにかく、今は名前がないとのことだ。何か、考えなければならない。
「みゅう……みゅうぅぅうっ」
オッドアイのフェンリル。使う魔法は、氷と炎。どこから名前を捻り出したものかとウンウン悩む私は、じーっとフェンリルの瞳を見続ける。
(右目はルビー、左目はサファイアみたい……って、あれ? そういえば、ルビーとサファイアって同じ鉱物だったような? 名前は……えーっとコランダム? 和名は鋼玉だったはず……よしっ)
「あにゃたにょにゃまえ、『こう』! (あなたの名前、『鋼』)」
「コウ、コウ、か……」
噛み締めるように何度も『コウ』と繰り返すフェンリルは、嬉しいのか、尻尾がブンブンと揺れている。そして、私の名前も聞いてきたため、『ユミリア』だと教えておく。
「もう、あばれりゅにょ、めっ、よ? (もう、暴れるの、メッ、よ?)」
「ずっと、ユミリアに付いていくから問題ない」
しかし、そんな鋼の発言に、私は困惑してしまう。
「みゅう……いえに、いれりゃれないにょ(みゅう……家に、入れられないの)」
「小さくなる」
「みちゅかりゅと、こまりゅにょ(見つかると、困るの)」
「隠れるのは得意」
「みゅうぅ?」
それなら、いけるだろうかと思ってしまった私は、きっと悪くはない。万が一見つかったとしても、小さくなってくれるならフェンリルだとバレることもないはずだ。ただ……。
「しょくりょう、にゃいにょ(食料、ないの)」
多分、それが大きな問題になるはずだった。
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