悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第十一話 妖精の森

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(そっざい~、そっざい~)


 木漏れ日が差し込む、明るい森の中を、私はルンルン気分でぴょんぴょこ歩いては立ち止まり、を繰り返す。何せ、ここは素材の宝庫。ほしい素材はたくさんある。


「かりゃにょましぇちも、いっぱい~(空の魔石も、いっぱい~)」


 そして、求めていた素材のうちの一つ、空の魔石も大量にゲットして、ただいまホクホク顔だ。


(これで、色々な魔法も使えるようになるねっ)


 実は、この世界、魔法を直接発動させることはできない。発動させるためには、魔法の籠った魔石に魔力を通すしかないのだ。そして、魔石は大抵の動物の体内に入っており、彼らが死ねば、遺体とともに魔石が残るという仕組みだ。もちろん、人間の体内にも魔石は存在する。
 そして、空の魔石には、自分の魔石と同じ力を移せる、というのが普通なのだが、自分の魔石に他人の魔力を移してもらうことで、その幅は広がる。もちろん、私は全ての魔法を扱えるというわけだ。


「みゅっみゅみゅーっ、みゅっみゅみゅーっ」


 どんどん順調に素材が集まっていく。これだけのものがあれば、そこそこ高ランクの場所にだって行けるはずだ。……睡魔という敵さえ居なければ。


「って、だめにゃにょっ! はやく、いじゅみにいかにゃちゃっ(って、ダメなのっ! 早く、泉に行かなきゃっ)」


 楽しい楽しい素材集めを満喫していた私は、紫に黄色の斑点がついたキノコを採取したところで我に返る。帰りは転移で戻れば良いとはいえ、早く目的地に行かなければ日が暮れてしまう。


「いっじゅみーっ、いっじゅみーっ(いっずみーっ、いっずみー)」


 お尻をフリフリ、耳をぴょこぴょこさせながら、私は一直線に歩いて……。


「……ちょおいにょ(……遠いの)」


 幼児の進み具合というのは、やはり、かなり遅い。今回は、家の比ではないくらいの距離があるため当たり前なのだが、早くも挫けそうになる。


『クスクス、ちっちゃな子が居るわ』

『ほんとだぁ。何しに来たのかな?』

『迷子? 送る?』


 と、その時、誰も居ないはずの森で、声が聞こえた。


「みゅ!? だれ?」


 辺りを見渡すものの、誰の姿も見つけられない。しっかりと警戒して、耳を立てていると、ふいに、視界の端でキラリとしたものが映る。


「みゅうっ」


 それは、一直線に私の方まできて、目の前で止まる。私は、驚いてポテンと尻餅をつく。


『初めましてっ、愛し子ちゃんっ』

『僕達、妖精!』

『ようこそ、僕らの森へっ』


 よく見れば、三つのキラキラした者達。身長十センチくらいの彼ら、彼女らは、ほのかに光を纏って、可愛らしい花のような衣装に身を包んでいた。


「よーちぇー? (妖精?)」


 『コツ生』で見られる妖精は一人だけだったため、その唐突な出会いに、私は困惑する。


『愛し子ちゃん、迷子?』

『行きたいところに送るよ?』

『僕達、力持ち!』


 ただ、この世界に生を受けて、初めて、メリー以外から受ける好意的な言葉に、困惑はすぐに薄れ、頬を緩ませるのだった。
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