黒板の怪談

星宮歌

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第二章 答えを求めて

第三十話 誘(いざな)うもの

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 ビクリと反応をした五人。しかし、落ちた本は、特に手がかりになるような本ではなかった。ただ……その本を見た杉下にとっては違ったらしい。


「これ……寧子ちゃんが好きな本……」


 それは、とても王道なシンデレラストーリーの物語。それなりに有名なシリーズのその本を、杉下はギュッと抱きしめるように握る。


「杉下。今から、情報交換をしたい。問題ないか?」

「……えぇ、大丈夫。今までのことをお互いに話しましょう」


 力強い目で芦田に答えた杉下。
 そうして、彼らはお互いが経験した内容の共有を始めた。


「うーん、何というか、随分とお互い、大変な目にあってきたねー」

「か、鹿野田君、け、怪我は、大丈夫?」

「問題ないよー。ちょっと歩きづらいけど、走らなきゃならないとかじゃなきゃいけるー。中田君も、大変だったねー」

「う、ううん、僕は、怪我もないし、色々とまとめてただけだから」


 そんな風にお互いをねぎらう鹿野田と中田。こうして集まったメンバーは、基本的に仲は良い。


「私がこんなことに誘ったばっかりに、ごめんね」

「優愛ちゃんも予想はできなかったことでしょ? なら、仕方ないと思うわ。それよりも、ちょっと確認したいことがあるんだけど……」


 そう言いながら、杉下は中田へと視線を向ける。


「す、杉下さん?」

「うん、あの疑問をぶつけてみようと思って」


 それは、芦田達と分断されてから間もなく、まだ清美が居る頃に抱いた疑問だ。


「優愛ちゃん、優愛ちゃんは、誰に誘われて肝試しに参加したの?」


 そう、望月は、この肝試しに様々な人を誘った張本人。ただ、望月自身も、誰かに誘われたという情報があったため、それを杉下は確認しようとしていた。


「私? 私は……あ、あれ? そう、だよね。私も、誘われたから来たんだけど……誰に、誘われたんだっけ……?」


 しかし、望月の答えは明らかな戸惑いとともに返ってきた。


「あれ? なんで? なんで、思い出せないの……?」


 不安そうに瞳を揺らす望月は、嘘をついているようには見えない。


「落ち着け、望月。分かることだけでも整理してみろ」

「そうそうー、深呼吸、深呼吸ー」

「う、うん、そうだよね。すーはー……えっと、日にちは覚えてないんだけど、放課後に誘われたことは覚えてるの。それで、その時、このメンバーを誘うようにも言われてた気がしてて……」


 望月の話では、相手はとても親しい友人のような気がするのに、男か女かも分からないとのこと。それどころか、大人か子供かすらも怪しいらしい。


「そ、それって……」

「誰か、いえ、ナニカに、仕組まれていた、ということ?」


 そんな杉下の予想に、辺りはしん、と静まり返った。


「ぼ、僕達、一応、この現象について予測もしてるんだ。さっき話してた地下室。そこで見たものが、その証拠だと思ってる」


 そんな中田の言葉に、全員の視線が集中した。


「あそこには、たくさんの骸骨があったんだ」


 ただでさえ、洒落にならない現状でもたらされた恐ろしい情報。
 誰もが、そこから言葉を発することができなかった。
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