黒板の怪談

星宮歌

文字の大きさ
上 下
17 / 39
第一章 肝試しの夜

第十六話 黒板(芦田・鹿野田・望月グループ)

しおりを挟む
 ふと視界に入った黒板。それは、本来なら注視すべきものなどないはずだった。しかし……。


「清美!?」


 そんな芦田の声に、座り込んでいた鹿野田と望月も反応する。


「えっ!?」

「清美ちゃん!? どこっ!?」


 キョロキョロと周囲を見渡した二人はやがて、芦田が何を見ているのかに気づく。


「キヨ、ちゃん……?」

「何……あれ……?」


 芦田と同じく黒板へと視線を向けた二人は、ようやくその異常に気づく。
 それは…………黒板に埋め込まれた清美の姿・・・・・・・・・・・・・だった。


「ど、どうし……い、生きてる、の……?」


 体勢としては、膝立ちなのだろう。清美の背面の膝から下は黒板に埋め込まれているが、それ以外は表に出ている。
 清美自身は、しっかりと目を閉じていて、眠っているのか、それとも死んでしまっているのか……それすらも分からない。
 ただ……顔色は、とても悪く見えた。


「っ……助けるぞ!」


 少しの間、呆然としていた芦田だったが、すぐに現状を把握して、何か清美を救う手段がないかと周辺へ視線を巡らせ、教室の椅子に目を留める。


「手伝え、鹿野田っ」

「わ、分かった!」


 椅子を手に取って掲げる芦田の姿に、鹿野田も何をするつもりなのかを理解して、同じように別の椅子を手に取る。


「わ、私は!?」

「優愛ちゃんはー、しっかり照らして!」

「っ、分かった!!」


 清美から少し離れたサイド。そこに、芦田と鹿野田がそれぞれ椅子を構えて……。


「いくぞっ!」

「うんっ!」


 大きく振り下ろされた椅子。しかし……。


「ぐっ」

「うわっ!」

「っ、二人ともっ、大丈夫!?」


 黒板に椅子が当たる直前、その椅子は、見えない何かに弾き飛ばされる。そして、反動が大きかったのか、芦田は後方へよろめくだけで済んだものの、鹿野田はそのままひっくり返る。


「俺は大丈夫だっ。鹿野田は!?」

「っ……結構、手が痺れたけどー、何とか?」


 そう言いながらも、やはりどこか怪我をしたのか動かない鹿野田。しかし、次の瞬間。


「っ、危ない!」


 芦田に向かって声を張り上げた鹿野田。その視線の先には……。

 黒板から、無数に伸びる白い手があった。


「うおっ」

「っ、芦田君っ、鹿野田君! 黒板から離れて!」


 と、そこで、望月は大きく振りかぶって……。


「これでも、くらえーっ!!」


 恐らくは、筆箱の中身と思われるもの。鉛筆、シャーペン、ラインマーカー、三角定規、コンパス、カッターやハサミなどなど、多少は凶器にもなりそうな物も含めて、大量の白い手に降り注ぐ。


「逃げるよ!」

「っ、待て! 清美がっ」

「そんなこと言ってる場合じゃないから! 鹿野田君もっ!」

「うん、そうだねー」


 芦田と鹿野田の手を取って、とにかく黒板から離れようとする望月。
 芦田はそれでも、清美が気になるようだったが、今はそれどころではないと望月も全力で引っ張る。
 鹿野田は、少し声に元気がないものの、それでも望月の手に逆らうことなく進む。そして……。


「きゃあっ!」

「うおっ」

「わっ」


 いつの間にか空いていた穴に落ちて、三者三様の悲鳴を上げる羽目になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

秘密

阿波野治
児童書・童話
住友みのりは憂うつそうな顔をしている。心配した友人が事情を訊き出そうとすると、みのりはなぜか声を荒らげた。後ろの席からそれを見ていた香坂遥斗は、みのりが抱えている謎を知りたいと思い、彼女に近づこうとする。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

処理中です...