黒板の怪談

星宮歌

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第一章 肝試しの夜

第六話 七人目?(清美・杉下・中田グループ)

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 一方その頃、清美、杉下、中田の三人はというと、どうにも不可思議ふかしぎな状況に陥っていた。


「はっ、はぁ……はっ……どう、してぇ……」


 階段の途中で、泣きそうな声を上げて座り込む清美。真っ暗な階段は、杉下が持つ懐中電灯で照らされているものの、先が見えない。


「はぁっ、はぁっ……寧子ちゃん……」

「はっ……はっ……す、少し、休もう。ふぅっ、えっと、清美さんを、追いかけてたモノも、今は、居ないんでしょう?」


 清美の弱りきった姿に、立ち尽くす杉下と辺りをキョロキョロとしながらも休憩きゅうけいを提案する中田。

 あの時、清美は確かに、居るはずのない七人目を見たらしい。そして、それは恐らく、今は別行動をしている鹿野田も気づいたことだった。ただし……。


「で、も……アレが、こっちに来る姿は、誰も、見えてなかったって……」


 清美だけが、気づいていた。居るはずのない七人目が、どこか、今日集まった六人に似たところを持つ何者かが、ニタリと笑って自分に迫ってくるのを……。


「そ、それでも、もう、体力の限界だと思うから、その……すぐに動けるように、しておいた方が良い、かなぁって……」

「私も、中田君の意見に賛成だよ。……寧子ちゃん、もう歩けないでしょう?」


 実際、清美は限界らしく、立とうとしても足が震えて立てない状態だった。それを、中田も杉下も察していて、心配そうな表情で清美を見ている。
 ただし、そんな二人に関しても、限界は近かった。

 彼らが居るこの場所は、二階と三階を繋ぐ階段。あの時、悲鳴を上げて逃げ出した清美と、それを追った杉下と中田の三人は、ずっと、ずっと、この階段を駆け上っていたのだ。
 そう、ずっと、ずっと……とっくに三階についているはずなのに、階段は果てしなく続いていた。

 清美の隣に杉下、そして、その更に隣に中田が腰掛ける。
 下からナニカが来ることを警戒けいかいして懐中電灯の明かりを向けるものの、どんなに照らしても、階段しか見えない。


「大丈夫。寧子ちゃんは、私が守るから」

「う、うぅ……七海ちゃん……」

「ぼ、僕も、その、頼りないかもしれないけど、守るからっ」

「あり、がとう……」


 異様な状況に陥ってしまった恐怖に、とうとう泣き出してしまった清美へ、杉下も中田もなぐさめの言葉を口にする。しかし、そうは言っても杉下や中田だって同じ小学生だ。こんな訳の分からない状況が怖くないわけではない。


「肝試しなんて、寧子ちゃんの言う通り、止めておけば良かったね」


 そう呟く杉下は、いつになく元気がない。


「そ、そういえば、肝試しの発案って誰だったっけ? やっぱり、望月さん?」


 そんな雰囲気を感じてか、中田は必死に話題を振りしぼる。しかし……。


「え? いや、違ったはずだけど……確か、優愛ちゃんも誰かに誘われたみたいなことを言ってたと思うよ」

「そう、なの? でも、鹿野田君達は、優愛ちゃんに誘われたって……」


 杉下の言葉に、清美が疑問を投げ掛ける。しかし、その言葉が真実だとすると、少しばかりおかしい。


「……望月さんは、肝試しに誘われたんだよね? なら、その誘った人って、このメンバーに居るはずだけど、どうして、六人だけだったんだろう……?」


 そう、『誘われた』ということは、その誰かも肝試しに来るはずなのだ。しかし、実際のところ、その望月を誘った人物が誰か分からない。少なくとも、この三人は全く見当もつかないようだった。


「急に、用事が入った、とか……」


 自信が無さそうにそう言った清美。しかし、それがあり得ないだろうことは、望月の性格を知っていれば誰もが確信する。


「もしそうなら、優愛ちゃんが何か文句を言ってたはずじゃない? 『なんとかさんも来るはずだったのに』みたいな」

「そう、だよね。望月さんなら、参加人数の伝達の段階で皆に文句を言ってそ、う…………あれ? そう、いえば……参加人数、七人じゃあなかった……?」


 あり得ないはずの七人目の存在。それに気づいて、誰もが言葉を失ったところで……。


 コツン………………………………………。


 何かの音が、響いた。
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