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第一章 肝試しの夜
第四話 捜索(芦田・鹿野田・望月グループ)
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教室のの中は、暗く、ガランとしていた。机と椅子は、教室の奥に纏められ、随分と広々とした印象になっている。
「夜の教室って、不気味だねー」
「うん……でも、誰も居ないね」
一応、机の隙間に隠れていないだろうかとか、定番の掃除用具入れの中だとかを見てみても、誰も居ない。
「おい、これ」
と、そこで、芦田が何かを見つけたらしく声を上げる。
望月と鹿野田が振り向けば、芦田は黒板を見ていた。
「何か見つけたの?」
「どれどれー? えーっと……『開かずの教室で待ってる』? ……え? ほんとに?」
誰が書いたのかは分からないが、確かにそう、黒板の隅に小さく書かれていた。
「なるほど、肝試し続行ってことだね!」
「違うだろ。俺達は、三人が上がった直後にここに来てるんだぞ? 誰が、こんな風に書けるってんだ」
「確かにねー。……誰かが、僕達を誘導してる、とか?」
能天気な声を上げる望月に対して、男子二人は冷静だ。
「それに、ちょーっと気になってたんだけど……先生、来ないねー」
清美が悲鳴を上げてから、もうそれなりに時間は経っている。いくらなんでも、これだけの時間、全く誰も来ないというのはあり得ないことだった。
「……うーん、トイレに籠もってて、出るに出られない説!」
「さすがにねぇから」
「じゃあじゃあ、悲鳴が怖くて隠れちゃった!」
「そこまで頼りない先生って居たかなー?」
好き放題に言いながらも、望月も含め、全員の表情は良いとは言えない。
皆、理解していた。今の状況が異常なのだと。
「選択肢は、二つに一つだ。開かずの教室に行くか、助けを求めに先生を探すか」
芦田のその言葉に、望月も鹿野田も黙り込む。
「まぁ、ここまで騒いだんだ。先生にはバレていて、自分達で謝りに来るまで待っているって線もある」
笑みを浮かべてそう言う芦田。それにつられて、望月も鹿野田も少しだけ表情を明るくする。
「そうだよね……。でも、私達が始めたから、こんなことになったんだし、私は、開かずの教室に行くべきだと思う」
「先生のところに行くなら、全員で行くべきだよねー」
「なら、残りの教室も確認して、最後に開かずの教室に行くぞ」
「「おーっ!」」
それからの三人は、迅速に行動した。開かずの教室以外の四つの教室を全て確認して、そのどれもに鍵がかかっていないという異常から必死に目を逸らして……とうとう、残るは開かずの教室のみ、となった。
「……これ、本当に三人は、この向こうに居るのかな?」
開かずの教室と呼ばれるその場所は、あることは分かっていても、誰も行こうとはしなかった。
それもそのはずで、開かずの教室へ続く廊下には、まるでバリケードのように机が大量に敷き詰められているのだ。大人であっても、これを崩すのは大変な作業なのに、子供がそれをすることは不可能だとさえ思える。しかし……。
「んー、ここ、入れるようになってるかもー?」
そんな鹿野田の言葉に懐中電灯を向ければ、確かに、子供ならば這って入れそうな隙間があることに気づく。いや、むしろ、小柄な大人でも入れそうなほどの隙間だ。
「これなら、俺でも入れるか」
今回集まったメンバーの中で、一番体格が良いのは芦田だ。その芦田が入れそうなのであれば問題ないだろう。
「だが、こうして入り口があるなら、やっぱり三人は向こうに居る、ということか?」
「かもねー。まっ、行ってみないことにはどうにもならないし、行こっか!」
そう言って、先に進もうとした鹿野田だったが、すぐに芦田から止められる。
「待て。先に俺が行って、安全かどうかを確認する。その後に二人が続いて来てくれ」
「それは別に良いけど……大丈夫?」
「問題ない。俺は鍛えてるから、多少の危険ならどうにかできるだろうしな」
望月の心配も、芦田はそう言ってあしらう。
「んー、なら、懐中電灯は持ってた方が良いよ。それとも、持ってきてるー?」
「そういえば、持っていたな。ちゃんと使って確認する。声を掛けたら、後に続いて来てくれ」
ポケットに小さめの懐中電灯を入れていたらしい芦田は、それを取り出し、しっかりと点灯することを確認した後、ゆっくりと開かずの教室へと続く道を這って行った。
暗くて暗くて、真っ暗な道を……。
「夜の教室って、不気味だねー」
「うん……でも、誰も居ないね」
一応、机の隙間に隠れていないだろうかとか、定番の掃除用具入れの中だとかを見てみても、誰も居ない。
「おい、これ」
と、そこで、芦田が何かを見つけたらしく声を上げる。
望月と鹿野田が振り向けば、芦田は黒板を見ていた。
「何か見つけたの?」
「どれどれー? えーっと……『開かずの教室で待ってる』? ……え? ほんとに?」
誰が書いたのかは分からないが、確かにそう、黒板の隅に小さく書かれていた。
「なるほど、肝試し続行ってことだね!」
「違うだろ。俺達は、三人が上がった直後にここに来てるんだぞ? 誰が、こんな風に書けるってんだ」
「確かにねー。……誰かが、僕達を誘導してる、とか?」
能天気な声を上げる望月に対して、男子二人は冷静だ。
「それに、ちょーっと気になってたんだけど……先生、来ないねー」
清美が悲鳴を上げてから、もうそれなりに時間は経っている。いくらなんでも、これだけの時間、全く誰も来ないというのはあり得ないことだった。
「……うーん、トイレに籠もってて、出るに出られない説!」
「さすがにねぇから」
「じゃあじゃあ、悲鳴が怖くて隠れちゃった!」
「そこまで頼りない先生って居たかなー?」
好き放題に言いながらも、望月も含め、全員の表情は良いとは言えない。
皆、理解していた。今の状況が異常なのだと。
「選択肢は、二つに一つだ。開かずの教室に行くか、助けを求めに先生を探すか」
芦田のその言葉に、望月も鹿野田も黙り込む。
「まぁ、ここまで騒いだんだ。先生にはバレていて、自分達で謝りに来るまで待っているって線もある」
笑みを浮かべてそう言う芦田。それにつられて、望月も鹿野田も少しだけ表情を明るくする。
「そうだよね……。でも、私達が始めたから、こんなことになったんだし、私は、開かずの教室に行くべきだと思う」
「先生のところに行くなら、全員で行くべきだよねー」
「なら、残りの教室も確認して、最後に開かずの教室に行くぞ」
「「おーっ!」」
それからの三人は、迅速に行動した。開かずの教室以外の四つの教室を全て確認して、そのどれもに鍵がかかっていないという異常から必死に目を逸らして……とうとう、残るは開かずの教室のみ、となった。
「……これ、本当に三人は、この向こうに居るのかな?」
開かずの教室と呼ばれるその場所は、あることは分かっていても、誰も行こうとはしなかった。
それもそのはずで、開かずの教室へ続く廊下には、まるでバリケードのように机が大量に敷き詰められているのだ。大人であっても、これを崩すのは大変な作業なのに、子供がそれをすることは不可能だとさえ思える。しかし……。
「んー、ここ、入れるようになってるかもー?」
そんな鹿野田の言葉に懐中電灯を向ければ、確かに、子供ならば這って入れそうな隙間があることに気づく。いや、むしろ、小柄な大人でも入れそうなほどの隙間だ。
「これなら、俺でも入れるか」
今回集まったメンバーの中で、一番体格が良いのは芦田だ。その芦田が入れそうなのであれば問題ないだろう。
「だが、こうして入り口があるなら、やっぱり三人は向こうに居る、ということか?」
「かもねー。まっ、行ってみないことにはどうにもならないし、行こっか!」
そう言って、先に進もうとした鹿野田だったが、すぐに芦田から止められる。
「待て。先に俺が行って、安全かどうかを確認する。その後に二人が続いて来てくれ」
「それは別に良いけど……大丈夫?」
「問題ない。俺は鍛えてるから、多少の危険ならどうにかできるだろうしな」
望月の心配も、芦田はそう言ってあしらう。
「んー、なら、懐中電灯は持ってた方が良いよ。それとも、持ってきてるー?」
「そういえば、持っていたな。ちゃんと使って確認する。声を掛けたら、後に続いて来てくれ」
ポケットに小さめの懐中電灯を入れていたらしい芦田は、それを取り出し、しっかりと点灯することを確認した後、ゆっくりと開かずの教室へと続く道を這って行った。
暗くて暗くて、真っ暗な道を……。
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