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第三章 三団子、隣国へ
第六話 砦の中の三団子5
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ノックの音、ということは、外に居るのは魔物などではないということだ。
そう判断したらしい三団子だったが、一応誰何するだけの頭はあったらしい。
「えっと、どなたですか?」
青団子はほうきを構えながらそう尋ねる。
「ロドフ君を案内しました。アルムスと申します。それと、ロドフ君自身もこちらにおられます」
「えっと、実さんかな? 鍵をかけてるとのことでしたので、ノックをしたんですが……」
その言葉に、三団子達はパッと表情を明るくする。
「「「今、開けるね!!」」」
バリケードのためにと置いていた机などをエッホエッホとヒーヒーフーフー息切れを起こしながら移動させ、ようやく鍵を開けた三団子。
「失礼します。……えっと……」
「……大丈夫ですか?」
扉を開けた直後、騎士は言葉を失い、ロドフは純粋に心配の言葉をかける。
それもそのはず。最近は歩くことが多くなったとはいえ、三団子の体型はどう考えてもこの世界に召喚されてから変わっているようには見えない。つまりは、圧倒的な運・動・不・足、がそのまま表れている状態なのだ。
そんな三団子が、重い家具の移動を必死にしたらどうなるかといえば、当然、汗だくの汚物と化すに決まっているではないか。しかも、このまま放っておけば悪臭が強くなること間違いなしな状態だ。
「だい、じょーぶ、だよぉ……」
「ちょっと、重い机、だったかな……」
「うん、ロドフ君、こそ、大丈夫……?」
「ワフゥ」
子狼が呆れたような鳴き声を出しているものの、三団子はそれに反応する気力もなく、床に横たわって床面積を大幅に減少させるという嫌がらせじみた行いを続行中だ。
「俺は大丈夫です。アルムスさんが守ってくれましたし、俺自身もそれなりに戦えたので怪我もなく、問題ありません」
そう受け答えするロドフ。そして、そんなロドフに、アルムスと名乗った騎士は『タオルをお持ちしますね』と気を利かせてか、三団子の醜態に耐えかねてかその場から退散する。
「聞いているとは思いますが、この砦に魔物の大群が襲いかかってきまして、この部屋からそれなりに離れていたため、帰ってくるのに時間がかかりました」
ヘルは部屋の隅の方から、黄団子が出していた水のボトルを持ってきて、三団子達の側に置いていき、ロドフにもそれを一本渡してくる。
「ありがとう、ヘル君」
「「「ありが、とうー」」」
ノロノロと起き上がって水をガブガブ飲む三団子は、それでひと心地ついたのか、大きく息を吐く。
「詳しい被害状況などは分かりませんが、こんなことは初めてのことだったようで、かなりの数の怪我人が出ているそうです」
ロドフも水を少し口にして、しっかりと説明をしていく。そして……。
「魔物が来た方向は、カドック王国の方からです。もしかしたら、あの国で何か起こったのかもしれません」
三団子が召喚されたカドック王国。そこで何が起こっているのか、今の三団子達に知る術はないものの、それでもきな臭い何かを感じ取らずにはいられない情報だった。
そう判断したらしい三団子だったが、一応誰何するだけの頭はあったらしい。
「えっと、どなたですか?」
青団子はほうきを構えながらそう尋ねる。
「ロドフ君を案内しました。アルムスと申します。それと、ロドフ君自身もこちらにおられます」
「えっと、実さんかな? 鍵をかけてるとのことでしたので、ノックをしたんですが……」
その言葉に、三団子達はパッと表情を明るくする。
「「「今、開けるね!!」」」
バリケードのためにと置いていた机などをエッホエッホとヒーヒーフーフー息切れを起こしながら移動させ、ようやく鍵を開けた三団子。
「失礼します。……えっと……」
「……大丈夫ですか?」
扉を開けた直後、騎士は言葉を失い、ロドフは純粋に心配の言葉をかける。
それもそのはず。最近は歩くことが多くなったとはいえ、三団子の体型はどう考えてもこの世界に召喚されてから変わっているようには見えない。つまりは、圧倒的な運・動・不・足、がそのまま表れている状態なのだ。
そんな三団子が、重い家具の移動を必死にしたらどうなるかといえば、当然、汗だくの汚物と化すに決まっているではないか。しかも、このまま放っておけば悪臭が強くなること間違いなしな状態だ。
「だい、じょーぶ、だよぉ……」
「ちょっと、重い机、だったかな……」
「うん、ロドフ君、こそ、大丈夫……?」
「ワフゥ」
子狼が呆れたような鳴き声を出しているものの、三団子はそれに反応する気力もなく、床に横たわって床面積を大幅に減少させるという嫌がらせじみた行いを続行中だ。
「俺は大丈夫です。アルムスさんが守ってくれましたし、俺自身もそれなりに戦えたので怪我もなく、問題ありません」
そう受け答えするロドフ。そして、そんなロドフに、アルムスと名乗った騎士は『タオルをお持ちしますね』と気を利かせてか、三団子の醜態に耐えかねてかその場から退散する。
「聞いているとは思いますが、この砦に魔物の大群が襲いかかってきまして、この部屋からそれなりに離れていたため、帰ってくるのに時間がかかりました」
ヘルは部屋の隅の方から、黄団子が出していた水のボトルを持ってきて、三団子達の側に置いていき、ロドフにもそれを一本渡してくる。
「ありがとう、ヘル君」
「「「ありが、とうー」」」
ノロノロと起き上がって水をガブガブ飲む三団子は、それでひと心地ついたのか、大きく息を吐く。
「詳しい被害状況などは分かりませんが、こんなことは初めてのことだったようで、かなりの数の怪我人が出ているそうです」
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「魔物が来た方向は、カドック王国の方からです。もしかしたら、あの国で何か起こったのかもしれません」
三団子が召喚されたカドック王国。そこで何が起こっているのか、今の三団子達に知る術はないものの、それでもきな臭い何かを感じ取らずにはいられない情報だった。
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