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第二章 三団子、旅をする

第四十四話 お別れの町と三団子

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 商業ギルドでの話が終わり、三団子達は急いでこのマルマの町を発つこととなった。もしも追っ手が来た場合、三団子がこの町に留まっているのは不味いという判断である。
 三団子達の目標とする行き先は、ヘルの故郷だと思われるハプナ帝国だ。しかし、そこに辿り着くにはまだまだ先が長いため、ひとまずは国境を越え、南の隣国を目指すことが当面の目標であると言えよう。

 大量の荷物を抱えて、その体型に似合わず旅の準備を素早く整える三団子。そして、それぞれの荷物をチェックするロドフに、のんびりと寝そべる子狼。後は……。


「あ、あの、よろしく、おねがいします」


 拾った時から比べると、随分元気になったヘルは、そう言って頭を下げる。
 ヘルには、すでに三団子の事情を話しており、納得もしてもらっている。その上で、ヘルも『心の準備が出来たら話したいことがある』と言っていたものの、それがいつになるのかはまだ不明だった。


「うん、こちらこそ、よろしくぅ」

「疲れたらすぐに声をかけてね!」

「それ以外にも、何かあれば何でも言って。僕達に対処できることなら何でもするから」

「子どもは、気負わずに俺達に守られていればいいですよ」


 青団子、黄団子、赤団子に加え、ロドフもヘルの言葉に返事をする。


「ありがとうございます! かえったら、僕、きっと、おんがえしします!」


 健気にもそう宣言するヘルに、三団子はタプタプの頬肉で分かりにくいが、一応微笑みを浮かべる。対してロドフは、黒いフードつきの外套を取り出すと、バサリとヘルに向けて放る。


「ヘル君のその姿は目立ちます。それを着ていれば、ある程度は紛れるでしょう」


 その外套は、ヘルには少しばかり大きいサイズではあったものの、その目立つ容姿を隠すという目的はしっかりと達成していた。それに、これからヘルは三団子とともに歩くのだ。どう考えても、一番に目立つのは三団子であり、その近くに黒い外套を纏った子どもが居たとしても気にする者は居ないだろう。


「ありがとうございます!」


 そうして、三団子達は荷物のチェックが終わると、宿の精算を終え、あのご老人へ別れの挨拶を告げ、マルマの町を出る。
 マルマの町の門番は、三団子が最初に来た時と変わらず、あの二人の男性ではあったが、無事に身分証明を手に入れたことやしばらくはこの町に帰ることができないことを告げれば、喜んだり寂しがったりと随分表情豊かな様子を見せてくれる。


「まぁ、このご時世だ。気をつけて行けよ」

「また来てくれる時は、もっとまともな格好をして出迎えるよ」


 どこからどう見ても盗賊にしか見えないマルマの門番二人組。しかし、そんな彼らからの温かい言葉を受けて、三団子はその涙腺を緩める。


「うん、うん、気をつけるぅ」

「門番さん達も、気をつけてっ」

「僕達、絶対、また来るから!」


 きっと、まだまだ困難は続くであろう三団子達の旅。贅肉でブヨブヨな腕をブルンブルン振りながらマルマの町を後にする三団子は、それから一週間後、ようやく国境を越えることとなった。
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