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第二章 三団子、旅をする
第三十四話 お披露目
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そういうわけで、三団子達はヘルとともに旅をすることになったのだが、どうにもヘルは気が進まないらしい。
それでも、時間はまだある。商業ギルドからの連絡はまだ来ていないため、三団子はもうしばらくはマルマの町に滞在することになりそうだった。
「それじゃあ、一段落したところで、お披露目タイム!」
暫定的であっても、ひとまずの決着が着いたのであればとばかりに、何やら黄団子が鼻息荒く宣言する。
「「お披露目?」」
「何かありましたっけ?」
「キャン?」
ロドフや子狼のみならず、次男の青団子も末っ子赤団子も首を傾げる。
「何言ってるの! 僕達の服だよっ! 前に頼んだじゃん!」
そう言われれば、確かにロドフが布を購入し、黄団子が裁縫道具を借りることで服を作るという話をしていたということを全員が思い出したらしく、『あぁっ!』と納得の声を上げる。
今まで、青団子、黄団子、赤団子と呼び分けをしていたのだが、もしかしたら、とうとうその呼び方が変わってしまうのかもしれない。といっても、体型が変わるわけではないので、『何とか団子』であることに変わりはなさそうだが……。
「じゃーん! それぞれの長袖のTシャツと、こっちは丈夫な生地で作ったズボン。で、こっちは下着類!」
そう言って、黄団子は宿屋備え付けのクローゼットの中から服を取り出す。ズボンは、全て紺色のものではあるものの、見分けが付くようになのか、ポケット部分に青、黄、赤の丸い刺繍がそれぞれに施されている。そして、下着は……まぁ、見ても目に毒でしかないので、割愛だ。そして、最後に長袖のTシャツ。……そのTシャツは、見事に青、黄、赤のTシャツで、恐らく三団子はその色が自分達のカラーなのだと自覚しているのであろうことがとても良く読み取れた。
「うわぁ、いつもながらに、器用だねぇ」
「ありがとう! 剛兄ちゃん!」
青団子も赤団子も、迷わず自分の色のTシャツやズボン、下着類を受け取る。
その様子に黄団子は得意げに胸を……いや、腹を張って、ニタニタとした気持ち悪い笑みを浮かべた。
「えへへ、僕にかかれば、これくらいどうってことないよ! ただ、洗い替えの方は、今、まだ作成中だから、またできたら報告するねっ!」
「「ありがとう!」」
そんな、三団子のやりとりを見て、ロドフは呆然とする。
「すごい、服を縫えるなんて。しかも、結構丈夫そうだし……」
「ワフ……」
恐らく、ロドフは服を作れるという黄団子の言葉をそのまま信じてはいなかったのだろう。いや、作れたとしても、とりあえず縫える、程度の完成度だと思っていたに違いない。
しかし、完成したのは売り物でもおかしくないほどの出来栄えの服。着るのは三団子であるため、そのサイズは超ビッグサイズではあるものの、それでも、三団子の体にピッタリの服を上手く作れるその技術は賞賛に値するだろう。
しかも、世界を超えてきた三団子にとっては、必要なものが存在しないという現実が大きな負担だったはずなのだ。黄団子にとっても、ミシンが存在せず、型紙を写すハトロン紙が存在せずといった何もかもが無い無い尽くしの状況の中、ここまで完璧な仕事をするのは相当に大変だったはずなのだ。
それでも、黄団子はやり遂げた。そして、色が変わらないということは、今まで通りの呼び方が通用するということでもあり、本当に良い仕事をしたと言えるだろう。
「早速、着替えよう!」
さて、それでは、三団子のヌード姿など全く、欠片も需要がないと思われるので、ここはガッツリカットさせていただこう。そして、状況がよく呑み込めていないまま空気になったヘルが気の毒なので、そろそろ誰かが声をかけてくれることを祈っておこう。
それでも、時間はまだある。商業ギルドからの連絡はまだ来ていないため、三団子はもうしばらくはマルマの町に滞在することになりそうだった。
「それじゃあ、一段落したところで、お披露目タイム!」
暫定的であっても、ひとまずの決着が着いたのであればとばかりに、何やら黄団子が鼻息荒く宣言する。
「「お披露目?」」
「何かありましたっけ?」
「キャン?」
ロドフや子狼のみならず、次男の青団子も末っ子赤団子も首を傾げる。
「何言ってるの! 僕達の服だよっ! 前に頼んだじゃん!」
そう言われれば、確かにロドフが布を購入し、黄団子が裁縫道具を借りることで服を作るという話をしていたということを全員が思い出したらしく、『あぁっ!』と納得の声を上げる。
今まで、青団子、黄団子、赤団子と呼び分けをしていたのだが、もしかしたら、とうとうその呼び方が変わってしまうのかもしれない。といっても、体型が変わるわけではないので、『何とか団子』であることに変わりはなさそうだが……。
「じゃーん! それぞれの長袖のTシャツと、こっちは丈夫な生地で作ったズボン。で、こっちは下着類!」
そう言って、黄団子は宿屋備え付けのクローゼットの中から服を取り出す。ズボンは、全て紺色のものではあるものの、見分けが付くようになのか、ポケット部分に青、黄、赤の丸い刺繍がそれぞれに施されている。そして、下着は……まぁ、見ても目に毒でしかないので、割愛だ。そして、最後に長袖のTシャツ。……そのTシャツは、見事に青、黄、赤のTシャツで、恐らく三団子はその色が自分達のカラーなのだと自覚しているのであろうことがとても良く読み取れた。
「うわぁ、いつもながらに、器用だねぇ」
「ありがとう! 剛兄ちゃん!」
青団子も赤団子も、迷わず自分の色のTシャツやズボン、下着類を受け取る。
その様子に黄団子は得意げに胸を……いや、腹を張って、ニタニタとした気持ち悪い笑みを浮かべた。
「えへへ、僕にかかれば、これくらいどうってことないよ! ただ、洗い替えの方は、今、まだ作成中だから、またできたら報告するねっ!」
「「ありがとう!」」
そんな、三団子のやりとりを見て、ロドフは呆然とする。
「すごい、服を縫えるなんて。しかも、結構丈夫そうだし……」
「ワフ……」
恐らく、ロドフは服を作れるという黄団子の言葉をそのまま信じてはいなかったのだろう。いや、作れたとしても、とりあえず縫える、程度の完成度だと思っていたに違いない。
しかし、完成したのは売り物でもおかしくないほどの出来栄えの服。着るのは三団子であるため、そのサイズは超ビッグサイズではあるものの、それでも、三団子の体にピッタリの服を上手く作れるその技術は賞賛に値するだろう。
しかも、世界を超えてきた三団子にとっては、必要なものが存在しないという現実が大きな負担だったはずなのだ。黄団子にとっても、ミシンが存在せず、型紙を写すハトロン紙が存在せずといった何もかもが無い無い尽くしの状況の中、ここまで完璧な仕事をするのは相当に大変だったはずなのだ。
それでも、黄団子はやり遂げた。そして、色が変わらないということは、今まで通りの呼び方が通用するということでもあり、本当に良い仕事をしたと言えるだろう。
「早速、着替えよう!」
さて、それでは、三団子のヌード姿など全く、欠片も需要がないと思われるので、ここはガッツリカットさせていただこう。そして、状況がよく呑み込めていないまま空気になったヘルが気の毒なので、そろそろ誰かが声をかけてくれることを祈っておこう。
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