77 / 96
第二章 三団子、旅をする
第三十一話 幼い子どもと三団子2
しおりを挟む
食事を済ませると、体が休息を求めていたのか、そのまま眠ってしまった子ども。その姿に、三団子はただでさえ引き締める筋肉があるのかどうか怪しいたるんたるんな頬をにへらぁと緩める。
こんな表情を子どもに見られたら……いや、子どもではなくとも、人に見られたら、ドン引きされること間違いなしだし、よほど気が強くなければ泣き出すこと間違いなしだ。
「とりあえず、流れで助けはしましたが、これからどうしますか?」
そんな三団子の背後から、ロドフは心配そうな表情を浮かべて声をかけてくる。
当然、ロドフの心配の対象は三団子であり、子どもではない。それを理解しているのかしていないのか、三団子はロドフの方へ振り返って、贅肉でブヨブヨの腕を組んで考える仕草をする。
「うーん、特に何もしなくて良いかもぉ?」
「そうだよね。多分、僕達がこの子を助けたなんて、誰も気づいてないし」
「あの姿からこの状態になるのは、さすがに想像できないと思うよ?」
「キャン?」
確かに、三団子の言葉通り、三団子が連れてきたボロボロの子どもと、この目の前に存在する輝かんばかりの容姿の子どもが同一人物だなどとは誰も思わないだろう。
ただ、その場合、三団子は子どもを誘拐したという疑いがかかってもおかしくはないのだが、残念ながら物乞いの子どもが一人消えたというだけで動く人は、この世界には少ない。それならば、三団子の言うように何もしない、というのも悪くはない案に思えた。
子狼に関しては、きっと見た目の違いで人を判断するということをしないせいで、話の内容がよく分かっていないものと思われる。
「いえ、そちらではなく、この子どもの処遇です。さすがに、俺達で面倒を見るわけにもいかないでしょう?」
しかし、ロドフが尋ねたいことは、そちらではなかったらしい。確かに、三団子ならば子どもの面倒を見ると言ってもおかしくはない。それほどまでにお人好しな性格であることは、短い付き合いではあれど、ロドフには十分伝わっていた。
「うーん、この子次第かなぁ?」
「そうだよね。もしかしたら、誰か頼れる人に心当たりがあるかもしれないし」
「そうでなければ、頼れる先がないか探すとか……最終手段は僕達が面倒を見ることだけどね」
「ワフッ」
そう告げる三団子に、子狼はもちろん、ロドフもホッと安堵の息を漏らす。さすがに、子連れで旅をすることが困難であることも、三団子達とともにあることの危険性も、三団子は理解していたようだった。
「「「とにかく、まずはこの子から話を聞かなきゃ始まらないね!」」」
「はい、では、目覚めて、話ができるようになるまで待ちましょうか」
「キャン!」
体力回復のために眠り続ける子どもは、途中で何度か目覚めたものの、まだ活動時間は短く、話を聞けるほどには回復しなかった。だから、しっかり話せるようになったのは、それから二日後だった。
こんな表情を子どもに見られたら……いや、子どもではなくとも、人に見られたら、ドン引きされること間違いなしだし、よほど気が強くなければ泣き出すこと間違いなしだ。
「とりあえず、流れで助けはしましたが、これからどうしますか?」
そんな三団子の背後から、ロドフは心配そうな表情を浮かべて声をかけてくる。
当然、ロドフの心配の対象は三団子であり、子どもではない。それを理解しているのかしていないのか、三団子はロドフの方へ振り返って、贅肉でブヨブヨの腕を組んで考える仕草をする。
「うーん、特に何もしなくて良いかもぉ?」
「そうだよね。多分、僕達がこの子を助けたなんて、誰も気づいてないし」
「あの姿からこの状態になるのは、さすがに想像できないと思うよ?」
「キャン?」
確かに、三団子の言葉通り、三団子が連れてきたボロボロの子どもと、この目の前に存在する輝かんばかりの容姿の子どもが同一人物だなどとは誰も思わないだろう。
ただ、その場合、三団子は子どもを誘拐したという疑いがかかってもおかしくはないのだが、残念ながら物乞いの子どもが一人消えたというだけで動く人は、この世界には少ない。それならば、三団子の言うように何もしない、というのも悪くはない案に思えた。
子狼に関しては、きっと見た目の違いで人を判断するということをしないせいで、話の内容がよく分かっていないものと思われる。
「いえ、そちらではなく、この子どもの処遇です。さすがに、俺達で面倒を見るわけにもいかないでしょう?」
しかし、ロドフが尋ねたいことは、そちらではなかったらしい。確かに、三団子ならば子どもの面倒を見ると言ってもおかしくはない。それほどまでにお人好しな性格であることは、短い付き合いではあれど、ロドフには十分伝わっていた。
「うーん、この子次第かなぁ?」
「そうだよね。もしかしたら、誰か頼れる人に心当たりがあるかもしれないし」
「そうでなければ、頼れる先がないか探すとか……最終手段は僕達が面倒を見ることだけどね」
「ワフッ」
そう告げる三団子に、子狼はもちろん、ロドフもホッと安堵の息を漏らす。さすがに、子連れで旅をすることが困難であることも、三団子達とともにあることの危険性も、三団子は理解していたようだった。
「「「とにかく、まずはこの子から話を聞かなきゃ始まらないね!」」」
「はい、では、目覚めて、話ができるようになるまで待ちましょうか」
「キャン!」
体力回復のために眠り続ける子どもは、途中で何度か目覚めたものの、まだ活動時間は短く、話を聞けるほどには回復しなかった。だから、しっかり話せるようになったのは、それから二日後だった。
10
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる