ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第二章 三団子、旅をする

第二十六話 空腹の町と三団子3

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「具体的には、この種は魔力によって急速に成長するんだぁ」

「そして、この種から成長した作物の種も、同じ性質を持つよ!」

「懸念点としては、まだ試行回数が少ないから、どのくらいまで種が同じ性質を持ち続けるかが不透明ってことかな?」


 あまりにもとんでもない種の性質に、スフィンはそのままガンッと机に突っ伏す。


「ギルド長。契約の破棄は不可能ですよ?」


 そして、とどめを刺すかのようなロドフの言葉に、スフィンは『グッ』と唸る。

 実際のところ、この国では大規模な干ばつ及び飢饉が起きて、まだ復興途中なのだ。その中でも食糧不足は国全体の問題となっており、未だに復旧の兆しが見えない有り様だった。

 そこに来て、三団子のこのとんでもスキル。国の権力者に目をつけられることは確実だし、それを回避するのは並大抵のことではない。比較的大きな町の商業ギルド長とはいえ、スフィンだけが抱えるには、あまりにも大きすぎる問題だった。

 町を救えるだろう種は、恐ろしく魅力的だ。しかし、そこに含まれるリスクを考えると、安易に手を出すこともできない。


「大丈夫だよぉ、ロドフ君」

「だって、百戦錬磨の商業ギルド長なんだよ?」

「きっと、僕達には考えもつかない方法で、上手くこの種を流通させてくれるに決まってるよっ!」

「ウグゥッ」


 ……三団子よ。素直なのはきっと悪いことではないし、純粋なことも良く理解しているが、それはプレッシャーにしかならない。
 きっと、その素直な心のまま、欲望を抑えるということを考えなかった結果が、まるまるでっぷりボヨヨン体型なのだろうが、少しはその言葉の影響を考えた方が良いだろう。

 三団子の追い討ちとも思える言葉に撃沈したスフィンだが、苦しい中で配給制度を整えるだけあって、町を救いたい気持ちは人一倍だ。相当に大変なことだとは分かっていても、それでもその希望の芽を摘むことはできないのか、必死に頭を働かせる。


「あっ、そうだ! この種は、実はある場所に大量に送りつけてるんだぁ」

「そういえば、そうだったね!」

「そうそう、この国の最高権力者のところに、何の説明もなしに種だけを送りつけてる状態だから、上手く言い訳に使えるかもしれないよ?」

「はっ……?」


 ……三団子が『大量』などと言うと、何やら空恐ろしいものを感じてしまうのだが、スフィンにそれを考える余裕はない。
 元々、三団子が盗賊達に渡した種の出どころをごまかすために行ったこの措置。しかし、今、この瞬間、スフィンの頭の中では凄まじい勢いで計算が行われていた。そして……。


「分かった。今すぐというわけにはいかないが、根回しが完了した後、その種を購入させてもらえるか?」

「「「もちろん!」」」

「取引成立、ですね」


 三団子は、望む結果を得られたことに満足して、タプタプの頬を更に緩ませる。ロドフもそんな三団子の様子にホッとしたような表情を浮かべ、いつの間にか眠っていた子狼を抱える。


「しばらくはこの町の宿に滞在していますので、何かあれば、そちらに連絡をお願いします」


 そうして、宿の名前を伝えた三団子達は、そのまま宿屋への帰路につくのだった。
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