ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第二章 三団子、旅をする

第二十三話 商業ギルドと三団子4

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 末っ子赤団子の説明は、とても的確だった。
 まずは、このマルマの町の食料事情を解決したいこと、そして、その手段はあるものの、よほどの信頼がなければ明かすことができないこと、三団子に繋がる情報が漏れてはいけないこと。
 交渉、というにはあまり要領の良くないものだったかもしれない。しかし、三団子という化け物クラスの巨体による圧と、自分の町を思い遣ってくれていることへの感謝によって、スフィンは決定を下す。


「分かった。まず、情報の統制に関してだが、商人は信頼が命だ。そのため、特殊な契約方法なども存在するから、そちらを用いて、確実に情報が漏れないようにしよう」


 そうして、スフィンは机の引き出しを開けて契約書を取り出す。


「この契約書は魔法契約書と呼ばれるものだ。主に、貴族とのやり取りの際に使用するものだが、今回のように何らかの事情があって情報を漏らせないなどという場合にも使うことがある。契約の強制力は最も高く、勝手に破棄することは不可能だ」


 そう言いながら、スフィンは契約内容を別紙へ書いていく。


「まずは、このマルマの町の食料事情を解決する手段を黙秘すること、そして、その手段が貴方方からもたらされたことを黙秘すること。これらが守れなかった場合、または、これらの情報が漏れた場合、私は命を失うという契約でどうだろうか?」

「「「命!?」」」

「そのくらいが妥当ですね」

「キャン!」


 命懸けの契約を前に尻込みする三団子とは違い、ロドフはそれが当然だと受け入れる。


「……そうか、それが妥当と思えるほどの内容か。ならば、こちらも気を引き締めなければな」


 実際、スフィンは三団子の能力など知らない。もしも、命を懸けるという内容でロドフが迷うようであれば、スフィン自身も契約するかどうかの判断に迷ったことだろう。
 三団子は、そんなスフィンやロドフの様子に何か言いたげではあったものの、自分達の能力がどれほどの影響力を持つのかを考えると、否定することもできずに黙り込む。


「他に、何か盛り込みたい内容はあるか? 無ければ、このまま文章を精査して、契約に移ろうと思うが」

「……他に必要なことはないでしょうね。それで、契約をお願いします」


 ロドフは三団子をさっと眺めて、異論が無さそうなことを確認した上でその決定を告げる。


「分かった。このまま、少しだけ待っていてくれ」


 スフィンはそのまま魔法契約書に内容をしっかりと書き込み、何度か目を通した後、ロドフや三団子にも確認を促し、それぞれにサインをする。


「「「光った!?」」」

「あぁ、魔法契約書が発動したことを示すものだ。魔法契約書は、その名の通り、魔法によって成される契約だからな。それと、こっちは契約書の写しだ。大切に保管しておいてくれ」


 書いた魔法契約書は一枚だったはずだが、魔法契約書が光った直後、少し厚めだった魔法契約書が二枚に分裂し、全く同じ内容の魔法契約書が現れる。
 三団子達は、初めて見るその光景に目を丸くしながら、魔法契約書を受け取る。


「さて、それじゃあ、具体的な内容を説明してもらおうか?」


 三団子達が魔法契約書を確認し終え、それを丁寧にリュックへ収めたところを確認したスフィンは、そこでようやく本題に入った。
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