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第二章 三団子、旅をする
第十六話 ご老人と三団子3
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ご老人と三団子の話はとても弾んだ。
かつてのこの町を思い出させる温かいカラクリ。そんなものを目標にして話し合うのは、ご老人にとっても三団子にとっても楽しいものであるようだった。
「マルマの町のシンボルとかで作るのはどうかなぁ?」
「この町のシンボルか……一応、ベリーバードという赤い小鳥がシンボルじゃが、今回の目的にはちと合わんかもしれんのぉ」
「じゃあ、ミニチュア版のこの町の広場とかっ」
青団子も黄団子も、思いつく限りの意見を話す。
「ミニチュア版……そうしたら、昔、この場所にあったカラクリを再現しながら作ると良いかもねっ」
本来は何人もの職人達が協力して作った広場。それを、ミニチュア版とはいえ、たった一人の、しかも、すでに引退して久しいご老人に提案するなど、狂気の沙汰にしか思えない。しかし、そんな三団子の提案を聞いたご老人の反応は違った。
「ミニチュア版……そうか、その手があったか……!」
ご老人の目は、未だ嘗てないほどにキラキラと輝く。
「確かに、本来なら自分が担当した場所以外を再現するのは難しい。じゃが、ワシはこれでも、筆頭木工職人でな。全作業過程を把握しておったんじゃ。その時の記憶を頼りに再現することは可能じゃ!」
やる気に満ち溢れたご老人。
きっと、ご老人だけでやり遂げるにはとても大変な作業だろう。しかし、それでもご老人は止まらない。三団子も止まれない。
その後、具体的なミニチュア版の広場をどう作るのかを話し合い、大枠が決まったところでご老人はすくっと立ち上がる。
「若者達よ。ありがとう。おかげで、人生最後の大仕事ができそうじゃ!」
「ううん、おじいさんがずっと諦めなかったから、ここまで来れたんだよぉ」
「僕達、また旅に出るかもしれないけど、きっと、またこの町に来るからね!」
「体に気をつけて! あ、あと、これもどうぞ!」
赤団子が手渡したのは、日持ちのするドライフルーツ。ご老人の健康を祈っているであろうことは間違いないそれが、今後どんな効果を発揮するのかは不明だ。
初めて出会った時とは違い、溌剌とした様子で帰るご老人を見送った三団子。
そして、そんなタイミングを見計らったかのように、ロドフが情報収集を終えて帰ってきた。
かつてのこの町を思い出させる温かいカラクリ。そんなものを目標にして話し合うのは、ご老人にとっても三団子にとっても楽しいものであるようだった。
「マルマの町のシンボルとかで作るのはどうかなぁ?」
「この町のシンボルか……一応、ベリーバードという赤い小鳥がシンボルじゃが、今回の目的にはちと合わんかもしれんのぉ」
「じゃあ、ミニチュア版のこの町の広場とかっ」
青団子も黄団子も、思いつく限りの意見を話す。
「ミニチュア版……そうしたら、昔、この場所にあったカラクリを再現しながら作ると良いかもねっ」
本来は何人もの職人達が協力して作った広場。それを、ミニチュア版とはいえ、たった一人の、しかも、すでに引退して久しいご老人に提案するなど、狂気の沙汰にしか思えない。しかし、そんな三団子の提案を聞いたご老人の反応は違った。
「ミニチュア版……そうか、その手があったか……!」
ご老人の目は、未だ嘗てないほどにキラキラと輝く。
「確かに、本来なら自分が担当した場所以外を再現するのは難しい。じゃが、ワシはこれでも、筆頭木工職人でな。全作業過程を把握しておったんじゃ。その時の記憶を頼りに再現することは可能じゃ!」
やる気に満ち溢れたご老人。
きっと、ご老人だけでやり遂げるにはとても大変な作業だろう。しかし、それでもご老人は止まらない。三団子も止まれない。
その後、具体的なミニチュア版の広場をどう作るのかを話し合い、大枠が決まったところでご老人はすくっと立ち上がる。
「若者達よ。ありがとう。おかげで、人生最後の大仕事ができそうじゃ!」
「ううん、おじいさんがずっと諦めなかったから、ここまで来れたんだよぉ」
「僕達、また旅に出るかもしれないけど、きっと、またこの町に来るからね!」
「体に気をつけて! あ、あと、これもどうぞ!」
赤団子が手渡したのは、日持ちのするドライフルーツ。ご老人の健康を祈っているであろうことは間違いないそれが、今後どんな効果を発揮するのかは不明だ。
初めて出会った時とは違い、溌剌とした様子で帰るご老人を見送った三団子。
そして、そんなタイミングを見計らったかのように、ロドフが情報収集を終えて帰ってきた。
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