61 / 96
第二章 三団子、旅をする
第十五話 ご老人と三団子2
しおりを挟む
視力の回復など、まずこの世界でできることなのかどうかも怪しく、そもそも、立てないほどに弱っていた人間をすぐに回復させるというのもあり得ないことだった。
しかし、幸いなことに、ご老人はそんな異常事態には気づいていなかった。……いや、むしろ、それに気づく余裕などなかった。何故なら……。
「……見えない時も大きそうだとは思っておったが、随分と、大きく育ったのぉ」
目が見えるようになったということは、三団子のその巨体すらも目に収められるようになったということだ。
目が見えるようになってすぐに見たものが三団子。でっぷりブヨブヨボヨンボヨンの三団子。
これは、ご愁傷さまと声をかけても良い案件かもしれない。久しぶりに見えるようになった目に映ったものが三団子というのは、あまりにも悲しすぎる。
「おじいさん。おじいさんは、これからどうしたい?」
「今のおじいさんなら、目が見えるよ?」
「僕達、できる限りは力になるよ?」
しかし、そんなことには気づかない三団子は、ご老人へとそんな問いかけをする。
三団子の言葉は本気だ。たとえ、このご老人がこの場所を復活させたいと願ったとしても、それを叶えるために尽力するだろうことは確実だ。
そんな本気を感じ取ったのか、ご老人は少しだけ目を伏せて考える様子を見せると、徐ろに答えを出す。
「ワシは……カラクリを作りたい。この町の者達が喜んでくれるような。この町の者達が、かつての風景を思い出してくれるような。そんな、この町の希望になるカラクリを作ってみたいのじゃ」
今は、希望も何もないこのマルマの町。しかし、かつては木工の町と呼ばれ、巨大なカラクリの広場が存在した賑やかな町だったのだ。
その時の風景を再現することはできない。その時の活気を取り戻すこともできない。しかし、それならば、かつてを思い起こさせる物を作ることはできるのではないか。思い出だけは、干ばつにも、飢饉にも、魔物にも奪われていないのだから。
そんなご老人の想いに、三団子は互いの顔を見合わせて大きく頷く。
「「「おじいさん、僕達にも手伝わせて!!」」」
食欲優先の三団子。彼らに何の手伝いができるのかは定かではないが、それでも、三団子はご老人に協力する気満々だった。
「それなら、何を作るのかの相談に乗ってもらおうかのぉ? 旅人ならではの発想もあるかもしれんしの」
そんな三団子に、ご老人は三団子と出会ってから初めて、心の奥底からの笑みを浮かべた。
しかし、幸いなことに、ご老人はそんな異常事態には気づいていなかった。……いや、むしろ、それに気づく余裕などなかった。何故なら……。
「……見えない時も大きそうだとは思っておったが、随分と、大きく育ったのぉ」
目が見えるようになったということは、三団子のその巨体すらも目に収められるようになったということだ。
目が見えるようになってすぐに見たものが三団子。でっぷりブヨブヨボヨンボヨンの三団子。
これは、ご愁傷さまと声をかけても良い案件かもしれない。久しぶりに見えるようになった目に映ったものが三団子というのは、あまりにも悲しすぎる。
「おじいさん。おじいさんは、これからどうしたい?」
「今のおじいさんなら、目が見えるよ?」
「僕達、できる限りは力になるよ?」
しかし、そんなことには気づかない三団子は、ご老人へとそんな問いかけをする。
三団子の言葉は本気だ。たとえ、このご老人がこの場所を復活させたいと願ったとしても、それを叶えるために尽力するだろうことは確実だ。
そんな本気を感じ取ったのか、ご老人は少しだけ目を伏せて考える様子を見せると、徐ろに答えを出す。
「ワシは……カラクリを作りたい。この町の者達が喜んでくれるような。この町の者達が、かつての風景を思い出してくれるような。そんな、この町の希望になるカラクリを作ってみたいのじゃ」
今は、希望も何もないこのマルマの町。しかし、かつては木工の町と呼ばれ、巨大なカラクリの広場が存在した賑やかな町だったのだ。
その時の風景を再現することはできない。その時の活気を取り戻すこともできない。しかし、それならば、かつてを思い起こさせる物を作ることはできるのではないか。思い出だけは、干ばつにも、飢饉にも、魔物にも奪われていないのだから。
そんなご老人の想いに、三団子は互いの顔を見合わせて大きく頷く。
「「「おじいさん、僕達にも手伝わせて!!」」」
食欲優先の三団子。彼らに何の手伝いができるのかは定かではないが、それでも、三団子はご老人に協力する気満々だった。
「それなら、何を作るのかの相談に乗ってもらおうかのぉ? 旅人ならではの発想もあるかもしれんしの」
そんな三団子に、ご老人は三団子と出会ってから初めて、心の奥底からの笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・


フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる