ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第二章 三団子、旅をする

第十五話 ご老人と三団子2

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 視力の回復など、まずこの世界でできることなのかどうかも怪しく、そもそも、立てないほどに弱っていた人間をすぐに回復させるというのもあり得ないことだった。
 しかし、幸いなことに、ご老人はそんな異常事態には気づいていなかった。……いや、むしろ、それに気づく余裕などなかった。何故なら……。


「……見えない時も大きそうだとは思っておったが、随分と、大きく育ったのぉ」


 目が見えるようになったということは、三団子のその巨体すらも目に収められるようになったということだ。
 目が見えるようになってすぐに見たものが三団子。でっぷりブヨブヨボヨンボヨンの三団子。
 これは、ご愁傷さまと声をかけても良い案件かもしれない。久しぶりに見えるようになった目に映ったものが三団子というのは、あまりにも悲しすぎる。


「おじいさん。おじいさんは、これからどうしたい?」

「今のおじいさんなら、目が見えるよ?」

「僕達、できる限りは力になるよ?」


 しかし、そんなことには気づかない三団子は、ご老人へとそんな問いかけをする。

 三団子の言葉は本気だ。たとえ、このご老人がこの場所を復活させたいと願ったとしても、それを叶えるために尽力するだろうことは確実だ。

 そんな本気を感じ取ったのか、ご老人は少しだけ目を伏せて考える様子を見せると、徐ろに答えを出す。


「ワシは……カラクリを作りたい。この町の者達が喜んでくれるような。この町の者達が、かつての風景を思い出してくれるような。そんな、この町の希望になるカラクリを作ってみたいのじゃ」


 今は、希望も何もないこのマルマの町。しかし、かつては木工の町と呼ばれ、巨大なカラクリの広場が存在した賑やかな町だったのだ。
 その時の風景を再現することはできない。その時の活気を取り戻すこともできない。しかし、それならば、かつてを思い起こさせる物を作ることはできるのではないか。思い出だけは、干ばつにも、飢饉にも、魔物にも奪われていないのだから。

 そんなご老人の想いに、三団子は互いの顔を見合わせて大きく頷く。


「「「おじいさん、僕達にも手伝わせて!!」」」


 食欲優先の三団子。彼らに何の手伝いができるのかは定かではないが、それでも、三団子はご老人に協力する気満々だった。


「それなら、何を作るのかの相談に乗ってもらおうかのぉ? 旅人ならではの発想もあるかもしれんしの」


 そんな三団子に、ご老人は三団子と出会ってから初めて、心の奥底からの笑みを浮かべた。
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