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第二章 三団子、旅をする
第十二話 マルマの町と三団子4
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情報収集は大切だ。特に、この世界を知らない三団子にとって、情報は命に関わるレベルで大切なものだ。そのため、三団子達は情報を集めることにした。
……とはいえ、だ。三団子の存在は、あまりにも目立ちすぎる上、一般人にとっては恐ろしくも見える存在だ。三団子が聞き込みをするというのも、三団子を引き連れて聞き込みをするというのも、どちらも現実的ではない。
そういうわけで、三団子とロドフは分かれて行動することとなった。
待ち合わせ場所は、町の中央にある、今は作動していない巨大な木工の仕掛け細工がある場所。
三団子達の役割は、その場所でのんびり待つことであり、何か良い案が出ないか考えることでもある。ただ、あまり三団子に期待してもいけない。三団子の頭の中にあるのは、やはり糖と脂肪がメインなのだから。
対してロドフは、人が集まりそうな場所を訪ねて色々と情報を聞いてくるという大切なお役目がある。ついでに、三団子のための布も買えたら買ってくるらしい。
子狼が三団子とロドフのどちらに付いていくかは分からないが、ロドフ一人でもそれなりに腕は立つ。きっと、何事もなく帰ってくることだろう。
そうしてロドフと分かれた三団子は、自分達に付いてくる様子の子狼をお供にして、町の中央へと向かう。
ロドフの重力操作はある程度離れていても効果があるため、まだまだ三団子は普通に歩けている。しかし、それでも自分達に何もできることがないと分かっているからか、三団子の足取りは重い。
「キャンキャンッ」
子狼が励ますかのように三団子に向けて鳴き声をあげるものの、三団子はそんな健気な子狼に気づくこともなく、ダラダラノロノロ歩く。
こんなんだから、全くモテないのだ。三団子は。
町の中央に辿り着くと、そこには一人の年老いたおじいさんが、杖を片手に木製のベンチに座っているだけで、他には誰も居ない。この町の本来の姿を三団子が知るわけではないものの、そのあまりの閑散とした様子に、三団子は立ち尽くす。
「なんじゃあ? 久々に、人が来たのぉ」
すると、ふいに、ベンチに腰掛けていたおじいさんが三団子へと顔を向けて話し出す。
「「「え、えっと、こんにちは」」」
「うむうむ、こんにちは。今どき挨拶ができる若者というのは感心じゃのぉ。じゃが、聞き慣れん声じゃ。旅の方かね?」
どうやら、このご老人、目が見えていないらしい。三団子に自分から話しかけるなんて、どんな狂人かと思えば、ただ見えていなかっただけ。それならば、このご老人の精神が異常というわけではないだろう。
「「「はい、そうです」」」
「ふむ、それなら、ちと、ワシの昔話にでも付き合ってくれんかのぉ? もちろん、時間がなければ諦めるつもりじゃが」
そんな、ご老人の頼みをお人好しの三団子が断れるわけがない。そもそも、急ぐ用事もないのだ。ここでのんびり待つのであれば、ご老人の暇つぶしに付き合うくらい、三団子にとってはお安い御用だった。
「時間は、大丈夫ですよぉ」
「僕達、おじいさんの近くに座るね」
「おじいさん、よろしくね」
そうして、三団子はご老人の昔話を聞く体勢に入った。
……とはいえ、だ。三団子の存在は、あまりにも目立ちすぎる上、一般人にとっては恐ろしくも見える存在だ。三団子が聞き込みをするというのも、三団子を引き連れて聞き込みをするというのも、どちらも現実的ではない。
そういうわけで、三団子とロドフは分かれて行動することとなった。
待ち合わせ場所は、町の中央にある、今は作動していない巨大な木工の仕掛け細工がある場所。
三団子達の役割は、その場所でのんびり待つことであり、何か良い案が出ないか考えることでもある。ただ、あまり三団子に期待してもいけない。三団子の頭の中にあるのは、やはり糖と脂肪がメインなのだから。
対してロドフは、人が集まりそうな場所を訪ねて色々と情報を聞いてくるという大切なお役目がある。ついでに、三団子のための布も買えたら買ってくるらしい。
子狼が三団子とロドフのどちらに付いていくかは分からないが、ロドフ一人でもそれなりに腕は立つ。きっと、何事もなく帰ってくることだろう。
そうしてロドフと分かれた三団子は、自分達に付いてくる様子の子狼をお供にして、町の中央へと向かう。
ロドフの重力操作はある程度離れていても効果があるため、まだまだ三団子は普通に歩けている。しかし、それでも自分達に何もできることがないと分かっているからか、三団子の足取りは重い。
「キャンキャンッ」
子狼が励ますかのように三団子に向けて鳴き声をあげるものの、三団子はそんな健気な子狼に気づくこともなく、ダラダラノロノロ歩く。
こんなんだから、全くモテないのだ。三団子は。
町の中央に辿り着くと、そこには一人の年老いたおじいさんが、杖を片手に木製のベンチに座っているだけで、他には誰も居ない。この町の本来の姿を三団子が知るわけではないものの、そのあまりの閑散とした様子に、三団子は立ち尽くす。
「なんじゃあ? 久々に、人が来たのぉ」
すると、ふいに、ベンチに腰掛けていたおじいさんが三団子へと顔を向けて話し出す。
「「「え、えっと、こんにちは」」」
「うむうむ、こんにちは。今どき挨拶ができる若者というのは感心じゃのぉ。じゃが、聞き慣れん声じゃ。旅の方かね?」
どうやら、このご老人、目が見えていないらしい。三団子に自分から話しかけるなんて、どんな狂人かと思えば、ただ見えていなかっただけ。それならば、このご老人の精神が異常というわけではないだろう。
「「「はい、そうです」」」
「ふむ、それなら、ちと、ワシの昔話にでも付き合ってくれんかのぉ? もちろん、時間がなければ諦めるつもりじゃが」
そんな、ご老人の頼みをお人好しの三団子が断れるわけがない。そもそも、急ぐ用事もないのだ。ここでのんびり待つのであれば、ご老人の暇つぶしに付き合うくらい、三団子にとってはお安い御用だった。
「時間は、大丈夫ですよぉ」
「僕達、おじいさんの近くに座るね」
「おじいさん、よろしくね」
そうして、三団子はご老人の昔話を聞く体勢に入った。
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