ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第二章 三団子、旅をする

第五話 ばら撒く三団子2

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 末っ子赤団子の策は、至極単純なものだった。

 権力者が欲しいと思うものなら、そこの一番の権力者に渡してしまえば良い。そうすれば、いつの間にか広まっていたとしても、それはその権力者の計らいだと思われるし、何か不都合が起きたとしても、一番の権力者には逆らえないだろう。

 確かに、それは理に適ってはいる。広まれば広まるほど、その犠牲となる最高権力者は自分は広めていないと否定しにくくなるのだ。それは、人々の感謝のためか、同じく権力を持つ者への優越感を得るためか。何が要因となるかは分からないが、その人物のプライドが高ければ高いほどに自分は広めていないなどとは言えなくなるのだ。

 あの女王様は、少なくとも大人しい部類の人間ではないだろう。となれば、そんな女王様の元にある種がいつの間にか外に広まっているという事態になった時、彼女は真実が分からないままでも自分が広めたと嘘を吐く可能性が高い。
 たとえ、嘘を吐かなかったとしても、その種が女王様の元に存在すれば、必ず疑う者も出てくる。どちらに転んだところで、原因がそこにあると人々は認識するわけだ。

 そうなれば、大々的にこの種の本来の所持者を探すことなどできなくなる。いや、そもそも、『種』という性質上、それが必ずしも人から人の手に渡るとは限らず、自然にどこかで自生しているのかもしれないのだ。
 そして、その上で三団子が様々な場所に種を落としたとしたら……。もはやそれは、三団子を特定するなど不可能だと言っているようなものだ。


「種の半分は色々なところにばら撒くことにしてるけど、それは召喚者へ種をしばらく送りつけた後にするつもりなんだ」

「そっかぁ。そうしたら、その人が種を持ってるって周りが認識する時間を稼げるもんねぇ」

「僕達には中々辿り着けないだろうね!」


 末っ子赤団子の言葉に、次男の青団子も、三男の黄団子もウンウンと頷いて、タプタプと頬肉を揺らして同意する。
 ぼんやりポヤポヤしていそうなのに、中々にえげつない作戦だ。そして、そんな作戦をただただ感心して頷く二団子も相当なのかもしれない。


「す、すごいです! それならきっと、こっちまで捜そうとはならないでしょうっ!」

「クゥ、キュウン……」


 素直に大喜びのロドフと、なぜか納得がいかないといった様子の子狼。しかし、赤団子の策が正しくはまるのであれば、捜索の手がここまで伸びる可能性は低い。


「と、いうわけで、兄さんも協力してしてね!」

「うん、そうだねぇ。果物だけじゃないって示しておかないとねぇ」

「それじゃあ、ご飯にしようか!」


 ……最終的には食欲に結びつけるその思考回路は、もはや尊敬すべきなのだろうか?
 とはいえ、実際、そのままその場では、様々な種がある食料を使った料理が並ぶこととなり、三団子の誰も見たくないであろう食事風景が再び繰り広げられるのだった。
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