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第一章 三団子、異世界に立つ
閑話 マッスル長兄の思考1
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さて、とりあえず三団子が心強い仲間を手に入れ、旅立ったところで、これまで完全に蚊帳の外だった三団子の長兄、椎名質君に焦点を当ててみよう。
「フッ、今日も上腕二頭筋が引き締まっているな!」
しまった。やはり、彼はマッスル集団の一員。もしかしたら、脳味噌まで筋肉で埋め尽くされているかもしれない疑惑がある人物だった。
一応、質の容姿を説明すると、三団子と共通するのはその巨体くらいで、巨体は巨体でも三団子とは異なり、しっかりと引き締まった肉体を持つ人物といったところだろうか。
一般的な日本人らしく、黒目黒髪ではあるものの、中々にイケメンだ。
「ふむ、大胸筋も良し」
……この、マッスル発言さえ無ければ、もうちょっとまともに見えたかもしれないが、まぁ、マッチョ好きな人だって居るのだから、質に彼女ができる未来はそう悲観する必要はない。三団子という色々と絶望的な兄弟が居るとしても、彼なら大丈夫だろう。
「――全身のチェック良し。さて、と。そろそろ考えなくてはな」
いつの間にか全身のチェックを終わらせていた質は、その場にあぐらをかいて思案する。
そうそう、この場所は、あの女王様が用意させた勤務場所……と言えば良い具合に聞こえるかもしれないが、実際のところは、奴隷として働かせるために監禁している牢獄のような場所だった。
部屋そのものは石造りで、とりあえず寝る場所とお手洗いがあるだけだ。そして、ベッドは一部屋に八人眠れるように設置されている。
食事は毎日決まった時間に鐘が鳴り、部屋を出てすぐのところにある食堂で全員が食事を行うこととなっている。しかし、満足な量は出ない。体を拭くための水桶とタオルは用意されるが、風呂などはそもそも無い。
眠ったり食事をしたりなどの時間を除けば、後は全て、労働の時間だ。
様々な物を運んだり、何かの動力となるのか、十数人がかりで巨大な円柱の周りに取り付けられた棒を握って、一方方向へグルグル歩き続けるとか、そういった労働が課せられる。
「あの日、俺達は異世界へと飛ばされた。そして、部長の機転によって、俺達は全員ただの筋肉バカだと認識させることに成功した」
……………………えっ?
本当に筋肉バカだったのでは?
そう思ったあなたは、きっと間違っていない。実際、彼らが筋肉にかける情熱は凄まじいものがあるのだが、この質を含め、彼らマッスルサークルが存在する大学は、そこそこの難関大学だったりするのだ。
つまりは、マッスルサークルの人間だろうとも、その脳味噌に詰まっているのは筋肉ではないということだ。
ちなみに、現在の時刻は、まだ眠りの中の人が多いだろう早朝。実際、八人が寝起きするその場所で起きているのは、質のみだった。
「きっと、何らかの手段で俺達を従わせるつもりだったんだろうが、俺達がここを合宿会場だと勘違いしているように装ったことで、その手段は使われていない。が、時間の問題だろう」
マッスルサークル以外にも、あの女王様は異世界から人を呼んでいたようで、同じく食堂や労働の場で顔を合わせることがあったものの、彼らは一様に表情がなく、ただ言われた通りのことのみを淡々とこなす人形のようだった。
まだまだ分からないことが多いが、人形のようにされる危険性があるという事実は、マッスルサークルでも重大な問題とされている。
そして……。
「俺は、弟達をも巻き込んでしまった。早く、ここを抜け出して捜し出してやらねば」
何と、長兄の質は、三団子の存在にしっかりと気付いていた。いや、そもそも気づかないことが異常だと思えるレベルの圧倒的存・在・感、なのだが、彼らも彼らで筋肉バカだったため、気づかれていないものと、今の今まで思われていた。
……やはり、主人公交代のお知らせがどこかで出てきてもおかしくはない。しかし、それでもやっぱり、このお話の主人公は三団子なのだ。どんなに悲しくとも、長兄にそのお鉢が回ってくることはない。
「フッ、今日も上腕二頭筋が引き締まっているな!」
しまった。やはり、彼はマッスル集団の一員。もしかしたら、脳味噌まで筋肉で埋め尽くされているかもしれない疑惑がある人物だった。
一応、質の容姿を説明すると、三団子と共通するのはその巨体くらいで、巨体は巨体でも三団子とは異なり、しっかりと引き締まった肉体を持つ人物といったところだろうか。
一般的な日本人らしく、黒目黒髪ではあるものの、中々にイケメンだ。
「ふむ、大胸筋も良し」
……この、マッスル発言さえ無ければ、もうちょっとまともに見えたかもしれないが、まぁ、マッチョ好きな人だって居るのだから、質に彼女ができる未来はそう悲観する必要はない。三団子という色々と絶望的な兄弟が居るとしても、彼なら大丈夫だろう。
「――全身のチェック良し。さて、と。そろそろ考えなくてはな」
いつの間にか全身のチェックを終わらせていた質は、その場にあぐらをかいて思案する。
そうそう、この場所は、あの女王様が用意させた勤務場所……と言えば良い具合に聞こえるかもしれないが、実際のところは、奴隷として働かせるために監禁している牢獄のような場所だった。
部屋そのものは石造りで、とりあえず寝る場所とお手洗いがあるだけだ。そして、ベッドは一部屋に八人眠れるように設置されている。
食事は毎日決まった時間に鐘が鳴り、部屋を出てすぐのところにある食堂で全員が食事を行うこととなっている。しかし、満足な量は出ない。体を拭くための水桶とタオルは用意されるが、風呂などはそもそも無い。
眠ったり食事をしたりなどの時間を除けば、後は全て、労働の時間だ。
様々な物を運んだり、何かの動力となるのか、十数人がかりで巨大な円柱の周りに取り付けられた棒を握って、一方方向へグルグル歩き続けるとか、そういった労働が課せられる。
「あの日、俺達は異世界へと飛ばされた。そして、部長の機転によって、俺達は全員ただの筋肉バカだと認識させることに成功した」
……………………えっ?
本当に筋肉バカだったのでは?
そう思ったあなたは、きっと間違っていない。実際、彼らが筋肉にかける情熱は凄まじいものがあるのだが、この質を含め、彼らマッスルサークルが存在する大学は、そこそこの難関大学だったりするのだ。
つまりは、マッスルサークルの人間だろうとも、その脳味噌に詰まっているのは筋肉ではないということだ。
ちなみに、現在の時刻は、まだ眠りの中の人が多いだろう早朝。実際、八人が寝起きするその場所で起きているのは、質のみだった。
「きっと、何らかの手段で俺達を従わせるつもりだったんだろうが、俺達がここを合宿会場だと勘違いしているように装ったことで、その手段は使われていない。が、時間の問題だろう」
マッスルサークル以外にも、あの女王様は異世界から人を呼んでいたようで、同じく食堂や労働の場で顔を合わせることがあったものの、彼らは一様に表情がなく、ただ言われた通りのことのみを淡々とこなす人形のようだった。
まだまだ分からないことが多いが、人形のようにされる危険性があるという事実は、マッスルサークルでも重大な問題とされている。
そして……。
「俺は、弟達をも巻き込んでしまった。早く、ここを抜け出して捜し出してやらねば」
何と、長兄の質は、三団子の存在にしっかりと気付いていた。いや、そもそも気づかないことが異常だと思えるレベルの圧倒的存・在・感、なのだが、彼らも彼らで筋肉バカだったため、気づかれていないものと、今の今まで思われていた。
……やはり、主人公交代のお知らせがどこかで出てきてもおかしくはない。しかし、それでもやっぱり、このお話の主人公は三団子なのだ。どんなに悲しくとも、長兄にそのお鉢が回ってくることはない。
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