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第二章 三団子、旅をする
第二話 盗賊と三団子2
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三団子はちょっとばかし、命の危機に陥りやすいのではないか。そう思われるかもしれないが、これはきっと仕方のないことだ。そもそも世界が違う。何が安全で何が危険なのかも分かっていない三団子が、しっかりと危機管理ができるわけもないのだ。
ただし、三団子が危機管理をしっかりできない理由は、まだ他にもありそうだった。
「盗賊かぁ」
「でも、フラフラだよ?」
「お腹空いてるのかな?」
「キャウ……」
「ちょっ、もっと危機感を持ってくださいっ!」
最近は、三団子に対して呆れの鳴き声ばかりを発するようになった子狼と、まだそんな三団子に慣れていないロドフ。
しかし、三団子にとって、この盗賊はどうやら危険とは思えないものらしい。
第一に、言葉が通じること。そして、第二に、三団子の姿にすら怯えを見せていること。第三に、盗賊達が総じて弱々しい状態であること。きっと、多分、それらの要素が三団子に危機感を抱かせない要因となっている。
「お金はないけど、食料はあるよぉ」
「見逃してくれるなら、それを分けてあげる!」
「見逃してくれないなら……うーん、食べちゃうぞ?」
何だその脅しは。そう罵られる可能性はあったのだが、盗賊達はその予想に反して身を竦め、怯える。
「「「「「ひぃっ!」」」」」
盗賊達は、明らかに戦い慣れてなどいない。得物の種類からしても、元はどこかの鉱夫なり大工なりだったのだろう。
三団子の取り引きらしきものの中に含まれた冗談のような脅しでも、彼らにとっては脅威にしか思えないのだろう。
……いや、ただ単純に、三団子を魔物認定したからかもしれないが。
「しょ、食料を分けてくれるなら、見逃すからっ、おら達を見逃してくだせぇっ!!」
恥も外聞もなく平伏する盗賊の頭らしき人物。
「「「「見逃してくだせぇっ!!」」」」
そして、それに続く部下らしき面々。もはや、この光景を見て、彼らが盗賊だと思う者は誰も居ない。むしろ、三団子というボヨンボヨンで巨大な魔物に命乞いをする貧しい村人、という構図の方が当てはまりそうだ。
「「「良いよぉ」」」
そして、お人好しな三団子は、そんな盗賊に食料を分けることにする。と、いうか、三団子にとっては、食料は魔力がある限り無限に生み出せるものなので、痛くも痒くもないのだろうが、そんな風に簡単に盗賊を助ける選択をした三団子へ、ロドフの方が慌てる。
「ま、待ってください! 相手は盗賊ですよ!?」
「でも、きっと元々は、どこかの村とか町に居た一般人だよぉ?」
「干ばつの影響で、食べ物がなくて、仕方なかったんじゃないかな?」
「きっと、彼らもこんなことしたくないけど、生きるためには仕方なかったんだよ」
「……キャウ……」
そして、そんな三団子達のやり取りを聞いていた盗賊達は、一瞬呆然とした後、三団子の言葉の何かが心に響いたのか、ウオンウオンと男泣きを始めた。
ただし、三団子が危機管理をしっかりできない理由は、まだ他にもありそうだった。
「盗賊かぁ」
「でも、フラフラだよ?」
「お腹空いてるのかな?」
「キャウ……」
「ちょっ、もっと危機感を持ってくださいっ!」
最近は、三団子に対して呆れの鳴き声ばかりを発するようになった子狼と、まだそんな三団子に慣れていないロドフ。
しかし、三団子にとって、この盗賊はどうやら危険とは思えないものらしい。
第一に、言葉が通じること。そして、第二に、三団子の姿にすら怯えを見せていること。第三に、盗賊達が総じて弱々しい状態であること。きっと、多分、それらの要素が三団子に危機感を抱かせない要因となっている。
「お金はないけど、食料はあるよぉ」
「見逃してくれるなら、それを分けてあげる!」
「見逃してくれないなら……うーん、食べちゃうぞ?」
何だその脅しは。そう罵られる可能性はあったのだが、盗賊達はその予想に反して身を竦め、怯える。
「「「「「ひぃっ!」」」」」
盗賊達は、明らかに戦い慣れてなどいない。得物の種類からしても、元はどこかの鉱夫なり大工なりだったのだろう。
三団子の取り引きらしきものの中に含まれた冗談のような脅しでも、彼らにとっては脅威にしか思えないのだろう。
……いや、ただ単純に、三団子を魔物認定したからかもしれないが。
「しょ、食料を分けてくれるなら、見逃すからっ、おら達を見逃してくだせぇっ!!」
恥も外聞もなく平伏する盗賊の頭らしき人物。
「「「「見逃してくだせぇっ!!」」」」
そして、それに続く部下らしき面々。もはや、この光景を見て、彼らが盗賊だと思う者は誰も居ない。むしろ、三団子というボヨンボヨンで巨大な魔物に命乞いをする貧しい村人、という構図の方が当てはまりそうだ。
「「「良いよぉ」」」
そして、お人好しな三団子は、そんな盗賊に食料を分けることにする。と、いうか、三団子にとっては、食料は魔力がある限り無限に生み出せるものなので、痛くも痒くもないのだろうが、そんな風に簡単に盗賊を助ける選択をした三団子へ、ロドフの方が慌てる。
「ま、待ってください! 相手は盗賊ですよ!?」
「でも、きっと元々は、どこかの村とか町に居た一般人だよぉ?」
「干ばつの影響で、食べ物がなくて、仕方なかったんじゃないかな?」
「きっと、彼らもこんなことしたくないけど、生きるためには仕方なかったんだよ」
「……キャウ……」
そして、そんな三団子達のやり取りを聞いていた盗賊達は、一瞬呆然とした後、三団子の言葉の何かが心に響いたのか、ウオンウオンと男泣きを始めた。
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