ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

文字の大きさ
上 下
48 / 96
第二章 三団子、旅をする

第二話 盗賊と三団子2

しおりを挟む
 三団子はちょっとばかし、命の危機に陥りやすいのではないか。そう思われるかもしれないが、これはきっと仕方のないことだ。そもそも世界が違う。何が安全で何が危険なのかも分かっていない三団子が、しっかりと危機管理ができるわけもないのだ。

 ただし、三団子が危機管理をしっかりできない理由は、まだ他にもありそうだった。


「盗賊かぁ」

「でも、フラフラだよ?」

「お腹空いてるのかな?」

「キャウ……」

「ちょっ、もっと危機感を持ってくださいっ!」


 最近は、三団子に対して呆れの鳴き声ばかりを発するようになった子狼と、まだそんな三団子に慣れていないロドフ。
 しかし、三団子にとって、この盗賊はどうやら危険とは思えないものらしい。
 第一に、言葉が通じること。そして、第二に、三団子の姿にすら怯えを見せていること。第三に、盗賊達が総じて弱々しい状態であること。きっと、多分、それらの要素が三団子に危機感を抱かせない要因となっている。


「お金はないけど、食料はあるよぉ」

「見逃してくれるなら、それを分けてあげる!」

「見逃してくれないなら……うーん、食べちゃうぞ?」


 何だその脅しは。そう罵られる可能性はあったのだが、盗賊達はその予想に反して身を竦め、怯える。


「「「「「ひぃっ!」」」」」


 盗賊達は、明らかに戦い慣れてなどいない。得物の種類からしても、元はどこかの鉱夫なり大工なりだったのだろう。
 三団子の取り引きらしきものの中に含まれた冗談のような脅しでも、彼らにとっては脅威にしか思えないのだろう。
 ……いや、ただ単純に、三団子を魔物認定したからかもしれないが。


「しょ、食料を分けてくれるなら、見逃すからっ、おら達を見逃してくだせぇっ!!」


 恥も外聞もなく平伏する盗賊の頭らしき人物。


「「「「見逃してくだせぇっ!!」」」」


 そして、それに続く部下らしき面々。もはや、この光景を見て、彼らが盗賊だと思う者は誰も居ない。むしろ、三団子というボヨンボヨンで巨大な魔物に命乞いをする貧しい村人、という構図の方が当てはまりそうだ。


「「「良いよぉ」」」


 そして、お人好しな三団子は、そんな盗賊に食料を分けることにする。と、いうか、三団子にとっては、食料は魔力がある限り無限に生み出せるものなので、痛くも痒くもないのだろうが、そんな風に簡単に盗賊を助ける選択をした三団子へ、ロドフの方が慌てる。


「ま、待ってください! 相手は盗賊ですよ!?」

「でも、きっと元々は、どこかの村とか町に居た一般人だよぉ?」

「干ばつの影響で、食べ物がなくて、仕方なかったんじゃないかな?」

「きっと、彼らもこんなことしたくないけど、生きるためには仕方なかったんだよ」

「……キャウ……」


 そして、そんな三団子達のやり取りを聞いていた盗賊達は、一瞬呆然とした後、三団子の言葉の何かが心に響いたのか、ウオンウオンと男泣きを始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...