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第一章 三団子、異世界に立つ
第四十二話 埋葬と三団子
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ロドフは、両親を捜して、もし亡くなっているようであれば埋葬したいと言って、心当たりがあるという場所へと三団子達と一緒に向かっていた。
「ここは……」
「もしかして」
「墓地?」
ロドフが向かった先は、村の墓地だった。
「はい、記憶が戻るまで、この場所のことも忘れていました。だから、きっとここに……」
確かに、その場所は村から少し奥まった場所にあり、その存在を知らなければ探すこともなかっただろう。
それでもやはり、周囲には草の一本も生えてはいない。それだけ、干ばつの影響が、飢えの影響が大きかったということなのだろう。
カサカサの地面を踏みしめて、石が重ねてあるような墓が並ぶその場所を歩けば、すぐにそれが見える。
「……っ、父さん、母さん……」
そこには、痩せこけた二人の人間が、穏やかな表情でお互いを抱き締めるようにして倒れていた。
ロドフは急いで駆け寄るものの、彼らが動く様子はない。とうの昔に、息を引き取った後なのだろう。
彼らの側には、シャベルが二つ倒れており、最近盛られたであろう土の塊がいくつかあることから、もしかしたら彼らは最後まで、村人の埋葬を行っていたのかもしれない。
「あぁっ、うぁあぁ……」
ボタボタと流れ落ちる涙。それでも、彼らが目を開けることは二度とない。
「クゥン」
ペタリと耳を垂れた子狼に、三団子はしゃがみ込んで……いや、三団子の体ではしゃがみ込むという動作が大変難しいことであったらしく、どっかりと腰を下ろして、子狼を交互に撫でる。
ただ、青団子だけは、少しだけ周囲をグルリと見回して、一点に目を向ける。
そこには、ちょうど大人が二人入れそうな大きさの穴が掘られていた。
ひとしきり泣き続けたロドフは、それでもまだ、両親の側から離れようとはしない。
「……ロドフ君。そろそろ、ご両親を眠らせてあげようかぁ」
そう声を掛けるのは次男の青団子。
「……眠らせ、る?」
「うん、きっと、ご両親はロドフ君が無事で、とっても喜んでるよ。でも、これまでずっと大変だったから、もう、休ませてあげないとぉ」
そう言って、先程見つけた穴の方へと青団子は視線を移す。
それにつられて、ロドフもその穴を見つけて、それを掘ったのが目の前に横たわる二人だと気づいたのだろう。とうに枯れたと思っていたはずの涙がまた溢れ、ロドフの視界はボヤける。
「ご両親が好きだった食べ物とか飲み物って何かな? 僕達の力で、お供えくらいならできるよ?」
そう問いかけるのは末っ子赤団子。
「もし、ロドフ君が一から作りたいなら、材料だけでもある程度なら出せると思うし、多分、お酒とかでも出せそう」
そう提案するのは三男の黄団子。
「どうせなら、他の村の人達皆の分も、お供えしようねぇ。さぁ、ロドフ君、どんなものが良いかなぁ?」
少しだけ、明るく聞こえるように声の調子を頑張って変えようとして、変に失敗している次男の青団子。
「ありがとう、ございます……」
未だに涙が溢れる中、それでも、ロドフは深く頭を下げて、お礼を告げる。
それから数時間の後、墓地には様々なものが供えられ、その場には、誰も居なくなった。
「ここは……」
「もしかして」
「墓地?」
ロドフが向かった先は、村の墓地だった。
「はい、記憶が戻るまで、この場所のことも忘れていました。だから、きっとここに……」
確かに、その場所は村から少し奥まった場所にあり、その存在を知らなければ探すこともなかっただろう。
それでもやはり、周囲には草の一本も生えてはいない。それだけ、干ばつの影響が、飢えの影響が大きかったということなのだろう。
カサカサの地面を踏みしめて、石が重ねてあるような墓が並ぶその場所を歩けば、すぐにそれが見える。
「……っ、父さん、母さん……」
そこには、痩せこけた二人の人間が、穏やかな表情でお互いを抱き締めるようにして倒れていた。
ロドフは急いで駆け寄るものの、彼らが動く様子はない。とうの昔に、息を引き取った後なのだろう。
彼らの側には、シャベルが二つ倒れており、最近盛られたであろう土の塊がいくつかあることから、もしかしたら彼らは最後まで、村人の埋葬を行っていたのかもしれない。
「あぁっ、うぁあぁ……」
ボタボタと流れ落ちる涙。それでも、彼らが目を開けることは二度とない。
「クゥン」
ペタリと耳を垂れた子狼に、三団子はしゃがみ込んで……いや、三団子の体ではしゃがみ込むという動作が大変難しいことであったらしく、どっかりと腰を下ろして、子狼を交互に撫でる。
ただ、青団子だけは、少しだけ周囲をグルリと見回して、一点に目を向ける。
そこには、ちょうど大人が二人入れそうな大きさの穴が掘られていた。
ひとしきり泣き続けたロドフは、それでもまだ、両親の側から離れようとはしない。
「……ロドフ君。そろそろ、ご両親を眠らせてあげようかぁ」
そう声を掛けるのは次男の青団子。
「……眠らせ、る?」
「うん、きっと、ご両親はロドフ君が無事で、とっても喜んでるよ。でも、これまでずっと大変だったから、もう、休ませてあげないとぉ」
そう言って、先程見つけた穴の方へと青団子は視線を移す。
それにつられて、ロドフもその穴を見つけて、それを掘ったのが目の前に横たわる二人だと気づいたのだろう。とうに枯れたと思っていたはずの涙がまた溢れ、ロドフの視界はボヤける。
「ご両親が好きだった食べ物とか飲み物って何かな? 僕達の力で、お供えくらいならできるよ?」
そう問いかけるのは末っ子赤団子。
「もし、ロドフ君が一から作りたいなら、材料だけでもある程度なら出せると思うし、多分、お酒とかでも出せそう」
そう提案するのは三男の黄団子。
「どうせなら、他の村の人達皆の分も、お供えしようねぇ。さぁ、ロドフ君、どんなものが良いかなぁ?」
少しだけ、明るく聞こえるように声の調子を頑張って変えようとして、変に失敗している次男の青団子。
「ありがとう、ございます……」
未だに涙が溢れる中、それでも、ロドフは深く頭を下げて、お礼を告げる。
それから数時間の後、墓地には様々なものが供えられ、その場には、誰も居なくなった。
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