ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第一章 三団子、異世界に立つ

第四十話 ロドフの記憶と三団子1

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 結論から言おう。やはり、ロドフの記憶は色々とおかしかったようだ。

 目が覚めたロドフは、それまでの取り乱し具合が嘘のように落ち着いていて、ここまで何も聞かないままに世話をしてくれた三団子へとゆっくり話を始めた。


「俺は、本来、捨て子でした。それをたまたま近くを通りがかった夫婦に引き取られて、ずっと、一緒に暮らしていたんです」


 三男な黄団子が緑茶を用意し、末っ子赤団子がお饅頭を大量に出しているテーブルを囲み、三団子と子狼はロドフの話を聞く。

 ロドフのようなハーフエルフという存在は、人間でもエルフでもない存在として、迫害対象となるのだそうだ。しかし、ロドフを拾った夫婦はそんなことを気にする人達ではなく、また、その村の人間達も温かく迎え入れてくれたのだそうだ。


「血の繋がりはなくても、確かに、その夫婦は俺にとっての両親でしたし、二人もそう思ってくれていたと思います。ただ、一年前、俺達の村では大規模な干ばつによる飢饉が起こり、追い打ちをかけるように流行り病のまん延まで起こりました」


 ロドフの以前の記憶では、干ばつは最近の記憶のようだったが、本来は一年も前。しかも、流行り病まで起こったとなると、そうとう悲惨なことになったのだろう。ロドフの握り締める拳が、その状況を物語っているようだ。


「仲が良かったはずの村人同士は、いつの間にかいがみ合う関係になっていました。……俺も、ハーフエルフだからって理由だけで、流行り病の原因のように思われて、迫害されるようになりました」


 ロドフのとても優しかった記憶は、やはり偽りだった。ひもじさと苦しさと死の恐怖。そんなものに直面して、人々がどこまで理性を保てるのかを考えた時、悲しいことに今、ロドフが言ったことが現実なのだろうと思い知らされる。


「「「そんな……」」」

「キュゥン……」


 百八十度違うロドフの記憶に、三団子は言葉を失う。

 三団子は、そのぶよぶよボヨンボヨン体型から容易に想像できるように、ひもじい思いをしたことなんて一度もない。苦しい思いだって、死を感じるほどのものは未経験。唯一、この世界に来たことで死の恐怖くらいは感じたことはあっても、その恐怖に終わりが見えない状態もまた体験したことのないものだった。

 しかし、ロドフや、この村の人々はそんな状況の中で生きていたのだ。生き残るために、大切なもののために、理性を失うのは当然のことだったのかもしれない。


「ただ、俺は、両親に守られたんです。本来なら、俺は殺されてもおかしくはなかったのに、両親が守ってくれて、偽りとはいえ、幸せなままの、いつもの村の幻影を見せ続けてくれました」


 『幻影』という言葉の通り、ロドフは、村のそんな異常に気づくことなく、日々を過ごしていたらしい。少しでもおかしいと思えば、母親がロドフの記憶に干渉していたそうだ。そう、ロドフの母親が、記憶を操作するスキルの持ち主だったのだ。

 きっと、ロドフの両親は機を見てロドフを安全な場所に逃がすなり、誰かに託すなりしたかったのだろう。しかし、閉鎖的な村の中に居たまま、それを望むことは不可能に近い。ただ、そこでロドフの父親のスキルが活躍したようだった。
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