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第一章 三団子、異世界に立つ
第三十八話 寂れた村と三団子5
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突然の叫び声に、さすがの黄団子も目を覚ました。そして、その声を聞きつけて、後から他の二団子や子狼もやってくる。
「剛? 何があったの?」
いつもの間延びした喋り方ではなく、どこか真剣な青団子。
「ぼ、僕も分からない。ただ、ロドフ君が家で見つけた手紙を読んだら、いきなり叫んで……」
「手紙……? これか。えっと……『記憶を封じた』?」
黄団子の言葉に、赤団子が地面に落ちている手紙を見つけて、そのおかしな文章に着目する。そして、じっと考え込んだ後に、徐ろに口を開く。
「……もしかしたら、ロドフ君が口減らしで追い出される前までの記憶は、大幅に違っていたのかもしれない。何らかの理由でその記憶を封印していて、それで、今、その記憶が戻ってる最中だとしたら……」
そんな赤団子の推測を裏付けるように、ロドフは涙を流しながら『そんな』とか『嘘だ』とか、『こんな記憶、違う』と呟いている。
幸いにも、暴れて体を打ちつけるといったことはなさそうなので、怪我の心配はしなくとも良さそうだ。
「…………とりあえず、待つしかなさそうだねぇ」
他人の記憶を封じるなど、どうやるのか三団子には全く見当もつかない。ただし、この世界には魔法もスキルも存在する。それらを使えば、記憶の封印ということも可能なのかもしれなかった。
ひとまず、緊急性は高くないと判断した青団子の言葉に、黄団子も赤団子も頷く。
ロドフの記憶がどんなものなのかは分からない。ただ、ロドフの様子や話には違和感があったのも確かなのだ。
口減らしに追放されてからたった一日で、あそこまで汚れるのだろうか、とか、口減らしを行うような村なのに、それでも何かを持たせようとする親切な人が多かったなどあり得るのかとか。
実際のところは、ロドフの口から語られるまでは分からない。ただ、今はロドフが心の整理をつけるまで待つしかなかった。
「うーん、それじゃあ、温かいスープでも用意して待っていようねぇ」
「そうだね! 他にも色々用意しておこうね!」
「じゃあ、僕は、ロドフ君の側に付いてるね。デザートで欲しいものがあれば、後で聞くよ」
待つとはいえど、やはりそこは三団子。食欲全開なのはいつもと変わらなかった。
ただ、さすがに誰もロドフの側に居ないのは不味いということで、赤団子だけは残ることにしたようだったが、それでもここで食事になるのは何か違う気がする。
「キャンキャンッ」
「君も残ってくれるの? じゃあ、一緒に待とうか」
完全に旅のお供と化した子狼。ただ、そろそろ子狼に名前をつけてあげても良い頃だとは思うのだが、三団子にその気があるのかは不明だ。
そうして、朝の早い時間から、三団子はドタドタバタバタドスンドスンと動き始めるのだった。
「剛? 何があったの?」
いつもの間延びした喋り方ではなく、どこか真剣な青団子。
「ぼ、僕も分からない。ただ、ロドフ君が家で見つけた手紙を読んだら、いきなり叫んで……」
「手紙……? これか。えっと……『記憶を封じた』?」
黄団子の言葉に、赤団子が地面に落ちている手紙を見つけて、そのおかしな文章に着目する。そして、じっと考え込んだ後に、徐ろに口を開く。
「……もしかしたら、ロドフ君が口減らしで追い出される前までの記憶は、大幅に違っていたのかもしれない。何らかの理由でその記憶を封印していて、それで、今、その記憶が戻ってる最中だとしたら……」
そんな赤団子の推測を裏付けるように、ロドフは涙を流しながら『そんな』とか『嘘だ』とか、『こんな記憶、違う』と呟いている。
幸いにも、暴れて体を打ちつけるといったことはなさそうなので、怪我の心配はしなくとも良さそうだ。
「…………とりあえず、待つしかなさそうだねぇ」
他人の記憶を封じるなど、どうやるのか三団子には全く見当もつかない。ただし、この世界には魔法もスキルも存在する。それらを使えば、記憶の封印ということも可能なのかもしれなかった。
ひとまず、緊急性は高くないと判断した青団子の言葉に、黄団子も赤団子も頷く。
ロドフの記憶がどんなものなのかは分からない。ただ、ロドフの様子や話には違和感があったのも確かなのだ。
口減らしに追放されてからたった一日で、あそこまで汚れるのだろうか、とか、口減らしを行うような村なのに、それでも何かを持たせようとする親切な人が多かったなどあり得るのかとか。
実際のところは、ロドフの口から語られるまでは分からない。ただ、今はロドフが心の整理をつけるまで待つしかなかった。
「うーん、それじゃあ、温かいスープでも用意して待っていようねぇ」
「そうだね! 他にも色々用意しておこうね!」
「じゃあ、僕は、ロドフ君の側に付いてるね。デザートで欲しいものがあれば、後で聞くよ」
待つとはいえど、やはりそこは三団子。食欲全開なのはいつもと変わらなかった。
ただ、さすがに誰もロドフの側に居ないのは不味いということで、赤団子だけは残ることにしたようだったが、それでもここで食事になるのは何か違う気がする。
「キャンキャンッ」
「君も残ってくれるの? じゃあ、一緒に待とうか」
完全に旅のお供と化した子狼。ただ、そろそろ子狼に名前をつけてあげても良い頃だとは思うのだが、三団子にその気があるのかは不明だ。
そうして、朝の早い時間から、三団子はドタドタバタバタドスンドスンと動き始めるのだった。
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