ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

文字の大きさ
上 下
35 / 96
第一章 三団子、異世界に立つ

第三十四話 寂れた村と三団子1

しおりを挟む
 やっぱりというか、何というか、三団子の歩みは遅かった。しかし、これまでは子狼だけが付いてきている形だったが、今はロドフが居る。そして、ロドフもスキルは持っているわけで……。


「ロドフ君のスキル、すごいねぇ」

「うんうん、こんなに体が軽いの、初めてだよ!」

「重力操作って、便利だね!」


 そう、ロドフのスキルは、重力操作の能力。主に、重い荷物の持ち運びの時に使用していたものだったようだが、今はそれを三団子自身に使っており、三団子の足取りは普段と比べて随分と軽やかだった。
 ……軽やかな足取りで迫る三団子の姿は、ともすれば恐怖を呼び起こすだろうものだが、今はそれは考えない。村人に『逃げてー』と言いたくとも、きっと三団子が救いになると分かっている以上は、お口にチャックだ。


「俺でも役に立てて良かったです」


 そして、ロドフだが、何枚ものタオルを犠牲にして身綺麗にした彼の姿は、とても美しかった。
 何でも、ロドフ自身はハーフエルフという種族らしく、翡翠の髪や瞳を持つことが多いとのことだった。ちなみに、エルフはというと、同じく翡翠の髪と瞳ではあるものの、輝き具合が全く違うのだとか。
 そんなロドフが暮らしていた村は、ハーフエルフの村なのかといえば、そういうわけでもなく、ごく普通の人間の村らしい。ただし、村人全員の仲が良く、ロドフも口減らしとして出ることにはなったものの、どの村人も謝罪していたとのこと。


「「「良い村なんだねぇ」」」

「はい、それはもう、皆、本当に良くしてくれたんです!」


 食料も僅かなのに、口減らしであるはずなのに、それでも何か持たせようとしてくれる村人も多く居たのだと話すロドフ。
 しかし、ロドフが村から一日のところで行き倒れたことから分かる通り、本当に、村には余裕などなかった。だから、ロドフは何一つ持たずに、フラフラの体で歩き、這い、もしかしたら、少しでも食料を見つけられないかと探して、そのまま倒れてしまったのだそうだ。


「じゃあ、絶対に助けないとだねぇ」

「うんうん、美味しいもの、しっかり食べてほしいもんね!」

「僕も、ちょっと面白いことを考えたから、上手くいけば今後も困らないかも?」

「キャーンッ」

「本当に、ありがとうございます!!」


 ほんのり涙ぐみながら話す三団子に、同じく涙ぐみながら応えるロドフ。
 三団子と子狼と美青年。三団子さえいなければ、とても美しい光景だったかもしれないが、残念ながら三団子の存在感が消滅する未来は近場にはない。それに、三団子がいなければ村も救えないので、しばらくは我慢するしかないだろう。

 軽い足取りのおかげか、三団子達が村に辿り着いたのは、まだ日が暮れる前だった。そして……その村のあまりにも寂れた様子に、三団子は言葉を失うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

処理中です...