ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

文字の大きさ
上 下
34 / 96
第一章 三団子、異世界に立つ

第三十三話 村の現状と三団子

しおりを挟む
 ようやく、顔が少しは見れる程度に戻った三団子は、ロドフから村の状況を詳しく聞く。そこで判明したのは、ロドフの村は度重なる干ばつによって作物が育たず、生計を立てられなくなる者が続出しているようだった。
 しかも、税の軽減などといった措置もなく、食べるものにすら困窮して、毎日毎日、村人の誰かが死んでいく有り様なのだとか。

 そんな詳細な話しを聞いてしまった三団子は、再び号泣の危機に陥るものの、ギュッと口を引き結んで耐える。

 ……ただ、そんな顔も幼子が泣き出すレベルの変顔だったりはしたものの、三団子だから仕方がない。

 そして、そんな三団子は、一つ目標を決めたらしく……。


「「「明日、その村に行こう!」」」

「キャンッ」

「へっ?」


 村の場所は、ここからさほど遠くはないようだった。ただ、三団子の足で行くとなると、一日で行けるところも数日掛かる可能性があるのだが……そこら辺は、実際にどうなるかやってみないと分からない……かもしれない。

 本当に何もないところだとか、村を出た自分が帰るのは迷惑になるのだとか、色々と言っていたロドフだったが、三団子が食事を出す能力があるのだと明かすと、苦悩する様子を見せながら黙り込む。しかし……。


「では、せめて、その能力は隠しておく形でお願いします。きっと、その力はとても貴重なものですから」


 そう、三団子の能力は『ただのネタだろう?』くらいにしか思っていなかった人もいるかもしれないが、単純に、魔力のみで食料を無限に召喚できる能力なんて、有用なものであることは確実だ。特に、権力者から狙われでもしたら、この三団子になす術などない。
 それを考えると、ロドフの言葉は真っ当なものだった。


「「「そのくらいなら良いよー」」」


 果たして三団子に隠し事などできるのかどうかは怪しいが、三団子が失敗したとしても、今のところ被害は三団子のみにしか向かないだろう。それなら、世の中の一般的な人々も安心だ。

 そんなこんなで、三団子と子狼、ロドフは野宿の場所を探して、ガッツリと夕飯を食べて、水拭きで体を清め、もはやボロボロになってきた長兄の衣類を地面に敷いて一晩を明かす。
 その際、ロドフは三団子の食事量に目を丸くしたり、タオルがどんどん汚れてしまうのを申し訳なさそうにしたり、敷布替わりの衣類の使用を躊躇ったりしたものの、三団子の強い押しによって屈することとなる。


「「「おやすみー」」」

「お、おやすみなさい」

「キャンッ」


 翌日、彼らはロドフの村へ向けて出発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

処理中です...