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第一章 三団子、異世界に立つ

第二十七話 分厚い手紙と三団子4

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『神獣と名乗る狼は、時間は掛かるが、必ず成し遂げようと約束をしてくれました。そして、私達の話が聞きたいと、そのまま少しの間だけ、ここで共に暮らすことになりました。

 彼が聞きたがったことは、どんな人間が召喚されたのかや、どんな人間が召喚したのか。そして、私達の仲間が死んだ場所などでした。

 思い出すのもつらい記憶の数々。しかし、少しでも多くの情報がなければ元の世界に返せるかが怪しいのだと告げられてしまえば、私達も必死にならざるを得ませんでした。

 そうして、彼は出掛けて、少しずつ、召喚された人達を元の世界に戻してくれました。

 ただ、同じ世界であることは確かでも、その遺体はどこに現れるか分からないとのことで、もしかしたら突然人里に遺体が現れるなんてこともあるのかもしれないと思いましたが、全く別の世界よりはマシなはずです。

 彼らは、まともに埋葬すらされなかったのですから』


 予想とは異なり、神獣を名乗る狼はしっかりと仕事をしていたらしい。
 しかも、それを裏付ける情報を、まさかの三団子が持っていた。


「そういえば、都内にいきなり死体が落ちてきたって騒ぎになったことあったよねぇ」

「うん、空からいきなりで、目撃者も多くて、宇宙人が落としたのかとか騒がれたっけ」

「軍服みたいな服を着てたし、確実に他殺だとか、色々言われてて、でも、身元は軍服が好きとかの趣味なんてないはずの一般男性だったよね?」


 三団子が、食事以外のことに頭を使っている……。これは、今から世界が滅亡する予兆なのかもしれない。


「行方不明になってから、二十年くらい経ってたんだっけぇ?」

「そうそう、それなのに、その人は当時からほとんど年を取ってないみたいな状態なのに、殺されたのはまだ一年も経ってないとかだったと思うよ!」

「時空を超えたとか、宇宙戦争に駆り出されたとか、色んな憶測が飛び交ってたよね。でも……」

「「「もしかして、これが、原因??」」」

「キャウゥン……」


 恐らく、三団子の憶測は正しいのだろう。子狼が気まずそうに視線を逸らしたことも、その憶測が真実であることを象徴しているかのようだ。
 ただ、予想外に三団子が頭を回転させている様子は、やはり違和感しかない。三団子の頭には、食べ物のことしか詰まっていないというのは間違いだったのだろうか。


「「「でも、おかげで美味しい軍服エイリアンドーナツって名物ができた!」」」


 ……いや、やはり、三団子は三団子だ。きっと、この事件を詳しく知っていた背景には、その軍服エイリアンドーナツとやらがあったのだろう。名前からして、あまり食べたいとは思えないが、三団子であれば、きっとどんなものでも食べられるのだろう。

 そうして、手紙はラストスパートに差し掛かる。
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