ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第一章 三団子、異世界に立つ

第二十六話 分厚い手紙と三団子3

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 手紙の主は、自分の身に起きたことと、この森のこと、そして、最後に手紙を読んだ人間に向けての頼み事を書くとしていた。そうなると、おおよその説明は終わりかけているようにも思えたが、まだ、この森には秘密があるらしい。


『さて、一通り私達の身に起きたことは説明が終わりました。

 ここからは、この森のことについてを説明したいと思います。

 この森は、古くから神獣が住まう森とされていて、神獣の森という名で呼ばれていました。

 今がどういう名で呼ばれているのかは知りませんが、私達は、その名前で呼ばれていることは知っていても、本当に神獣が存在するだなんて思ってもみませんでした。

 本当に神や神に類する者が居るなら、私達はこんなことに巻き込まれてはいないと思っていたからです。

 しかし、神獣は実在しました。

 私と、もう一人の生き残りでこの家を建て、呪いを振り撒き、しばらくした頃に真っ白な狼が訪ねてきたのです』


 真っ白な狼。その言葉に、三団子は手紙の直ぐ側で律儀にお座りしている子狼へ視線を向ける。


「キャンッ」


 どこか自慢げに胸を張っているように見える子狼だが、三団子の意見はある方向で一致していた。


「「「きっと、この神獣って大きいよねー」」」

「キャン!?」


 まるで『何だと!?』とでも言うかのような子狼の反応にも、三団子はタプタプと頬を揺らして頷くのみ。


「「「神獣で狼と言えば、フェンリル! 絶対この子じゃないっ!」」」

「キャウッ!? キャンッ、キャンキャンッ!」


 確かに、三団子の言葉には一理ある。アニメやマンガの文化にどっぷり漬かった日本人にとって、フェンリル狼といえば、巨大な狼とか、強そうとか、そんなイメージが形作られていて不思議ではない。
 三団子にも、まともな感性が存在していたのだという驚愕の事実はさておき、手紙の流れからして、その狼が神獣で間違いないだろう。


『かの狼は、自らを神獣だと名乗り、呪いを解いて欲しいと願ってきました。

 元の森に戻して欲しいと。

 ただ、その時、私達はまだ、この世界への憎しみに満ちていました。

 それと同時に、帰りたいという願いも、まだ捨てられずにいたのです。

 なので、私達は神獣に条件をつけました。

 この世界に召喚された者を元の世界に返してくれるのなら、この森も元に戻そうと。例えそれが死人であっても、その魂も、肉体も、残らず元の世界に戻さなければいけないと。

 我ながら、意地悪な条件だったとは思います。それでも、知らない世界で道具として使われて、死にゆく仲間達のことを思えば、せめてその魂と肉体が離れていたとしても、元の世界へ戻して欲しいと願ってしまいました』


 やはり、その狼は神獣で間違いなかったらしい。そして、手紙の主の願いは最もなものだった。ただ、この森の呪いが解かれた様子はない。つまりは、願いが叶わなかったという可能性が高い。

 三団子は、それを理解しているのだろうか。その辺りは不明だが、しっかりと最後まで手紙を読むことにしたようだった。
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