ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第一章 三団子、異世界に立つ

第二十二話 常識のある三団子?

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 誰も居ないと分かると、小屋から離れようとする三団子に、子狼は驚いた様子で『キャンキャン』と鳴く。
 しかし、そこには三団子の深い考えが……あったわけではなく、三団子の中の常識がそういった行動を取らせていたようだった。


「ダメだよぉ、誰も居ない家に勝手に入ったら」

「不法侵入になるもんね」

「僕達、逮捕されちゃうよ」


 ……いや、珍しく、三団子がまともなことを言っている。普段は食欲の化身でしかないだけの、ブヨブヨボヨボヨ三団子だというのに、いったいどういうことだろうか。
 もしかしたら、あのスキルで出た食べ物を食べると、三団子にも常識が身につくのだろうか。


「ゥウ、キャンッ!」


 とはいえ、子狼はこの小屋の中に三団子を導きたいのだろう。子狼も三団子の反論に少しばかり尻込みした様子は見せたものの、それでも三団子を引っ張る勢いで懸命に小屋の中へ入るよう促している。


「ねぇ、もしかして、このワンちゃんはこの家の子なんじゃないの?」


 と、そこで、末っ子赤団子がそれらしい意見を言う。
 三団子自身、この子狼がどこから来たのかは知らない。恐らくは、あの巨大狼が何か関わっているはずではあるのだが、それでもこの子狼の主がこの小屋の主である可能性もゼロではない。


「確かに、こんな子供のワンちゃんなら、飼い主は居そうだねぇ」

「なら、扉を開けてほしいのかな?」

「キャンッ!」


 次男の青団子も三男の黃団子も、そんな予測を立てて、子狼が同意するかのように鳴いたのを確認すると、全員で顔を見合わせて頷く。
 その様子は、肉に埋もれた顎が少しだけ上下したように見えただけだったが……。

 とにかく、色々と的外れなことばかりする三団子は、ようやく子狼の望みを理解したぞとばかりに子狼を見下ろす。


「ワンちゃんは、お家に帰りたかっただけなんだねぇ。なら、扉を開けるから、ワンちゃんはお家に帰ると良いよぉ」

「うんうん、家は大事だもんね!」

「僕達のことは心配しないで、飼い主さんにしっかり甘えるんだよ」


 ……やはり、三団子は何か悪いものでも食べたのかもしれない。あれだけ飲み食いし続ける三団子なら、十分にあり得る。むしろ、どこで拾い食いをしていてもおかしくはない。

 さぁ、吐け、三団子!
 一体全体何を食べた!?
 そこら辺に自生している明らかに怪しいキノコを食べたんじゃないだろうなっ!?

 三団子の言葉にどこか微妙な表情を浮かべる子狼。狼にしては表情豊かではあるものの、三団子の言葉にそれだけのインパクトがあるのだと言われたら納得してしまいそうになる。
 それでも、子狼は扉さえ開けば後は何とでもなると思っているのか、はたまたそこまでは考えていないのか、三団子が勝手に扉を開けてしまうことへの謝罪をしながら、扉に手を掛ける様子をじっと眺めていた。
 そして……扉は、開かれた。
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