20 / 70
第一章 三団子、異世界に立つ
第十九話 三団子と休息
しおりを挟む
子狼が健気に鳴き声を上げて指し示す方向にあったものは、小さな小屋。つまりは、人工物だった。
「あれ、こんなところに小屋?」
「誰か住んでるのかな?」
「木こりさんとか?」
どうやら、子狼の健闘によって、三団子は食欲の海から帰還したらしい。
とはいえ、同時に首を傾げる三団子は、可愛くもなんとも無い。唯一の癒やしは子狼のみという状況は、しばらくは変わらないだろう。
そして、問題の小屋だが、どう考えても怪しい代物だ。そもそも、ここは黒の森。巨大な魔物が住み着く危険地帯でしかないという認識が根付いているにもかかわらず、そんな場所に小屋が建つなどあり得るのかという話になってくる。
もし建てる人が居るとするならば、その人物は人里に居られなくなった訳ありである可能性が高い。むしろ、そうでもなければこんな場所に小屋など建てたりはしないだろう。
……いや、この世界でまだまともそうな人間には出会えていないので、もしかしたら、こんなところに小屋を作るもの好きが居ないとも限らないが、その時はその時だ。三団子も負けず劣らずのゲテモノであるはずなので、その場合はゲテモノ対決といこうではないか。
「行ってみる?」
「どうしよう……」
「その前に、服を回収しておきたいよ」
残念ながら、三団子に火を起こすようなサバイバル技術はない。
彼らの長兄であれば、もしかしたらそんな技術をもっているのかもしれないが、頼れる長兄が居ない以上、火で暖めながら洗濯物を乾かすなどということを三団子ができるはずもなく、三団子の衣服は未だ、濡れていた。
「うーん、それじゃあ」
「「「お昼寝タイム!!」」」
「キャウ?」
青団子と思しき者がニタリとした不気味な表情で他の二団子を見れば、その直後、三団子は声を揃えてそんな馬鹿なことを言い出す。
子狼に至っては、自分の元へ来る様子のない三団子に首を傾げている。
「質兄さん、ごめん」
「緊急事態なんだ」
「きっと、帰ったら弁償するから」
そう言いながら、三団子は長兄に持っていったはずのリュックの中身を漁り、長兄の着替えを取り出す。
その着替えは当然、三団子には合わないサイズのものなのだが、そこら辺に生えていた大きな葉っぱを地面に敷き詰めて、その上に寝転がった三団子は、その着替えの類を全て、掛布として利用する。
「「「おやすみー」」」
「キャウゥウ!?」
まさか、こんな場所で無防備に眠る馬鹿が居るとは思わなかった、といった具合に鳴く子狼。しかし、その抗議の声は三団子には届かなかったようだ。
「「「グゴー、グガー、グゴゴゴー」」」
おやすみから一分も経たないうちに聞こえてきた大いびき。三団子は、見事、子狼の抗議を無視して、夢の世界へと旅立っていたのだった。
「あれ、こんなところに小屋?」
「誰か住んでるのかな?」
「木こりさんとか?」
どうやら、子狼の健闘によって、三団子は食欲の海から帰還したらしい。
とはいえ、同時に首を傾げる三団子は、可愛くもなんとも無い。唯一の癒やしは子狼のみという状況は、しばらくは変わらないだろう。
そして、問題の小屋だが、どう考えても怪しい代物だ。そもそも、ここは黒の森。巨大な魔物が住み着く危険地帯でしかないという認識が根付いているにもかかわらず、そんな場所に小屋が建つなどあり得るのかという話になってくる。
もし建てる人が居るとするならば、その人物は人里に居られなくなった訳ありである可能性が高い。むしろ、そうでもなければこんな場所に小屋など建てたりはしないだろう。
……いや、この世界でまだまともそうな人間には出会えていないので、もしかしたら、こんなところに小屋を作るもの好きが居ないとも限らないが、その時はその時だ。三団子も負けず劣らずのゲテモノであるはずなので、その場合はゲテモノ対決といこうではないか。
「行ってみる?」
「どうしよう……」
「その前に、服を回収しておきたいよ」
残念ながら、三団子に火を起こすようなサバイバル技術はない。
彼らの長兄であれば、もしかしたらそんな技術をもっているのかもしれないが、頼れる長兄が居ない以上、火で暖めながら洗濯物を乾かすなどということを三団子ができるはずもなく、三団子の衣服は未だ、濡れていた。
「うーん、それじゃあ」
「「「お昼寝タイム!!」」」
「キャウ?」
青団子と思しき者がニタリとした不気味な表情で他の二団子を見れば、その直後、三団子は声を揃えてそんな馬鹿なことを言い出す。
子狼に至っては、自分の元へ来る様子のない三団子に首を傾げている。
「質兄さん、ごめん」
「緊急事態なんだ」
「きっと、帰ったら弁償するから」
そう言いながら、三団子は長兄に持っていったはずのリュックの中身を漁り、長兄の着替えを取り出す。
その着替えは当然、三団子には合わないサイズのものなのだが、そこら辺に生えていた大きな葉っぱを地面に敷き詰めて、その上に寝転がった三団子は、その着替えの類を全て、掛布として利用する。
「「「おやすみー」」」
「キャウゥウ!?」
まさか、こんな場所で無防備に眠る馬鹿が居るとは思わなかった、といった具合に鳴く子狼。しかし、その抗議の声は三団子には届かなかったようだ。
「「「グゴー、グガー、グゴゴゴー」」」
おやすみから一分も経たないうちに聞こえてきた大いびき。三団子は、見事、子狼の抗議を無視して、夢の世界へと旅立っていたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる