ポッチャリ三団子の逆襲 〜異世界で要らないと捨てられました〜

星宮歌

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第一章 三団子、異世界に立つ

第十五話 巨大狼と三団子

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「アオーンっ!!」


 三団子が突然の目潰しにゴロゴロゴロリと転げ回る中、あの巨大狼と思しき遠吠えが響き渡る。
 ゴロゴロ転げ回っている間にも、三団子は巨大狼に食べられる危機に瀕しているはずなのだが、その遠吠えの後、何故かそこに響くのは三団子が呻いて転げ回る音だけになる。
 そう、本来なら聞こえたはずの、巨大狼の息遣いですら、全く聞こえなかった。

 ゴロゴロゴロンと転がり続け、見事に土まみれになった三団子は、そろそろその服の色での識別すらも難しくなってきている。
 三団子よ。色での区別ができなくなると、誰が誰だか分からなくなるのだから、早めに自分ごと洗濯することを勧めるぞ。


「うぅ、びっくりしたぁ」

「何だったの? 今の?」

「あれ? 狼は?」


 臭いといい、汚れ具合といい、完全に汚物の様相を呈している三団子だが、一応、まだ色の判別ができる程度には服の色も残っている。
 今のも、青団子、黃団子、赤団子の順番での発言だ。
 そして、赤団子が気にしている巨大狼はといえば……。


「「「なんか光ってる!?」」」


 巨大狼が居たはずの場所には、肝心の巨大狼の姿はなく、代わりに、その場には手のひらサイズくらいの小さな光がフヨフヨと浮いていた。
 そんな小さな光は、ゆっくりフヨフヨとボヨボヨブヨブヨな三団子の元へ向かう。

 それはもしかしたら、三団子が三団子でさえなければ、幻想的とか神秘的とか言われるような光景だったのかもしれない。
 ただし、驚くことに、今の今まで、まともな人間というものが出てきた試しがない。いや、騎士達が唯一、一見まともそうに見える存在ではあったものの、あんな女王様の命令にあっさり従う時点でノーカンだ。
 幻想的な光景、されど、対象が三団子な時点で、そんな感想は吹き飛ぶ。今だって、じっと待っていれば良いのに、ワタワタと『何? これ何!?』と騒いでいるのだから、もはや三団子は救いようがない。膨大な食欲以外には、きっと三団子に取り柄などないのだ。

 そうして、小さな光は三団子の目の前で止まると、手のひらサイズからもう一回り大きなサイズの光に一瞬で膨れ上がり、そのまま光を失う。すると、ポトリと中に居たモノが地面に落ちた。


「「「うぇっ? ええぇぇぇえっ!?」」」

「キャンッ」


 うるさいくらいに叫ぶ三団子だったが、確かに光の中身を見てしまえば驚くのも無理はないのかもしれない。
 そこに居たのは、輝かんばかりの白い毛並みを誇る、小さな小さな子狼だ。人懐っこそうな顔立ちで、実際、三団子の元へと駆けつけようとして……。


「クゥン……」


 思わずといった様子で、子狼は前足で自分の鼻を押さえていた。
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