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第一章 三団子、異世界に立つ
第九話 そして今ココな三団子
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土気色の騎士達が去った後、三団子はのっそりと行動を起こした。
「よぉし、急がば回れ! あの騎士達が居なければ、僕達だって街に行ける!」
「そうだね、兄さん!」
「よし、行こう、兄ちゃん!」
恐らく、というか十中八九、『急がば回れ』だけでは意味が通じない。
騎士達が居る中で逃げるより、騎士達が居なくなってから逃げた方が勝算があるという考えなのだろうが、そうなると、『急がば回れ』という言葉も何やら微妙にズレているような気もする。
きっと、三団子の脳内に詰め込まれている脂肪が、絶妙な具合に記憶をとんちんかんなものに作り変えているに違いない。
ただし、三団子が居るのは森の中。そして、三団子からは強烈な悪臭が漂っているが、体臭という面だけで捉えるならば、獲物の匂いと言っても過言ではないわけで……。
大蛇に追われ丸呑みにされるのは、もはや必然の出来事だった。
そうして、お話は大蛇の腹の中に戻る。
大蛇の腹の中で座り込んだ三団子は、回想を終えて、まずはその頭を……と思いきや、ブクブクと肥大化した腹の方を押さえ込む。
「「「喉乾いたし、お腹空いたー」」」
(三団子にとっては)過酷な運動をして、(三団子にとっては)休む間もなく、今、大蛇に呑まれたことによって、ようやく休憩時間とも言えるべき時間が訪れたのだ。
しかし、誰か切実に言ってほしい。『もうちょっと危機感持て!』と。
このまま三団子がのんびりゴロゴロゴロンゴロンしていては、どんどん時間が過ぎていく。そして、そうなってしまえば最後に来たるは消化という現実であり、この物語も早々に終わってしまう。
「兄ちゃん! そういえば、リュックの中に入れてた物はっ!」
と、そこで、末っ子赤団子が次兄の背負うリュックについて指摘する。
黒く大きなそのリュックは、彼らの長兄が強化合宿のために事前に準備をして、家に忘れていたものだった。合宿は今日からで、荷物がなければ大変だろうという善意から、三団子は必死にその丸々とした体で階段を上っていたというわけだ。
しかし、あのマッスル集団の中にこの三団子の兄が居たとして、その遺伝子はいったいどこから来たのだろうかと不思議でならない。
少なくとも、マッスル集団に三団子に似た体型の者は存在しなかったはずだ。
それとも、三団子自身が突然変異でこんなに丸々デップリボヨヨン状態に育ったのだろうか。
そんな生命の神秘を思わせる兄弟だが、ひとまずは、苦労して運んできたリュックの中身を確認することが先決だ。
……とはいえ、マッスル集団に兄が居て、あのマッスル集団に染まっているのだとしたら、自ずと中身の想像も出来てしまうと言うもの。
「食べ物、あるかなぁ?」
次兄な青団子よ。きっと、あったとしてもそれは、プロテインとか、プロテインバーとか、その辺りだろう。
「僕、飲み物欲しい」
三男な黄団子よ。もしかしたら普通のものがあるかもしれないが、それでもプロテイン入りの可能性が高いぞ?
「アイス食べたーい!」
末っ子な赤団子よ。さすがにそれは無い。あったとしたら、今はドロドロだろう。
そんな各々の希望を胸に、三団子はいざ、とばかりにリュックを開いた。
「よぉし、急がば回れ! あの騎士達が居なければ、僕達だって街に行ける!」
「そうだね、兄さん!」
「よし、行こう、兄ちゃん!」
恐らく、というか十中八九、『急がば回れ』だけでは意味が通じない。
騎士達が居る中で逃げるより、騎士達が居なくなってから逃げた方が勝算があるという考えなのだろうが、そうなると、『急がば回れ』という言葉も何やら微妙にズレているような気もする。
きっと、三団子の脳内に詰め込まれている脂肪が、絶妙な具合に記憶をとんちんかんなものに作り変えているに違いない。
ただし、三団子が居るのは森の中。そして、三団子からは強烈な悪臭が漂っているが、体臭という面だけで捉えるならば、獲物の匂いと言っても過言ではないわけで……。
大蛇に追われ丸呑みにされるのは、もはや必然の出来事だった。
そうして、お話は大蛇の腹の中に戻る。
大蛇の腹の中で座り込んだ三団子は、回想を終えて、まずはその頭を……と思いきや、ブクブクと肥大化した腹の方を押さえ込む。
「「「喉乾いたし、お腹空いたー」」」
(三団子にとっては)過酷な運動をして、(三団子にとっては)休む間もなく、今、大蛇に呑まれたことによって、ようやく休憩時間とも言えるべき時間が訪れたのだ。
しかし、誰か切実に言ってほしい。『もうちょっと危機感持て!』と。
このまま三団子がのんびりゴロゴロゴロンゴロンしていては、どんどん時間が過ぎていく。そして、そうなってしまえば最後に来たるは消化という現実であり、この物語も早々に終わってしまう。
「兄ちゃん! そういえば、リュックの中に入れてた物はっ!」
と、そこで、末っ子赤団子が次兄の背負うリュックについて指摘する。
黒く大きなそのリュックは、彼らの長兄が強化合宿のために事前に準備をして、家に忘れていたものだった。合宿は今日からで、荷物がなければ大変だろうという善意から、三団子は必死にその丸々とした体で階段を上っていたというわけだ。
しかし、あのマッスル集団の中にこの三団子の兄が居たとして、その遺伝子はいったいどこから来たのだろうかと不思議でならない。
少なくとも、マッスル集団に三団子に似た体型の者は存在しなかったはずだ。
それとも、三団子自身が突然変異でこんなに丸々デップリボヨヨン状態に育ったのだろうか。
そんな生命の神秘を思わせる兄弟だが、ひとまずは、苦労して運んできたリュックの中身を確認することが先決だ。
……とはいえ、マッスル集団に兄が居て、あのマッスル集団に染まっているのだとしたら、自ずと中身の想像も出来てしまうと言うもの。
「食べ物、あるかなぁ?」
次兄な青団子よ。きっと、あったとしてもそれは、プロテインとか、プロテインバーとか、その辺りだろう。
「僕、飲み物欲しい」
三男な黄団子よ。もしかしたら普通のものがあるかもしれないが、それでもプロテイン入りの可能性が高いぞ?
「アイス食べたーい!」
末っ子な赤団子よ。さすがにそれは無い。あったとしたら、今はドロドロだろう。
そんな各々の希望を胸に、三団子はいざ、とばかりにリュックを開いた。
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