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第一章 三団子、異世界に立つ
第八話 三団子の回想7
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三団子にとっては、外に出られた解放感と喜びでいっぱいの時間。騎士達にとっては、自分達の中から犠牲者を選出しなければならない地獄の時間。
あまりにも対象的な表情を浮かべる彼らだったが、各々はすぐに自分の立場を思い出す。
「兄ちゃん、僕達、このままだと森に追放されちゃう?」
「そうだよねぇ。でも、僕達の足でも、あの三人から逃げられそうにないよぉ?」
末っ子赤団子の言葉に、次兄の青団子が贅肉たっぷりの首をちょこっとだけ回して騎士達を見て、何やら妙なことを言う。
誰がどう見ても、三団子の逃げ足などたかが知れている。それなのに、まるで自分達の逃げ足が早いかのようにのたまう青団子は、きっとここに辿り着くまでの運動の熱によって、頭が少々おかしくなっているのだろう。
「兄さん、ここは、急がば回れかもしれない!」
そんなおかしくなった次兄に、三男たる黄団子が提案する。ただし、言っている意味は分からない。
「「なるほど!」」
しかし、そんな不思議な言葉も、三団子の中では通じ合うらしい。
三団子よ。お前達を見る読者様のためにも、説明プリーズ、と思えども、すっかり納得してしまった三団子は説明する様子を全く見せない。
「それにしても……」
「「「暑いねー」」」
挙げ句の果てには、天空を見上げて、燦々と降り注ぐ太陽光に顔をしかめてそんなことをのたまう。もはや、三団子自身へ説明を求めるのは不可能のようだった。
対して、騎士達は己の職務に忠実であろうとするがために、真剣な表情でお互いに向き合っていた。
もしや、犠牲者を決めるために乱闘騒ぎか、と思いきや……。
「「「最初はグー! じゃんけんぽんっ!!」」」
何やら、聞き覚えのあるフレーズが聞こえた。しかも、つい最近、三団子も同じことをしていたような気もする。
異世界にも普及しているじゃんけん。そこを不思議に思っていては何も始まらないので、諸々の事情は割愛するが、このじゃんけんがただ一人の生け贄を決めるための邪悪なるものであることは確かで……。
「ぐぉぉぉぉおっ!!」
ほどなくして、絶望の雄叫びが上がった。
無論、三団子の悪臭は絶望を呼ぶに相応しいものではあったが、ここでほんの小指の先ほどでも『可哀想』などと思ってはいけない。そんなことを思ってしまえば、絶望したこの騎士は、素早くソイツを身代わりに仕立て上げてしまうだろう。
ただ、ここで勝ち組となった騎士の一人が提案する。
「もしかして、水で流せば少しはマシになるかも?」
「「それだ!!」」
そう、人間だもの。洗ってしまえば、大抵の悪臭は緩和するはずだ。しかも、それはただの体臭。
幸いなことに、相手は気遣う必要も遠慮する必要も全くない、これから追放される罪人だ。頭から水をぶっかけて、それでお終いとしてしまったところで、誰からも咎められない。三団子がそのせいで風邪を引いたところで、彼らには関係ない。
大急ぎで水を用意する騎士、護送馬車の準備をする騎士、三団子を見張る騎士に分かれて作業をした結果、水を頭から掛けられてずぶ濡れになった三団子は、護送馬車の中に押し込められ、騎士に見張られながら森へと向かうこととなった。
ただし、騎士達は失念していた。外は暑いのだ。そして、水というのは、熱で蒸発するものだ。
一時は緩和したと思われた悪臭は、しばらくすると熱で蒸発を始め、三団子と共に檻の中で見張る騎士のみならず、馭者台に座る二人の騎士の鼻にも直撃し、森に着いた頃には土気色の騎士が三人出来上がることとなっていた。
あまりにも対象的な表情を浮かべる彼らだったが、各々はすぐに自分の立場を思い出す。
「兄ちゃん、僕達、このままだと森に追放されちゃう?」
「そうだよねぇ。でも、僕達の足でも、あの三人から逃げられそうにないよぉ?」
末っ子赤団子の言葉に、次兄の青団子が贅肉たっぷりの首をちょこっとだけ回して騎士達を見て、何やら妙なことを言う。
誰がどう見ても、三団子の逃げ足などたかが知れている。それなのに、まるで自分達の逃げ足が早いかのようにのたまう青団子は、きっとここに辿り着くまでの運動の熱によって、頭が少々おかしくなっているのだろう。
「兄さん、ここは、急がば回れかもしれない!」
そんなおかしくなった次兄に、三男たる黄団子が提案する。ただし、言っている意味は分からない。
「「なるほど!」」
しかし、そんな不思議な言葉も、三団子の中では通じ合うらしい。
三団子よ。お前達を見る読者様のためにも、説明プリーズ、と思えども、すっかり納得してしまった三団子は説明する様子を全く見せない。
「それにしても……」
「「「暑いねー」」」
挙げ句の果てには、天空を見上げて、燦々と降り注ぐ太陽光に顔をしかめてそんなことをのたまう。もはや、三団子自身へ説明を求めるのは不可能のようだった。
対して、騎士達は己の職務に忠実であろうとするがために、真剣な表情でお互いに向き合っていた。
もしや、犠牲者を決めるために乱闘騒ぎか、と思いきや……。
「「「最初はグー! じゃんけんぽんっ!!」」」
何やら、聞き覚えのあるフレーズが聞こえた。しかも、つい最近、三団子も同じことをしていたような気もする。
異世界にも普及しているじゃんけん。そこを不思議に思っていては何も始まらないので、諸々の事情は割愛するが、このじゃんけんがただ一人の生け贄を決めるための邪悪なるものであることは確かで……。
「ぐぉぉぉぉおっ!!」
ほどなくして、絶望の雄叫びが上がった。
無論、三団子の悪臭は絶望を呼ぶに相応しいものではあったが、ここでほんの小指の先ほどでも『可哀想』などと思ってはいけない。そんなことを思ってしまえば、絶望したこの騎士は、素早くソイツを身代わりに仕立て上げてしまうだろう。
ただ、ここで勝ち組となった騎士の一人が提案する。
「もしかして、水で流せば少しはマシになるかも?」
「「それだ!!」」
そう、人間だもの。洗ってしまえば、大抵の悪臭は緩和するはずだ。しかも、それはただの体臭。
幸いなことに、相手は気遣う必要も遠慮する必要も全くない、これから追放される罪人だ。頭から水をぶっかけて、それでお終いとしてしまったところで、誰からも咎められない。三団子がそのせいで風邪を引いたところで、彼らには関係ない。
大急ぎで水を用意する騎士、護送馬車の準備をする騎士、三団子を見張る騎士に分かれて作業をした結果、水を頭から掛けられてずぶ濡れになった三団子は、護送馬車の中に押し込められ、騎士に見張られながら森へと向かうこととなった。
ただし、騎士達は失念していた。外は暑いのだ。そして、水というのは、熱で蒸発するものだ。
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