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第一章 三団子、異世界に立つ
第七話 三団子の回想6
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騎士達に後ろに張り付かれながら、ひいこらひいこらと歩く三団子。モタモタヨタヨタ、その歩みは亀のごとく。
騎士達とて、きっと他にも仕事があるだろうに、その鈍足な歩みに根気よく付き合って、本当に本当に、ご苦労さまといったとこ……いや、違う。騎士達が鼻を押さえているのを見る限り、三団子に近づかず、ただひたすらに見守っているのは別の理由からだろう。
臭い。
ズバリ、それが唯一無二にして最も重要な理由だ。
元々、三団子は階段を必死に上って来ていたせいで汗だくだった。そして、それを拭う間もなく召喚され、汗と涙と鼻水でドロドロなのだ。まともな神経の持ち主であれば、触ることはおろか、関わることすらしたくない物体が今の三団子。しかも、ひいこらと歩いている間にもボタボタと垂れていく臭気の元まである。
きっと、多少はまともな感覚が残っていると思われる騎士達にとっても、この悪臭は耐え難かったのだろう。
現在、騎士達が行っている仕事といえば、三団子の見張り(という名の見守り)と進行方向の指示くらいのもの。
ただし、騎士達の受難はまだまだ続く。
「な、なぁ、あれ、護送馬車に入る、か?」
護送馬車とは、罪人を移動させるためだけに用意された檻付きの馬車だ。大抵は、盗賊団などを捕らえた時に使うものであり、馬も二頭で牽くような普通の馬車よりも倍くらいにサイズの違うものだった。
今回も、三団子をどこぞの森へと追放するために、それが使われる予定なのだが、それはあくまでも人間としての範囲を逸脱しない程度の存在を入れるために設計されている。
三団子とて、人間、ではあるものの、まだまだ食糧事情に問題を抱えることの多いこの世界の人間からすれば、異種族とか化け物としか思えないほどの横幅、デップリ具合だ。もちろん、異世界から来ているのだから、その認識はあながち間違いではないのかもしれないが……多分、というか、確実に、入口が小さすぎて入らないという未来が透けて見える。
「入らない、だろうな……。そうなれば、即席で入口を壊してでも入れるしかないだろうよ」
「確かになぁ。まぁ、財務部にはお小言くらいもらうかもしれないけど、あのサイズは仕方ないだろ」
入口さえ突破してしまえば、中は広いから大丈夫、といった具合に、残りの二人が呑気に答える中、最初に質問した騎士は顔色が青い。
まぁ、それもそのはずだ。そんな暴挙を取った結果、何が起こるのか、彼にはきっと理解できているのだから。
「壊したら、見張りが必要、だよな?」
「「………………」」
この場合、沈黙が何よりも雄弁な答えだった。
三人の騎士の内、二人は馭者台にでも座れば良い。しかし、入口を壊してしまうからには、そこから三団子が転がり落ちて逃亡しないように見張る必要がある。つまりは……悪臭団子と化した三団子と同じ空間で、追放先の森に到着するまで待機しなくてはならないのだ。
騎士達が無言で青ざめる中、三団子はひたすら指示された方向へと真っ赤な顔で、湯気すら出しながら進み続ける。そして……。
「「「そ、外だぁーっ!!」」」
三団子が叫ぶそれは、一人の犠牲を決めなければならない絶望の時間が訪れてしまったという報せでもあった。
騎士達とて、きっと他にも仕事があるだろうに、その鈍足な歩みに根気よく付き合って、本当に本当に、ご苦労さまといったとこ……いや、違う。騎士達が鼻を押さえているのを見る限り、三団子に近づかず、ただひたすらに見守っているのは別の理由からだろう。
臭い。
ズバリ、それが唯一無二にして最も重要な理由だ。
元々、三団子は階段を必死に上って来ていたせいで汗だくだった。そして、それを拭う間もなく召喚され、汗と涙と鼻水でドロドロなのだ。まともな神経の持ち主であれば、触ることはおろか、関わることすらしたくない物体が今の三団子。しかも、ひいこらと歩いている間にもボタボタと垂れていく臭気の元まである。
きっと、多少はまともな感覚が残っていると思われる騎士達にとっても、この悪臭は耐え難かったのだろう。
現在、騎士達が行っている仕事といえば、三団子の見張り(という名の見守り)と進行方向の指示くらいのもの。
ただし、騎士達の受難はまだまだ続く。
「な、なぁ、あれ、護送馬車に入る、か?」
護送馬車とは、罪人を移動させるためだけに用意された檻付きの馬車だ。大抵は、盗賊団などを捕らえた時に使うものであり、馬も二頭で牽くような普通の馬車よりも倍くらいにサイズの違うものだった。
今回も、三団子をどこぞの森へと追放するために、それが使われる予定なのだが、それはあくまでも人間としての範囲を逸脱しない程度の存在を入れるために設計されている。
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「入らない、だろうな……。そうなれば、即席で入口を壊してでも入れるしかないだろうよ」
「確かになぁ。まぁ、財務部にはお小言くらいもらうかもしれないけど、あのサイズは仕方ないだろ」
入口さえ突破してしまえば、中は広いから大丈夫、といった具合に、残りの二人が呑気に答える中、最初に質問した騎士は顔色が青い。
まぁ、それもそのはずだ。そんな暴挙を取った結果、何が起こるのか、彼にはきっと理解できているのだから。
「壊したら、見張りが必要、だよな?」
「「………………」」
この場合、沈黙が何よりも雄弁な答えだった。
三人の騎士の内、二人は馭者台にでも座れば良い。しかし、入口を壊してしまうからには、そこから三団子が転がり落ちて逃亡しないように見張る必要がある。つまりは……悪臭団子と化した三団子と同じ空間で、追放先の森に到着するまで待機しなくてはならないのだ。
騎士達が無言で青ざめる中、三団子はひたすら指示された方向へと真っ赤な顔で、湯気すら出しながら進み続ける。そして……。
「「「そ、外だぁーっ!!」」」
三団子が叫ぶそれは、一人の犠牲を決めなければならない絶望の時間が訪れてしまったという報せでもあった。
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