4 / 96
第一章 三団子、異世界に立つ
第三話 三団子の回想2
しおりを挟む
マッスルサークル。それは、半ば都市伝説じみた存在として、この大学では良く語られている。
曰く、そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている。
曰く、そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている。
曰く、そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる。
そんな、恐ろしいのか何なのか良く分からない伝説の存在。しかし、そんなサークルの前に立った三団子達は、それが全て本当のことだと知ることとなった。
「こ、これが……」
「マッスル、サークル……?」
「こ、こわっ!」
『そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている』という言葉は、きっと、これを見た者が伝えたに違いない。扉にデカデカと『マッスルサークル』と書かれたその周囲には、所狭しとムキムキマッチョの写真や筋肉に対する雄叫びか何かが汚い字で書かれた紙、その他にも、筋肉増強に関する記事やら、筋肉のためのサプリメント情報やら……とにかく、これだけで異様な雰囲気を漂わせている。三団子も三団子だが、このマッスルサークルも相当に酷い。
『そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている』という言葉は、これまた正しい。恐らくは、その悪臭の正体は汗。先程、五階で汗だくな三団子が座り込んだ場所とは比にならないほどの悪臭発生源がここにある。これはもう、清掃員さんも裸足で逃げ出すレベル。というか、マッスルサークルの連中は、その事実を五体投地してでも謝るべきだろう。もっとも、マッスルサークルの面々は、きっと筋肉ばかりで鼻の機能が筋肉に埋もれてなくなってしまって、この汗臭さか分からなくなっている可能性が高そうだが……。
そして、『そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる』というのも、ある意味事実だ。と、いうか、凄まじいというより、暑苦しいと表現する方が正しいのだろう。
「「「筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉」」」
「「「筋肉は裏切らない! 筋肉最高!」」」
「「「筋肉最高!!」」」
「「「筋肉最強!」」」
「「「筋肉最強!!」」」
地の底から響く呻き声のような、暑苦しいそれは、確かに、そんな言葉であった。もはや、その内容を理解したくはないし、きっと、よほど筋肉への変態レベルの想いがない限り理解など不可能だろう。
当然、そんな恐ろしい声を聞いた三団子は、そっくりな顔で同時に頬を引きつらせる。こればっかりは、三団子に同情すべきかもしれない。
「で、でも……」
「兄さんのために……」
「……いかなきゃ、ダメ……?」
「「…………………………」」
必死に奮い立とうとする三団子の次男、三男ではあったが、末っ子の言葉に長い沈黙を返す。それは、三団子の苦悩を如実に表していたが、実際のところ、リュックのベルトはもう限界に近い。きっと、ここで引き返したところで、この魔境とも呼べる場所に居るとされる長兄の荷物が落下する結果しか生まれない。もちろん、そんなことにこの三団子が気づいているはずもないのだが、ここまで必死に努力した結果、それが何も実を結ばないのは、あまりにもツライことではある。なんせ、三団子には、六階までの道のりは果てしなく大変なことなのだから。
「……ごめん、やっぱり、行こう」
長い沈黙の末、末っ子な赤団子の言葉に、青団子と黄団子は重々しくうなずいた。
曰く、そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている。
曰く、そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている。
曰く、そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる。
そんな、恐ろしいのか何なのか良く分からない伝説の存在。しかし、そんなサークルの前に立った三団子達は、それが全て本当のことだと知ることとなった。
「こ、これが……」
「マッスル、サークル……?」
「こ、こわっ!」
『そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている』という言葉は、きっと、これを見た者が伝えたに違いない。扉にデカデカと『マッスルサークル』と書かれたその周囲には、所狭しとムキムキマッチョの写真や筋肉に対する雄叫びか何かが汚い字で書かれた紙、その他にも、筋肉増強に関する記事やら、筋肉のためのサプリメント情報やら……とにかく、これだけで異様な雰囲気を漂わせている。三団子も三団子だが、このマッスルサークルも相当に酷い。
『そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている』という言葉は、これまた正しい。恐らくは、その悪臭の正体は汗。先程、五階で汗だくな三団子が座り込んだ場所とは比にならないほどの悪臭発生源がここにある。これはもう、清掃員さんも裸足で逃げ出すレベル。というか、マッスルサークルの連中は、その事実を五体投地してでも謝るべきだろう。もっとも、マッスルサークルの面々は、きっと筋肉ばかりで鼻の機能が筋肉に埋もれてなくなってしまって、この汗臭さか分からなくなっている可能性が高そうだが……。
そして、『そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる』というのも、ある意味事実だ。と、いうか、凄まじいというより、暑苦しいと表現する方が正しいのだろう。
「「「筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉」」」
「「「筋肉は裏切らない! 筋肉最高!」」」
「「「筋肉最高!!」」」
「「「筋肉最強!」」」
「「「筋肉最強!!」」」
地の底から響く呻き声のような、暑苦しいそれは、確かに、そんな言葉であった。もはや、その内容を理解したくはないし、きっと、よほど筋肉への変態レベルの想いがない限り理解など不可能だろう。
当然、そんな恐ろしい声を聞いた三団子は、そっくりな顔で同時に頬を引きつらせる。こればっかりは、三団子に同情すべきかもしれない。
「で、でも……」
「兄さんのために……」
「……いかなきゃ、ダメ……?」
「「…………………………」」
必死に奮い立とうとする三団子の次男、三男ではあったが、末っ子の言葉に長い沈黙を返す。それは、三団子の苦悩を如実に表していたが、実際のところ、リュックのベルトはもう限界に近い。きっと、ここで引き返したところで、この魔境とも呼べる場所に居るとされる長兄の荷物が落下する結果しか生まれない。もちろん、そんなことにこの三団子が気づいているはずもないのだが、ここまで必死に努力した結果、それが何も実を結ばないのは、あまりにもツライことではある。なんせ、三団子には、六階までの道のりは果てしなく大変なことなのだから。
「……ごめん、やっぱり、行こう」
長い沈黙の末、末っ子な赤団子の言葉に、青団子と黄団子は重々しくうなずいた。
11
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる