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第一章 三団子、異世界に立つ
第三話 三団子の回想2
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マッスルサークル。それは、半ば都市伝説じみた存在として、この大学では良く語られている。
曰く、そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている。
曰く、そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている。
曰く、そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる。
そんな、恐ろしいのか何なのか良く分からない伝説の存在。しかし、そんなサークルの前に立った三団子達は、それが全て本当のことだと知ることとなった。
「こ、これが……」
「マッスル、サークル……?」
「こ、こわっ!」
『そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている』という言葉は、きっと、これを見た者が伝えたに違いない。扉にデカデカと『マッスルサークル』と書かれたその周囲には、所狭しとムキムキマッチョの写真や筋肉に対する雄叫びか何かが汚い字で書かれた紙、その他にも、筋肉増強に関する記事やら、筋肉のためのサプリメント情報やら……とにかく、これだけで異様な雰囲気を漂わせている。三団子も三団子だが、このマッスルサークルも相当に酷い。
『そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている』という言葉は、これまた正しい。恐らくは、その悪臭の正体は汗。先程、五階で汗だくな三団子が座り込んだ場所とは比にならないほどの悪臭発生源がここにある。これはもう、清掃員さんも裸足で逃げ出すレベル。というか、マッスルサークルの連中は、その事実を五体投地してでも謝るべきだろう。もっとも、マッスルサークルの面々は、きっと筋肉ばかりで鼻の機能が筋肉に埋もれてなくなってしまって、この汗臭さか分からなくなっている可能性が高そうだが……。
そして、『そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる』というのも、ある意味事実だ。と、いうか、凄まじいというより、暑苦しいと表現する方が正しいのだろう。
「「「筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉」」」
「「「筋肉は裏切らない! 筋肉最高!」」」
「「「筋肉最高!!」」」
「「「筋肉最強!」」」
「「「筋肉最強!!」」」
地の底から響く呻き声のような、暑苦しいそれは、確かに、そんな言葉であった。もはや、その内容を理解したくはないし、きっと、よほど筋肉への変態レベルの想いがない限り理解など不可能だろう。
当然、そんな恐ろしい声を聞いた三団子は、そっくりな顔で同時に頬を引きつらせる。こればっかりは、三団子に同情すべきかもしれない。
「で、でも……」
「兄さんのために……」
「……いかなきゃ、ダメ……?」
「「…………………………」」
必死に奮い立とうとする三団子の次男、三男ではあったが、末っ子の言葉に長い沈黙を返す。それは、三団子の苦悩を如実に表していたが、実際のところ、リュックのベルトはもう限界に近い。きっと、ここで引き返したところで、この魔境とも呼べる場所に居るとされる長兄の荷物が落下する結果しか生まれない。もちろん、そんなことにこの三団子が気づいているはずもないのだが、ここまで必死に努力した結果、それが何も実を結ばないのは、あまりにもツライことではある。なんせ、三団子には、六階までの道のりは果てしなく大変なことなのだから。
「……ごめん、やっぱり、行こう」
長い沈黙の末、末っ子な赤団子の言葉に、青団子と黄団子は重々しくうなずいた。
曰く、そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている。
曰く、そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている。
曰く、そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる。
そんな、恐ろしいのか何なのか良く分からない伝説の存在。しかし、そんなサークルの前に立った三団子達は、それが全て本当のことだと知ることとなった。
「こ、これが……」
「マッスル、サークル……?」
「こ、こわっ!」
『そのサークルは、筋肉で人を洗脳しようとしている』という言葉は、きっと、これを見た者が伝えたに違いない。扉にデカデカと『マッスルサークル』と書かれたその周囲には、所狭しとムキムキマッチョの写真や筋肉に対する雄叫びか何かが汚い字で書かれた紙、その他にも、筋肉増強に関する記事やら、筋肉のためのサプリメント情報やら……とにかく、これだけで異様な雰囲気を漂わせている。三団子も三団子だが、このマッスルサークルも相当に酷い。
『そのサークルの前では、何とも言えない悪臭が常に漂っている』という言葉は、これまた正しい。恐らくは、その悪臭の正体は汗。先程、五階で汗だくな三団子が座り込んだ場所とは比にならないほどの悪臭発生源がここにある。これはもう、清掃員さんも裸足で逃げ出すレベル。というか、マッスルサークルの連中は、その事実を五体投地してでも謝るべきだろう。もっとも、マッスルサークルの面々は、きっと筋肉ばかりで鼻の機能が筋肉に埋もれてなくなってしまって、この汗臭さか分からなくなっている可能性が高そうだが……。
そして、『そのサークルの中からは、凄まじい呻き声が響いてくる』というのも、ある意味事実だ。と、いうか、凄まじいというより、暑苦しいと表現する方が正しいのだろう。
「「「筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉」」」
「「「筋肉は裏切らない! 筋肉最高!」」」
「「「筋肉最高!!」」」
「「「筋肉最強!」」」
「「「筋肉最強!!」」」
地の底から響く呻き声のような、暑苦しいそれは、確かに、そんな言葉であった。もはや、その内容を理解したくはないし、きっと、よほど筋肉への変態レベルの想いがない限り理解など不可能だろう。
当然、そんな恐ろしい声を聞いた三団子は、そっくりな顔で同時に頬を引きつらせる。こればっかりは、三団子に同情すべきかもしれない。
「で、でも……」
「兄さんのために……」
「……いかなきゃ、ダメ……?」
「「…………………………」」
必死に奮い立とうとする三団子の次男、三男ではあったが、末っ子の言葉に長い沈黙を返す。それは、三団子の苦悩を如実に表していたが、実際のところ、リュックのベルトはもう限界に近い。きっと、ここで引き返したところで、この魔境とも呼べる場所に居るとされる長兄の荷物が落下する結果しか生まれない。もちろん、そんなことにこの三団子が気づいているはずもないのだが、ここまで必死に努力した結果、それが何も実を結ばないのは、あまりにもツライことではある。なんせ、三団子には、六階までの道のりは果てしなく大変なことなのだから。
「……ごめん、やっぱり、行こう」
長い沈黙の末、末っ子な赤団子の言葉に、青団子と黄団子は重々しくうなずいた。
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